360度カメラ リコーTHETA

50年以上カメラを扱っていますが、カメラというものは少しずつ進化するものと思っていました。確かにオートフォーカスができたり、フィルムからデジタルになったり、一眼レフからミラーレス一眼に推移していく革新的イノベーションに立ち会ってきましたが、撮れるものが根本的に異なるものではありません。便利になったり、よりきれいになったりするだけで、写真の概念を覆すような「画期的発明」とは言えない正常進化の範疇です。

ところが、Ricohが作ったTHETA(シータ)は違います。目から鱗とはこのことです。一応、カメラの分類ですが、撮れるものが今までの映像とは異なります。ボタンを押すだけで、THETAを中心とする360度の風景を記録することができるのです。これは画期的なカメラです。

Post from RICOH THETA. #theta360 – Spherical Image – RICOH THETA
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全天球カメラの歴史

実は民生品の360度カメラはTHETAが最初ではなく、2000年頃からNikonがCoolpixの900シリーズと、FC-E8 というフィッシュアイコンバーターを組み合わせて実現していました。Coolpix900シリーズは本体を固定するとレンズ部を前後に180度回転することができ、前と後ろで1枚ずつ撮影すればそれらをつなぎ合わせて360度の映像にすることができました。魚眼レンズと言えばNikonのお家芸なので、20年前にそのデモを見た時に、さすがNikonと衝撃を受けました。
今でこそGoogleマップのストリートビューで全天球画像は当たり前になっていますが、2000年頃はまだそのようなものは世の中になく、真上も真下も見れる真の360度画像は画期的でした。
しかし、Coolpixによる全天球撮影は、そこで進化が止まってしまったのが残念です。その頃はまだ需要がなかったのか、Nikonがあまりに先進的すぎて時代がまだついてこれなかったのか分りませんが、Coolpixの900シリーズもフィッシュアイコンバータも、その後製造中止になってしまっています。

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それから10年以上が経過した2013年、180度魚眼レンズを前後に取り付け、一度に360度画像を得られるように進化させたのがRicohのTHETAです。

上記2000年の頃のCoolpixでの撮影は、カメラにフィッシュアイコンバーターを取り付け、三脚に固定して前1枚、レンズ部を回転させて後1枚撮影し、それをPCに読み込んでソフトで合成してはじめて全周が見れる状態になりました。つまり、1枚の360度画像を得るのは大変面倒な処理が必要だったということです。張り合わせ境界部のスティッチングも状況によってはうまくつながらず、解像度もあまり高くありませんでした。

ところがTHETAは違います。最初から前後に180度撮影できる魚眼レンズが付いています。しかもその2つの映像を合成するソフトも内臓されているため、利用者は単にシャッターを押すだけで360度画像のデータができてしまいます。スティッチングも極めて良く処理されていて、どのような条件でも、継ぎ目はほとんど分りません。

THETAも初代THETAからTHETA m15、THETA S、THETA V、THETA Z1と進化しています。画質もどんどん良くなり、高感度耐性も良くなってきています。最新のZ1ではセンサーが1インチになり、かなり高画質になっています。

Nikonも上記Coolpix+魚眼から20年近く経ってからKeyMissionというアクションカメラのシリーズを出しました。全天球カメラも含まれていましたが、残念ながら少し遅かったようです。

どういうシチュエーションで使うか

現在は3台目の購入でTHETA Sを使用しています。いつもポケットに入れて持ち歩いているほどお気に入りで、ほぼ毎日何かしら撮影しています。

自分は記憶力が悪く、病気ではないかと思うほど人の顔を覚えられません。きっと人の顔を見ていないのですね。若いころからいつもそれで苦労してきました。
しかし、THETAを手に入れてからは、初対面の人と会ったときは、一応断ってからTHETAで一枚撮らせてもらうようにしています。その場にいる人全員が写るので、その写真一枚で、何月何日の何時何分に、どこで、誰と会ったか、が記録されるのです。人を覚えられない人にとっては画期的です。

仕事で医療現場の撮影をするときも、術創は一眼レフで撮りますが、マクロ撮影なので、局部しか写りません。しかし、THETAで1枚撮るだけで、誰が執刀で、看護師が誰で、見学者が何人いたか、などといった記録を残すこともできます。

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野鳥撮影のときも、撮影した場所で1枚THETAで撮影しておくと、どこで、どういうシチュエーションで撮ったかの記録が残せます。全天球が写るので、一枚の写真で天候まで記録されます。

その他、何気なく町を歩いているときも撮影します。お店が変わったり、街並みが変わったとき、前はなんだったっけ?と疑問に思うことはありませんか。そういう時のために、普段から何気ない風景も撮っておくと役に立ち、面白いものです。工事をやっていたりすると、定期的に撮ったりしています。
自分は出会ったことはありませんが、事故や事件に遭遇したときなども撮影しておくと、証拠写真として使えるかもしれません。

一見特殊なカメラのように見えますが、実は日常的に使える画期的なカメラなのです。

問題点

問題は周りの人全員が写ってしまうので、肖像権の侵害になることがあるかもしれません。公開するときは関係者以外はボカシの処理をするなど、気を付ける必要があります。

自分が写ってしまうのも場合によっては問題かもしれません。会合などで人と一緒に写るときは重宝しますが、街中を気軽に撮るときなどは、いつもムサイ野郎が写っているのはあまり好ましくありません。
そういう場合は、THETAを頭の上に掲げてシャッターを押すようにしています。そうすると周囲の状況だけを写すことができます。初代ウルトラマンの変身ポーズのようでちょっと恥ずかしいのですが、一瞬です。

取り扱い注意

360度撮影するため、THETAは前にも後ろにもレンズが出っ張っています。むき出しでは大変危険な状態です。必ずケースに入れて持ち運びましょう。
一度、胸ポケットにいれて持ち歩いていて、屈んだときにコンクリートの上に落下させてしまったことがあります。ソフトケースに入れていたにも関わらず、落下の向きが丁度悪かったのか、片方のレンズが割れてしまいました。修理で直りましたが、修理代はかなり高額でした。それ以来、必ずストラップを付けています。

THETA自体も進化するのは歓迎ですが、進化とともに価格が随分と上がってしまいました。すごい技術が凝縮されているのは分かりますが、Vで5万弱、最新の1インチセンサーを使ったZ1は10万オーバーです。どんどん進化するので、常に最新のTHETAを使いたいのですが、毎年買い替えるのは負担が大きすぎます。しかし、THETA S以降は画質もかなりよいので、今一台買うのでしたら、Vあたりを購入して長期に使用しても不満を抱くことはないでしょう。Z1は余裕がある人にはおすすめです。

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RICOH THETA S


RICOH THETA V


RICOH THETA Z1 51GB
著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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