撮影実習

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授業

大学で電子機器実習の授業を持っています。PCの基礎から定番のワード、エクセル、パワーポイントを自由自在に使えるようになるため、大学に入ってすぐの一年前期に教えます。日々のレポートや実験データの統計処理、卒論製作や発表など、学生たちが大学生活で困らないようにするのが使命です。

その中で、情報機器の演習として写真撮影の授業も行います。ネットからのパクりは許されないので、自分で写真を撮って、PCに読み込み、加工してワードやパワーポイントに張り付ける練習をします。10年以上前はまだスマホも普及してなく、学生たちも入学祝に買ってもらった一眼レフやコンパクトデジカメなどを持ってきて、あれこれ調整しながら撮影実習にのぞんでくれました。古き良き時代でした。

写真はスマホの時代

しかし、昨今はよほどのマニア以外、カメラを持っている学生はなく、写真を撮るのはほぼ100%スマホのカメラです。写真にこだわりがある自分としては大変残念なのですが、時代がそうなってしまったので仕方ありません。授業内容も少しずつ変化させて、今はスマホで写真を撮る前提で授業を進めています。

スマホで残念なのは、調整ができなかったり、できても限界があることです。カラーバランスを調整したり、露出の過不足を調整して白飛びを抑えたり、といった技術を本当は身に着けて欲しいのですが、それをスマホで行うには無理があります。

しかし、くやしいことに、最近のスマホは良くできていて、何も考えずに誰が撮っても大変よく写ります。自分の出番もなくなってきました。
これからは、レポートも論文もスマホで撮った写真が使われるのでしょう。ちょっと寂しい気がしますが、それも時代の流れです。明らかに10年前のコンパクトカメラよりも良く写りますし、気軽に撮れるので容易に記録に残せるようになることがメリットでしょう。

驚いた使い方

先日は顕微鏡の接眼部にスマホを押し当ててガシャガシャ写真を撮っている学生がいたので、見せてもらったら、立派な顕微鏡写真になっていました。顕微鏡カメラが付いているのに、それを使わずにスマホで撮っていました。そのほうが楽なのだそうです。

昔は三眼鏡筒を使って、撮影用レンズを付け、アダプターをかませてカメラを固定して、ようやく顕微鏡写真が撮れるようになりましたが、今はそんな必要はないようです。
その学生はそうやって撮った写真をそのまま卒論に使っていました。

もう一人はスマホのカメラ部に専用の望遠レンズを付けて野鳥の記録写真を撮っていました。さすがにこれは画質的には野鳥写真の作品として使えるレベルではありませんが、種の同定や卒論の証拠写真としては十分使えるレベルです。参りました。

スマホに取り付けるマクロレンズまであって、動物の舌の微細構造を撮っている学生もいました。
そういう時代です。百均で買ったLEDライトをあてたりして、現在の学生たちはあるものを工夫して賢く生きる術を持っています。

最近特に驚くのは、講義で、「ここ重要だから覚えておいてー」と言うと、皆スマホを出してピロリン、ピロリンとプロジェクターで投影した画面の写真を撮るのです。おいおい、後でそんな写真を見て復習したりしないだろ、と思うのですが、最近の若者はそういう文化なのかもしれないので、文句は言わないことにしています。

撮った写真はどうする

スマホの普及とともに写真を撮ることが身近になった今、彼らはその写真をどうしているのでしょう。彼らにとってはスマホはコミュニケーションのツールであり、フェイスブックやインスタ、ツイッターなども友達の数を競うツールとなっているのでしょう。友達の写真の数もその一環なのかもしれません。今はクラウドに保存され、ほぼ無制限に写真が保存できます。何千枚、何万枚という写真を個人が所有している時代になってきました。良い時代になったと言えるのでしょう。

私たち旧人類は、写真を撮るためにはまず高価なカメラを持っていなくてはならない時代で、フィルムを買って装填して、絞り、シャッター速度を調整してシャッターを押す、という一連の儀式が必要でした。そして、写真屋さんに現像と焼き付けを頼んで、わくわくしながら1週間ほど待ってようやく写真ができてくるというプロセスを経る必要がありました。お金も時間もかかる作業です。そのため、1枚の写真をすごく大事にしました。撮影するときも色々と考えて慎重に撮りましたし、できた写真もアルバムに貼って大切に保管しました。

今はきっとそんな感覚は古いのでしょう。スマホで適当に撮って、クラウドにストックして友達とシェアする。それが定番の使い方のようです。

実習

学生のスマホ普及率が100%になっている今、写真を撮ったことがない学生はいません。スマホを向けて画面をタッチすればきれいな写真が誰にでも撮れてしまいます。もう私が教えることもありません。
授業内容も時代に合わせて変化させていかなければなりません。

以前は絞りによる被写界深度の調整やホワイトバランスの合わせ方、露出補正の方法などの講義や実習を行っていましたが、最近は画像データの転送方法や保存方法、画像処理などがメインとなってきています。撮る前や撮る時ではなく、撮った後の話です。
撮る時に考えるのは構図くらいになっているのではないでしょうか。構図さえ、最近はテーブルフォトなどで、お皿はこの辺に配置しなさい、とおせっかいな表示が出るアプリまであります。自分で考えて調整するよりも、スマホに従っていた方が何でもうまく行く時代になってしまったようです。

未来像

おそらく、今後は世の中の写真撮影はほとんどスマホになるでしょう。2020年現在はまだスマホでは撮れない領域でカメラが生き残っていますが、10年後にどうなっているか分かりません。

スマホで文章を書いて、スマホでグラフを描いて、スマホで写真を撮って、スマホで画像処理して、スマホでそれらをまとめてレポートや論文を作って、スマホでインターネット経由で提出する、という時代が間違いなく来るでしょう。その頃には定年になっているはずなので、気が楽ですが、時代についていくのも大変です。

老いてはスマホに従え

ってことでしょうか。


学生たちが使っているのを見て、自分も試してみました。面白いですねぇ、これは。
このセットは作りもよく、超広角、マクロ、魚眼撮影の用途にはおすすめできます。コストパフォーマンスはすこぶる高いと感じました。
著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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