海外帰国子女なのに英語はいつも80点

小学3年から中学2年までの6年間英語圏で過ごしたので、日本の中学、高校、大学では英語の勉強は全くしないで済みました。英語の授業中はずっと数学の問題を解いていましたし、試験は何も勉強しないでぶっつけ本番です。単語帳やカードも作ったことがありません。

面白いことに、それでいつもコンスタントに80点前後なのです。適当にやっても、真剣にやっても、80点前後は変わらず、今まで英語のテストで100点を取った記憶はありません。海外に行ったことがなくても、英語好きの生徒たちの方がよっぽど良い点を取ります。
以前、同じ様に英語圏から帰って来た帰国子女と話したことがありますが、全く同じことを言っていたのが印象的でした。その人も、いつも80点だと言っていて、点数まで同じです。まあ、何もしないで8割がた取れていればいいか、と、あきらめてそのまま何もせず、大学受験も英語の勉強は一切せずに通しました。英語には興味がなかったので、英語の勉強をする時間があったら数学の問題を解いていました。 当時はストイックなヲタクで、数学以外の学問はクソだと思っていたので、英語のテストの見直しもせず、どうせまた80点だろうと思って気にもしていませんでした。なので、実際何をどう間違えて80点だったのかも把握していませんでした。

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謎の解明

大学を卒業して仕事につき、数年後にこんな自分でも結婚できました。自分はバリバリの理系でしたが、家内はバリバリの文系です。英米文学科卒で、今は塾で大学受験生まで受け持つ英語講師をしています。

家内と話をしていて、自分が今まで英語のテストで80点しか取れなかった理由がわかりました。日本の英語教育が百年くらい前のイギリス英語なのです。家内が持っていた問題集を何気なくやってみた時に発覚しました。

括弧内に一人称をいれよ。
He is taller than(  ).

私は迷わず「me」を入れました。でも、これは日本ではバツなのです。日本の英語教育では、ここは「I」を入れるのが正解としています。びっくりしました。アメリカ人にやらせたら、おそらく100%「me」と書くでしょう。

別の問題にあった It is I who broke the window. は私にとっては大変奇妙に聞こえます。It is me who broke the window. と言うでしょう。しかし、日本の英語教育では、 It is I who broke the window. と書かないとバツされます。
自分が間違っているかもしれないと思い、アメリカのネイティブの友人にもメールで聞いてみました。やはり間違いなく「me」です。

『文法的には確かに「I」が正しいのかもしれないけど、現在そこに「I」を入れる人はいないでしょう。「I」を入れると、何だかハリーポッターの世界のような古いイギリスの文章の印象を受けます。』

とコメントをもらいました。彼女は生まれも育ちもアメリカで、ハーバード大卒の才女なので、情報は確かでしょう。厳密に言うとI が正しいのでしょうが、デファクトスタンダードとして、現在は me が主流で、あえて古語的な雰囲気の文章にする場合に「I」を使うということのようです。
日本語だったら、「拙者」とか「それがし」というようなものでしょうか。間違ってはいませんが、現在そんな一人称を使う人はいないのと似ている感じです。

さらに、a、theといった冠詞、in、on、atなどの前置詞をよく間違います。普段話しているときはこの辺りは曖昧で、ネイティブの子供たちもいいかげんに使っていました。そんなに厳密に考えたことがないのです。自分の中ではどっちでも意味が通じるからいいか、程度のものです。会話でははっきり言わなかったり、場合によっては省略してしまったりもします。
ところが、日本の英語教育では厳格で、これを間違えただけでバツなのです。「そんなことで目くじら立てるなよ」と思うのですが、日本の先生方は大変厳しいのです。

穴埋めでも、英作でも、こういうところでちょこちょことバツを食らうので、80点なのです。
ようやく謎が解けました。海外帰国子女の方々には共感していただけると思います。

反対語

高校の頃、英語の先生に呼び出されてひどく怒られたことがあります。
英語のテストでいくつか単語が書いてあって、その反対語を答える問いがありました。その中に「sweet」という単語があったのです。
当時は数学命だったので、生意気にも場合分けして可能性を列挙して、設問として問題があるのではないかと書いてしまったのです。

「甘い」の反対は主観であり、状況によって異なります。「辛い」、「しょっぱい」、「苦い」、「甘くない」も全て正解です。さらに「sweet」には「かわいい」とか「良い人」といった意味でも使われますから、「醜い」とか「いじわる」も正解のはずです。恋人同士や新婚夫婦は相手の名前の代わりにsweetと呼ぶこともあります。「かわいこちゃん」みたいな感じでしょうか。
そういった可能性を考え、シチュエーションによる場合分けをして、こういう場合は「hot」、こういう場合は「salty」、「ugly」、「mean」などを列挙して、想定する状況によってこんなに解が変わるような問題は問題としておかしい、と、解答用紙の裏まで使って書いたのですが、バツでした。
先生も痛いところを突かれて逆切れしたのでしょう。

「日本の英語教育では、sweetの反対はbitterに決まっているのでそう覚えなさい」と頭ごなしに言われておしまいでした。それは非論理的だ、と、反論したのですが、「そんなこと言っていると日本の大学は受からないぞ」とまで言われました。これは未だに納得できていません。設問として未だに問題があると思っています。せめて、hotもsaltyもbitterもuglyも想定できるすべてを正解にすべきです。そうではなければ、sweetのような主観や状況によって答えが左右されるような単語の反対語を聞いてはいけないのです。

下手に「甘い」以外の意味や使われ方を知っているとこういうことが起きてしまいます。郷に入っては郷に従え、ということでしょうか。

と言うことで、たいていの海外帰国子女は、英語は多少話せても、日本の英語のテストは意外とできない、というお話しでした。

著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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