5.6mm芯ホルダー:Graphite:芯の加工

5.6mmの芯はそのまま使うのではなく、多くの場合、先端を加工して使用します。芯ホルダーもさることながら、芯の種類と先端加工の形状は、5.6mm芯を使う人が一番こだわる部分です。

芯削り

普通は芯を削って使いますが、ここが個人のこだわりが見える場所で、一番マニアックな部分です。削る角度、形、先端の処理など、それぞれ使う人の好みに応じて削って使います。

5.6mm専用の芯研器も市販されていますが、種類が少なく、自分の好みの角度と合っていないことが多いでしょう。5.6mmもあると鉛筆用の削り器を使うこともできます。しかし、鉛筆用の多くは鋭角になり過ぎることが多く、好みの角度に削れる鉛筆削りを探すのは大変でしょう。
この削る角度が最もこだわる項目で、良し悪しではなく、好みが分かれるところです。使っているとどうせ円錐形になってくるので、折った断面そのままにしている人もいる一方、かなり鋭角に尖らせる人もいます。そのあたりは完全に個人の好みで、何が最適かという一般論はありません。

そのため、5.6mm芯ユーザーの多くは自分でナイフで削ります。われわれ旧人類は小学生のころから肥後守(ひごのかみ)を持ち歩き、休み時間などに鉛筆を削ったものですが、それに慣れている人は芯ホルダーの芯を削るのは何の抵抗もありません。自分の好みの角度、好みの形状に削れるので、この方法がベストです。
というよりも、自分で好みの角度や形状に仕上げられるのが5.6mm芯を使うことの醍醐味でもあります。多くは柔らかい芯だと思いますので、伝統的な肥後守でも良いですし、こだわりのナイフでもいいですし、カッターナイフでも十分です。自分は片刃の肥後守を愛用しています。

削るのにヤスリを使う人もいます。円錐形ではなくコンパスの芯のように1面を削り取った形に仕上げる人もいます。ナイフで多角錐状に削って、角を利用するためにそのまま使う人もいるし、ヤスリの上で回して角のない円錐状に仕上げる人もいるでしょう。
本当に千差万別です。逆にそういった個人のこだわりを受け入れてくれるのが5.6mmの芯なのです。

付属の芯研器

芯ホルダーによってはリアキャップ内に芯研器が内蔵されています。多くは鈍角に削られる仕様です。それが好みの角度でしたら良いのですが、多くの人にとっては鈍角過ぎるのではないでしょうか。非常用の芯研器と考えた方が良さそうです。

5.6mm芯専用芯研器

5.6mm芯専用の芯研器も売られていますがレアものです。もし好みの角度に削れる芯研器と巡り合えればラッキーです。自分は使ったことがありません。

鉛筆削りを代用

5.6mm径は結構太いので、鉛筆削りを代用することも可能です。
ただし、一般的に鉛筆は鋭角に削ることが多く、芯ホルダーの芯削りにはいささか鋭角すぎるかもしれません。鋭角が好みの方は鉛筆削りを使うのも良いでしょう。
色鉛筆用は鈍角のものが多いと思います。眉墨用のシャープナーなども代用できると思います。いずれにしてもそれぞれ角度が違うので、削ってみないと分からないのが難点です。

M+R 0602

芯が5.6mmあるので、本来は鉛筆用ですが、メビウス+ルパートのM+R 0602 は芯研器として使えます。

M+R 0602 も真鍮削り出しで、削り出しフリークにはたまらない組み合わせです。

よく切れる刃物で削ると、まるで金属のようにピカピカの仕上がりになります。いささか鋭角すぎます。やっぱり自分でナイフで削るのが正解かもしれません。

クツワ 鉛筆削りトガール

画期的な鉛筆削りが登場しました。クツワ株式会社のT’GAAL(トガール)です。
削る角度を鈍角から鋭角まで5段階に調整する機構がついています。連続無段階でないのが玉にきずですが、好みの角度に近い角度に削ることができると思います。鉛筆も削り角度にこだわりを持っている人が多いと思います。普通は鋭角が好みだけど、色鉛筆は少し鈍角にしたいなど、様々な要望があると思います。そういった人たちのために開発されたのだと思いますが、芯ホルダーフリークたちにも素晴らしい仕事をしてくれます。考えた人は天才です。
削るために芯を長めに出さないと削れないので、短くなってくると削れなくなりますが、概ね問題ないでしょう。短くなったら肥後守にバトンタッチすれば良いのです。

肥後守(ひごのかみ)

最近は危険だということで、小学校への刃物の持ち込みは禁止になっているようです。我々の世代が小学生だったころはハンディな鉛筆削りなどはなく、筆箱には鉛筆とともに肥後守が入っていました。鉛筆は各自肥後守で削って使いました。
肥後守を使うと、1度や2度は指を切る洗礼を受けるものですが、そうやって痛い思いをして刃物の扱いに慣れていくものです。今は子供が学校で指を切って帰って来ようものなら、モンスターペアレントが学校に殴りこんで来るのでしょう。そんなメンドクサイことにさらされる先生方もたまったものじゃないので、全面禁止になったのだと思います。

鉛筆や芯ホルダーの芯を削るには肥後守は最適な道具です。小学生のころに使っていたものは無くなってしまったので、芯ホルダーを再び使うようになってから肥後守も新たに買いなおしました。

肥後守も昔と比べてずいぶん進化しています。バリエーションも豊富で、数百円のものから数万円のものまであります。仕様も青紙を使ったものや、鍛造したもの、鞘に彫刻が施されたものなど様々です。

青紙は鋼(はがね)のグレードに付けられた名称です。日本刀や和包丁は鋼を軟鉄でサンドイッチにしたものを鍛造して作ります。それによって鋭い切れ味と折れにくい柔軟性を兼ね備えた最高の刃物になります。肥後守で青紙割込と表記されたものは、日本刀と同様な作りで、軟鉄の間に青紙の鋼をサンドイッチにしたものです。鋼と軟鉄は色が違うので、この方法で作られた刃物は研ぐと刃文が現れます。

一般的な肥後守は両刃ですが、青紙の片刃仕様のものがあったのでそれを買ってみたところ、芯削りとして完ぺきな仕事をしてくれたので、以降芯削りにはそれを愛用しています。片刃は鋼と軟鉄のサンドイッチではなく、裏側に青紙の鋼が使われています。
両刃は利き手に関係なく使えますが、肥後守の片刃は右利き用です。左利きの方は普通の両刃の肥後守をおすすめします。

授業中に鉛筆のおしりをコケシに改造して遊んでいたことを思い出しました。

総評

あらためて様々な道具で先端の加工をしてみました。今までは肥後守がベストだと思っていましたが、今回初めて使ってみたトガールが思いのほか優れていて、円錐形に削るのが好みの方にはおすすめできます。
円錐以外のこだわりの形に加工する場合は肥後守が最も自由度が高いでしょう。短くなってきた芯にも対応できます。



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かね駒 肥後守 青紙片刃 普通の肥後守とは刃の形が異なり、珍しい片刃です。
材質も青紙の鋼を使用しているので、切れ味は抜群です。
ただし、右利き用の片刃なので、左利きには向きません。左利きの方は一般的な両刃の肥後守をおすすめします。

肥後の守 青紙割り込み 中

肥後の守 青紙割り込み 大

肥後守 大手造本鍛造

肥後守定駒 青紙鋼割込 特別手造り 真鍮 特大 桐箱

かね駒 肥後守 ~ Aranea アラネア~アンティークゴールド ブラック


トガール
画期的な鉛筆削りです。
削る角度を5段階に変更できます。色鉛筆などは鈍角、学習用は鋭角に削ったりすることができます。
5.6mm芯ホルダーの芯の加工に使ってみたところ、問題なく使えました。鈍角、鋭角の調整が自由自在です。色々な鉛筆削りを試してみる必要はなくなりました。
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Kaweco

Kaweco カヴェコ クラッチペンシル スケッチアップ ブラスRAW こんなに重くて丈夫な芯ホルダーを作る必要があるのかと思うほどしっかりした作りの5.6mm芯ホルダーです。姉妹品として銀色のブラススティンクローム、黒のマットブラックがありますが、軸の材質はすべて真鍮の削り出しで、表面にメッキや塗装が施されているものと思われます。自分は剥げると嫌なので、ブラスRAWにしました。
ブラスRAWという名称からも、真鍮素材そのままむき出しを主張したこだわりを感じます。
軸の太さは1㎝ですが、長さは短く、10.2cmしかありません。ゴロンとした形状です。そのため、長い芯は折らないと入りません。重さは45gあります。重い方が描きやすいという人にはきっとはまります。

Kaweco カヴェコ クラッチペンシル スケッチアップ ブラススティンクローム

Kaweco カヴェコ クラッチペンシル スケッチアップ マットブラック
別売りクリップ

Kaweco カヴェコ クリップ N ゴールド

Kaweco カヴェコ クリップ N シルバー

Kaweco カヴェコ クリップ N ブロンズ

KOH-I-NOOR HARDTMUTH

コヒノール 芯ホルダー 5.6mm KH5348 ブラック チェコの老舗文具メーカー、コヒノール(KOH-I-NOOR)社の5.6mm芯ホルダーです。
全長が14.2㎝あり、コヒノールのオリジナル替え芯がそのまま使えます。
軸は樹脂製ですがバランスが良く、クリップなどの余計な突起物もないので、スケッチやデッサンに特化した設計になっています。
重さ36g。

KOH-I-NOOR(コヒノール) メカニカル クラッチ リードホルダー 56 5340 シルバー
重さ50gの重量級。

コヒノール 芯ホルダー 5.6mm KH5344
全長10㎝、18.14 g。

KOH-I-NOOR コヒノール 5353 Versatil 5.6mm 芯ホルダー(ブラック)
全長11㎝、重さ20g。

コヒノール 芯ホルダー 5311CN1005 5311 ブラック 5.6mm 4B
121.5mm、42g。

替え芯


カヴェコ 替芯 5B 5.6mm (3本)

コヒノール 芯ホルダー 5.6mm 替芯 4865/6B

コヒノール 替芯 5.6mm 4B
カラーの芯もあります。
カヴェコ 替芯 カラー 5.6mm (3本) この製品は長さ8㎝なので、短い軸でもそのまま使えます。
この手の色物は固い芯が多いのですが、この芯は何と言うか、パステルのような感触です。
透明なプラスチックケースに入っているので、筆箱の中に忍ばせておくことができます。
意外と脆いので、使っていると細かいくずが出ます。あまり筆圧をかけると折れそうです。あまり鋭角に研磨しないことをおすすめします。

e+m クラッチペンシル替芯 5.5mm (蛍光3色)

レインボーペンシル芯 5.6mm x 90mm 色付き替芯

コヒノール メタリック芯 5.6mm
著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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