デジタル一眼レフ(もしくはミラーレス一眼)、マクロレンズ、ストロボを持っていれば前眼部の撮影は難しくありません。市販されている機材だけで、おそらく現在のカメラならシャッターを押すだけである程度きれいに撮れるでしょう。しかし、症例報告や学会発表に使うレベルの写真を撮りたい場合は少しこだわる必要があります。以下にポイントを列挙しておきます。
撮影モード
一眼レフカメラであれば、P、S、A、Mの撮影モードを選択できるはずです。眼科撮影の場合は、A(絞り優先)もしくは、M(マニュアル)モードで撮影することをおすすめします。
眼科撮影はかなりのマクロ撮影を強いられるので、被写界深度(前後にピントが合う範囲)が浅くなり、撮りたい対象全体にピントを合わせるのが困難になります。P(プログラムオート)やS(シャッター速度優先)だと、絞りがカメラに決められてしまい、被写界深度のコントロールができません。
最初はA(絞り優先)モードで撮影することをおすすめします。
絞り値
犬猫やウサギクラスであれば眼球も大きく、マクロレンズであれば画面いっぱいに目を写すことが可能です。しかし、フェレット、モルモット、ハムスターなど、小型になるほど眼球も小さくなり、マクロレンズで等倍撮影することになります。
一般的に、撮影距離が短くなるほど被写界深度も浅くなり、マクロレンズの等倍撮影(最短撮影距離)時の被写界深度は大変浅くなり、角膜中心にピントを合わせても、水晶体や虹彩、眼瞼はボケてしまいます。
被写界深度は、絞り開放で一番浅く、絞り込むほど深くなります。個人的にはウサギクラスの目ではF18~22、フェレットやハムスターなどの小型種ではF25~32あたりを多用します。
ただし、絞り過ぎると、狭い穴に光を通すと回り込んでしまう波の性質から、解像度が悪くなりますので絞り過ぎないように気を付けてください。一度様々な動物で撮影実験することをおすすめします。
ストロボ
かなり絞り込んでのマクロ撮影なので、そのままだとシャッター速度が遅くなって手振れが発生してしまいます。それを回避するため、ストロボを使用します。
前眼部の撮影であれば、ストロボのモードはTTL自動調光できれいに写ると思います。測光モードやカメラの癖などで、露出がオーバーになったりアンダーになったりすることもあります。デジタルの時代なので、一枚撮影してみて、オーバーだったらストロボ光をマイナス補正、アンダーだったらプラス補正すると白飛びや黒つぶれが抑えられると思います。
私の撮影法
一眼レフであれば、機種によってはいかなる絞りやシャッター速度でも適正露出になるようにストロボの自動調光ができるものもあります。その場合は、撮影モードをマニュアルにすると絞りとシャッター速度を好みの値で撮影することができます。
眼科撮影は、撮影距離も近いので、ストロボの限界を超えることはあまりありません。
個人的には、マニュアルモードで、シャッター速度は1/200s、絞りF18~32あたりまで絞り込んで撮影しています。それによって、適正露出で、ブレず、十分な被写界深度で全面にピントが合った写真が撮れます。
特にフェレットやハムスターなど、眼球が1㎝以下の動物はマクロレンズで等倍撮影することになり、かなり絞らないと一部にしかフォーカスが合わないことになってしまいます。
撮影例
以下様々なエキゾチックアニマルの前眼部撮影例です。学術的な記録写真としては、角膜頂点から隅角や眼瞼まですべてフォーカスが合っていることが必須です。
また、輝点を除き、強膜(白目の部分)などでも白飛びしないギリギリの明るさで写すと良い症例写真になります。
何度か試してみて、適切な絞り値と、露出補正術を身に着けると資料的にも優れた写真が得られるようになります。