公園のマナー:餌付け

餌付けも野鳥観察・撮影マナーとして全国的に問題になっているようです。
餌付けに関しては賛否両論あり、グレーゾーンもあるので一概に善悪を決めることはできませんが、餌付けにも様々なレベルのものがあります。「餌付け」と一言でまとめてしまうから問題になるのだと思います。ちょっと分類してみましょう。

実写ではありません。AIにそれらしいキーワードで描いてもらいました。すげー! Image Creator

絶滅危惧種などへの餌やり

トキなどが良い例だと思いますが、人工繁殖した個体を野生に戻すプロジェクトなどでは、採取しやすいように餌を撒いたりすることはあります。保護鳥などに餌を与えることも行います。
こういった餌やりは、基本的には人間が破壊してしまった自然界で生きて行けなくなった種であるとか、人為的な障害によって怪我を負った個体などに対して行われるもので、野鳥の専門家や学者などの有識者のコントロールの元に行われているものです。
元々人間の自然破壊によって被害を受けている動物の保護活動ですから、もちろんこれはOKでしょう。

撮影のための餌付け

Image Creator :ちょっとキモイ

個人的には、これが悪質なパターンだと思います。野鳥のためではなく、自分が理想とする写真を撮るために餌を撒く行為です。撮影のために邪魔な枝を伐採したり、とまりやすい枝を設置するのと同様、自然破壊行為です。
野鳥の健康を全く考えていない身勝手な行動です。
昨今は間違った鉄道ヲタクの蛮行がニュースで話題になっていますが、間違った野鳥ヲタクも同様です。
日本野鳥の会なども、野鳥の餌付けは行わないよう呼び掛けていますが、餌付けする人の耳には届いていないでしょう。
人によっては「俺が育ててやってんだ」とか、「俺が餌をやってるからこの公園には野鳥が来るようになったんだ」などと大きな勘違いをしている人も多いのです。日課として毎日与えに来ている人もいるようです。
公園によっては「餌付け禁止」の看板をだしているところもありますが、誰も見ていないときに餌をやっているのでしょう。
特にカメラマンのターゲットとして人気が高い美しい渡り鳥などが餌付けの対象になりやすいようです。

多くはペットショップで簡単に入手できるミールワームを与えられていることが多く、栄養の偏りが懸念されています。渡り鳥たちが渡るきっかけはまだ完全には解明されていませんが、気温や日照時間だけではなく、昆虫や実の種類など、食べ物の変遷がトリガーになっていることも考えられます。

ミールワームは多くの鳥が好んで食べますが、そこが問題です。人工繁殖されたミールワームは栄養価は高くても、ビタミンミネラルが欠如しており、ペットの餌としてもミールワーム単食は様々な病気の原因になります。
ミールワームを与え続けることは、子供がフライドポテトが好きだから毎日フライドポテトを与える行為に相当します。まともな親ならそんなことは絶対しません。

健康な野鳥を餌付けすると、

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  • 渡りの時期を逸する
  • 栄養過多で肥満になり、飛べなくなる
  • ビタミンミネラル不足が様々な疾患を引き起こす
  • 本来食べるべき昆虫を食べないため、生態系の破壊が起きる
  • 普段接触がない野鳥同士が餌場に集まるため、ウイルス感染などの感染拡大を引き起こす
  • 人に慣れ過ぎると事故につながる

など、様々な報告があります。

問題は、公園で撮影のために餌をまく人たちは、自分の行為を良いことだと思ってやっている点です。「野鳥のため」、「他のカメラマンのため」など、鳥や鳥好きな人間のためになると思っているようです。何度も是非を巡って争いをしている場面に遭遇していますが、餌付け肯定派は文句を言われる筋合いはないという態度です。むしろ感謝しろよ、という主張です。

野鳥は喜んで寄ってくるかもしれませんが、それは動物虐待として受け止められることもあります。

撮影目的ではない餌やり

駅前でハトに餌をやる人、公園でカラスに餌を与える人、川や池で水鳥たちに餌を撒く人など、日常的によく見かけます。多くは古くなったパンや残飯などで、元は人間の食べ物です。
人間がおいしいと感じる味付けは、多くの動物も好きなようで、喜んで食べてくれます。しかし、鳥たちにとっては塩分、糖分、脂肪分が過多であることが多く、病気を誘発したり、寿命を縮めることにつながります。

公共の場でドバトやカラスに餌を与えるのは、場所によっては条例によって禁止されていて、それらの行為はれっきとした条例違反となり、罰則があります。餌付けによって、異常繁殖、糞の公害、騒音問題、ゴミの問題など、人間にも影響を及ぼす様々な問題の原因となります。

動物愛護法の観点からもハトオバサン、カモオジサンたちには考え直してみていただきたいと思います。

自宅での餌やり

野鳥に対する影響は、公園で餌を与えるのと自宅の庭やベランダで餌を与えるのは大して違わないと思いますので、慎むべきことだと思います。しかし、庭での餌やりによって近隣の住民が騒音や糞公害の被害を受けない限り、あまり問題になってはいないようです。
庭に来る野鳥に餌を与えてはいけない、などといった法律や条例ができたら、ずいぶん住みにくい世の中になったな、と感じてしまうかもしれません。
矛盾しているとは思いますが、このあたりはグレーゾーンなのかもしれません。

水やりは良いのか

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餌がダメなら水やりは良いのか、という問題になります。
上記餌やりの弊害の箇条書きと同じことが水場にも当てはまります。公共の場所でも、野鳥の水場やバードバスを設置してあるところもあります。厳密に言ったら様々な野鳥が集まり、野鳥同士が近くで接することになるので、寄生虫や細菌、ウイルスの感染の蔓延を助長するかもしれません。良かれと思ってしたことが、野鳥の命を縮めることになる可能性もあります。

しかし、多くの人は水場くらい提供してあげても良いじゃないか、と思うことでしょう。そもそも公園の池などは、そのほとんどは人為的に作ったものですから、野鳥に水場を提供していることに他なりません。

自宅の庭やベランダなどにバードバスを設置している人も多いでしょう。水を飲んだり水浴びをする野鳥の姿は心癒される光景です。これもグレーゾーンなのかもしれません。
しかし、バードバスなども、そのまま放置している人もいれば、1日に何度も水替えをしている人もいます。水に糞をする野鳥も多いため、ウイルス感染などの感染源になる可能性は否定できませんし、そもそも水浴びは羽ダニなどを落とす目的もあるので、溜められた水場ではそういった外部寄生虫の感染源にもなる可能性は否めません。
グレーゾーンであっても、バードバスなどを設置する場合はこまめなメンテナンスを行うことが前提でしょう。

総論

以上のように、餌付けと言っても様々なパターンがあると思います。十人十色、様々な考えがあると思いますが、個人的には、餌付けの善悪は野鳥の生態を知ったうえで「野鳥のためになっているか」で是非を判断しています。もちろん、絶滅危惧種などへの有識者による管理された餌やりは問題ありませんが、自分が近い距離から最適なシチュエーションで撮影するための餌付けは、野鳥にはメリットがなく、極めて身勝手な行為ではないかと思います。自分の心を癒すために人間の食べ物を与えたりする行為も同様です。

自分は会員ではありませんが、日本野鳥の会の指標はいつも参考にさせていただいています。

餌付けの弊害に関する論文も多く、ネットの論文検索でもたくさん出てきますので、ご興味がある方は参照ください。「野鳥 餌付け」などのキーワードで検索すると興味深い論文が出て来ると思います。

「野鳥が好き」という人は多いと思いますが、単に愛でるだけではなく、野鳥の生態をきちんと理解し、直面している問題や行動パターンなども知り、将来に渡ってこの地球上で人との共存ができるように正しい行動をして行きたいと思います。

ここでは善悪の明確な答えは出しませんが、野鳥たちとうまく付き合える方法を考えるきっかけになっていただければ幸いです。

一番に考えなければいけないのは、その行為が「野鳥たちのためになっているのか」ということだけだと思います。「自分のため」な場合は動物虐待になっている可能性があることを認識する必要があります。

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著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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