徹照像撮影の歩留まりを改善するため、完全同軸照明装置の開発を試みました(2003年)。
レンズ光軸と完全同軸照明にすれば、縮瞳状態でも徹照像が得られるはずです。
方法としては、レンズ直前に45度に傾けたハーフミラーを置き、真横から当てたストロボ光を90度曲げてレンズの光軸と照明光の軸を一致させる方法です。
何度か試作機を作成しましたが、なかなかうまく行きません。ハーフミラーの透過光が露光してしまい、著しくコントラストを低下させるのです。
試作機(理論)
レンズ先端に取り付けるハーフミラーボックスを制作しました。
ストロボの光はハーフミラーで90度曲げられ、レンズ光軸と完全同軸で被写体を照射します。
被写体からの光はハーフミラーを透過してセンサーに到達します。机上の空論ではこれで完璧だったのですが、実際はボツでした。
試作機(実際)
ストロボからの光の半分は被写体に向かいますが、半分は透過して、ボックス壁にあたり、その反射がハーフミラーでカメラ側に90度曲げられ、センサーに到達します。壁を黒く塗っても光源に近いストロボ光なので、予想以上に反射します。
センサーに届く光は、被写体からの光とボックス内の迷光が混ざったものになり、著しくコントラストを低下させます。まったく使い物にならない画像でした。
改良機
ハーフミラーを透過した光をさらに減光させる工夫が必要です。透過した光をさらに分解して、つや消しの黒色塗装で吸収させる作戦です。
ストロボとボックスの間に被写体に向かう光が増加する向きで偏光板を設置し、透過した光は最初の偏光板と直行する偏光角で、さらに45度傾けて配置しています。これで右の偏光板を透過する光はかなり減光され、無反射塗装でほぼ吸収されます。右の偏光板を反射した光も無反射塗装面でほぼ吸収されます。
これにより、ハーフミラーを透過した光が再び後側からハーフミラーに戻ってくることはほぼなくなりました。
改良機により、コントラストが向上し、クリアな映像が得られるようになりました。
実写
完全同軸照明であるため、かなり小型の動物でも徹照像が得られるようになりました。
ウサギの徹照像
散瞳させなくても反帰光が得られるのが完全同軸のメリットです。
フェレットの徹照像
フェレットはタペタムが緑なので、不思議な色の反帰光が得られる。
ハムスターの徹照像
瞳孔は数ミリしかありませんが、完全同軸照明だと反帰光が得られます。
応用
徹照像が得られれば、カメラと眼球の間に眼底検査用の非球面レンズを入れると眼底像が撮影できます。
ウサギの眼底
フェレットの眼底
問題点
装置が大きくなり、取り扱いがしにくいものになってしまいました。特に暗室での扱いが悪いのが難点です。
また、完全同軸なので、当然のことながら画面中央に輝点が現れます。これはかなり邪魔です。
中央の輝点はカメラの露出を狂わせ、かなり補正をしないと適正な露出になりません。
得られる画像は満足でしたが、取り扱いが難しい、癖のある照明装置でした。