Nikon Z9+NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR Sによる野鳥撮影

Z9+800mmF6.3

野鳥撮影は仕事の一環なので、長年単焦点レンズを使い続けています。ズームレンズを否定するわけではありませんが、野鳥撮影は暗い森や藪の中など、厳しい条件での撮影を強いられることが多く、解像度や明るさの点で単焦点レンズの方が一般的には有利となります。
解像度は、レンズの口径とカメラ側のセンサーの解像度によりますが、最大でカレンダーやポスターで使うこともあるので、最終的にB4やA3サイズに印刷したものを近距離で鑑賞しても破綻がない画質が要求されます。小型の鳥が画面半分くらいに写っているときに、目の周りの羽毛の1本1本が解像されていることを自分の基準としています。
望遠レンズは一般的には単焦点の方が明るいものが多く、口径が大きいほど解像度が高くなります。朝夕などの暗い時間帯や暗い森の中での撮影の可否にも大きく関わってきます。さらに、単焦点レンズの方が一般的にボケが美しく、背景と野鳥を明確に分離して、被写体を浮き上がらせる効果があります。
そんな理由で仕事で望遠レンズを使う写真家やハイアマチュアの人は単焦点レンズを選ぶようです。特にスポーツ写真を生業としているカメラマンは高速シャッターを使う必要があり、必然的に明るい単焦点レンズが必要となるでしょう。

最長焦点距離のレンズとして、NikonにはFマウントの800mmF5.6があります。この上ない描写ですが、価格もさることならがヘビー級のレンズで、フィールドで鳥を追いかけながら手持ちで使うには相当な体力と腕力が必要です。今回発売された800mmF6.3はFマウントの800mmF5.6より1/3段暗くなりますが、800mmとしては十分に明るく、かつ最新のVRが搭載されているので、仕事として十分に使える仕様です。何よりコンパクトで重量が半分程度なので、フィールドで持ち歩きながら手持ちで使える800mmとなります。

野鳥撮影をしていると、撮影方法を聞かれることが多く、職場の学生からもよく聞かれるので、自分なりの撮影方法を紹介しておきます。カメラマンは各々さまざまな経験から独自の撮り方を編み出していると思いますので、以下の撮影法が正しい方法だとか、うまく撮れる方法であるということではなく、現在自分が実践している単なる一例です。

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撮影モード

撮影モードは絞りとシャッター速度はマニュアルで、ISOオートで撮影しています。写真を撮る上で重要な要素である絞りとシャッター速度を自由に決定し、それに見合うISO感度をカメラに決めてもらう方法です。ミラーレスでは露出の過不足もファインダーで常時確認できるので、補正も直感的に簡単にできます。

絞り

レンズの絞りは絞った方がシャープになると信じている人が多いようですが、よくできた単焦点レンズは絞り開放か絞っても1段以内が一番解像度が高く、絞るにつれて回折現象によって像はどんどんボケていきます。
確かに一昔前のズームレンズやサードパーティ製のいい加減な作りのレンズは残存収差がひどく、そういったレンズでは絞らないとまともに写らないものがありました。その影響なのか、絞りは絞るほどシャープになると間違った感覚を持ってしまっている人が実に多いようです。特にフィルム時代から写真を撮られてきたご年配の方にそのような考えの人が多く、どうもシャープに写らないという相談を受けて画像のEXIFデータを見ると、かなり絞り込んだ状態で撮影していることがあります。これではせっかくの明るいレンズも性能を発揮できません。

よくできた単焦点レンズは望遠鏡と同様、基本的に開放で使用します。前後する2つのターゲットの両方にピントを合わせるシチュエーションのみ少し絞りますが、それ以外では、光学的解像度と可能な限り低感度で撮影するために絞りは開放からせいぜい1段以内の範囲しか基本的には使いません。明るい環境で使う場合も絞りは開放F6.3からせいぜいF8までで、シャッター速度の方を速くすることで露光量を調整します。

シャッター速度

オートで決定されるISO感度の表示を見ながらシャッター速度を調整して撮影するスタイルです。可能な限りISOが1000以下になるようにシャッター速度を調整します。VRの能力が高くても、被写体ブレは避けられないので、野鳥撮影時のシャッター速度の下限は1/100~1/200 s程度と考えています。環境が暗く、感度が上がってしまう場合は1/60 sや1/30 s程度まで落とすことがありますが、歩留まりは悪くなります。

暗いシチュエーションで動きが速い鳥の場合は感度が上がることを覚悟でシャッター速度を速くすることもあります。このように状況に応じたシャッター速度の采配のために、マニュアル設定で撮る必要があります。できるだけ開放に近い絞りで使いたいので、明るいシチュエーションの場合も絞り込まずにシャッター速度を速くします。Z9は1/32000 sの高速シャッターまで使えるのでほとんどの状況に対応できるでしょう。

飛翔写真を撮影する場合はシャッター速度のみ高速にします。飛翔写真のシャッター速度はターゲットによって異なりますが、1/500~1/4000 s程度です。1/4000 sでほとんどの鳥は止まって写りますが、面白みがない写真になってしまいがちです。流し撮りで背景を流す場合は少し遅めにすると良いでしょう。どのくらいが適しているかは、ターゲットの速度や撮影距離、動体に追従するテクニックなどによって大きく異なりますので、一概には言えません。様々なシャッター速度で試してみて、適したシャッター速度を追い込んで行きます。Z9では撮影モードとして登録して、ファンクションボタンに割り当てるとボタンを押すだけで自分なりの飛翔撮影モードにすることもできます。

測光モード

ハイライト重点測光もしくはスポット測光を使用しています。仕事で撮る写真は、何より白飛びを恐れているので、ハイライト重点測光が最も安全に感じています。一眼レフ時代のハイライト重点測光はばらつきがありすぎて使えませんでしたが、ミラーレスになってからは安定しているように感じています。
しかし、ミラーレスではどの測光モードを使ってもあまり変わらないかもしれません。いずれのモードでも露出の過不足はファインダーで見えるので、直感的に調整が可能です。決めた測光モードに馴れることによって次の露出補正がスムーズになります。

露出補正

どの測光モードも完璧なものはなく、背景の明るさやターゲットの色によって必ず露出補正が必要です。メジロのアイリングやシジュウカラの頬、ジョウビタキの白斑が飛ばないように自動で調整してくれるカメラやモードはまだありません。
800mmF6.3のコントロールリングに露出補正を割り当てると回転させるだけで好みの補正ができるようになります。ファインダーを覗きながら直感的に補正できるので大変便利です。
絞りはほぼ開放のまま使用するので、右手親指でシャッター速度、左手は露出補正に割り当てられます。このように分業させると、右手人差し指はシャッターチャンスに集中できます。露出補正ボタンを押しながらコマンドダイアルを回す方法は右人差し指を使う必要があるので、シャッターが押せなくなってしまいます。コントロールリングがあるZレンズでは、露出補正を割り当てられるので、大変便利になりました。

AF

コンティニアスモード、ワイドエリア+動物検出で使用しています。Z9の動物検出は鳥も認識するので、多くの場合は勝手に目にフォーカスポイントを設定してくれます。しかし、まだ完璧ではなく、まったく認識されないこともあります。このあたりは今後改善されて行くことでしょう。

右手人差し指はシャッターボタンに集中させるとして、親指、中指、薬指が使えます。親指はメインコマンドダイヤルとAFボタン、中指と薬指はZ9の3つのファンクションボタンに割り振った機能を使うために使います。

個人的には多くのカメラマンが推奨している「親指AF」なる使い方はしていません。AFボタンやファンクションボタンはAFエリアモードの切り替えを割り当てています。AFボタンはAFエリアのシングルポイントへの切り替えに割り当てています。被写体認識をしなかったときに瞬時にシングルポイントになるので、大きく外すことがなくなります。

撮影方法:手持ち撮影

自分の野鳥撮影は今までもすべて手持ち撮影です。野鳥撮影で三脚を使ったことはありません。公園などで三脚を使用するのは他の方々の迷惑になりますし、そもそも三脚に固定すると機動性が失われるので撮影できない鳥が増えてしまいます。藪の中を動き回る野鳥などは、三脚を使った撮影は不可能でしょう。良い写真を撮ろうと思ったら、手持ちで微妙な位置調整をして枝被りを回避したり、背景の色を選択しながら撮影する必要があります。暗い状況では一脚を使うことはありますが、スローシャッターのブレ防止のために一瞬使うだけで、自分も邪魔なのですぐにたたみます。
そのため、今までは500mmF4+1.4倍のテレコンが手持ちの限界と思っていましたが、Zの800mmF6.3はそれよりも軽く、手持ち撮影が可能な画期的なレンズです。このレンズの出現によって、野鳥の撮影可能領域が大幅に拡大されました。

撮影例

上記の撮影法では、オートのISO表示を見ながら右手親指でシャッター速度を調整することと、左手のコントロールリングで露出補正をするだけです。被写体の動きが速いときはシャッター速度を上げるだけで対応できます。

一眼レフ時代は頬の純白の羽毛が白飛びしないように補正するのが困難なターゲットでした。ミラーレスではファインダーで見ながら直観的に補正できるのでずいぶんと楽になりました。コントロールリングに露出補正を割り当ててあるので、左手で簡単に補正できます。

カラスも露出が難しいターゲットですが、一眼レフ時代と比べると失敗がなくなりました。

キビタキは比較的暗い森に棲息していることが多く、撮影はシャッター速度と手ブレとのせめぎあいになります。自分の手ブレ限界を知ることによって、限界のシャッター速度を下回らないようにマニュアルで調整して撮影します。感度を抑えるためにギリギリを攻めます。

突然カイツブリが水の上を走りはじめました。このようなときも、上記の設定で撮影していれば、メインコマンドダイアルを回してシャッター速度を上げるだけで瞬時に対応できます。


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Nikon Z 9 ボディ

野鳥撮影にも最強のパフォーマンスを発揮するミラーレスフラグシップです。被写体検出機能で野鳥も認識して目にフォーカスを合わせてくれます。本格的に野鳥撮影をする方にはおすすめです。
FTZ-IIを介して今までのFマウントの超望遠レンズも問題なく使えます。ZマウントのNIKKOR Z 800mm f/6.3 VR Sとの組み合わせは5.5段のVRが効き、800mm(DXで1200mm)ながら手持ち撮影が可能になります。


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位相フレネルレンズ採用の通称ロクロクサンと呼ばれる600mmF6.3の単焦点レンズです。
全長278mm、重量1470gで、600mmの焦点距離からは想像できないほど小型軽量です。レンズ単体で5.5段、Z9やZ8との組み合わせではシンクロVR機構によって6段分のVRにより、手持ち撮影が可能です。
DXフォーマットで使用すると900mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで840mmF9、1200mmF13、DXで1260mmF9相当、1680mmF13相当となります。
最短撮影距離が4mなので、野鳥が近い公園などでは有利となります。

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NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S

位相フレネルレンズ採用の通称ハチロクサンと呼ばれる800mmF6.3の単焦点レンズです。
800mmの超望遠レンズとしては驚くほど小型軽量で、全長385mm、重量2385gしかありません。レンズ単体で5段分、Z9やZ8との組み合わせでは、シンクロVR機構によって5.5段のVRにより、手持ち撮影が可能です。
DXフォーマットで使用すると1200mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで1120mmF9、1600mmF13、DXで1680mmF9相当、2400mmF13相当となります。 最短撮影距離が5mあります。野鳥が遠い公園や小型の野鳥を大きく写したいときに有利となります。
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著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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