2024年9月21日から全国書店や文具店、ネットショップなどで販売しています

ありがたいことに、来年2025年版も緑書房さんから依頼をいただけましたので素材の提供をさせていただきました。今回も撮り溜めた数十万枚の中から数か月かけて14枚を選択しました。
例年通り、これから野鳥撮影をはじめたい方やうまく野鳥撮影ができなくて困っている方々のために、EXIFデータの公開と解説をさせていただきます。なお、この撮影法や機材、撮影データが正解と言う訳ではありません。無限のパラメーターの中のあくまでも一例です。皆様の野鳥撮影の参考になれば幸いです。
撮影地
よくお問い合わせをいただきますが、野鳥保護の観点から、申し訳ございませんが撮影地の詳細は非公開とさせていただきます。自分は会員ではありませんが、日本野鳥の会が提唱されている野鳥撮影のフィールドマナーに従っています。
しかし、人里離れた特別な場所に行っているわけではなく、すべて神奈川県と東京都の県立や市立の都市公園で、電車の駅から徒歩で行ける公園です。テーマが「身近な野鳥カレンダー」なので、都市部の公園で見られる野鳥にこだわっています。近くの公園にもこんなにかわいらしい野鳥がいるんだ、と言うことを知っていただきたく、本当に「身近な公園」でしか撮影していません。
野鳥撮影は、野鳥と出会わないと話がはじまらないので、車ではなく、とにかく足を使って歩き回ります。健康にも良いので一石二鳥です。
撮影日時
他の仕事もあるので、仕事の合間で暇さえあれば春夏秋冬、いつでも野鳥撮影に行くようにしています。とくに撮影シーズンである冬場は多く出かけます。
深夜に仕事をしていることが多いため、野鳥写真家としては致命的に朝が苦手です。家内も夜型で、早起きは論外です。したがって、バーダーとしてはダメダメで、撮影に出るのはいつも午後です。今回の写真もすべて夕方に撮影したものです。野鳥が活動するのは早朝と夕方なので、午後からでも結構撮れるのです。
もちろん、夕方の撮影を推奨しているわけではございません。私たちがダメなだけで、早朝から活動できる方々は朝の方が好条件で野鳥撮影ができると思いますのでそちらをおすすめします。
機材
カレンダー写真が一般の写真と異なる点は、カレンダーは引き延ばした画像を至近距離から見られる点です。B4サイズは、印画紙で言うとワイド四切に近く、写真展などでも使える比較的大きめの印刷ですが、写真展などでは少し離れて鑑賞するものです。しかし、カレンダーは違います。近くの壁などにかけて、予定を書き込んだりします。トイレなどの狭い空間で使われることも多いようです。そのため、カレンダーの写真は20-30㎝の至近距離で細部まで見られる宿命です。
至近距離で見られても破綻しないよう、ブレやボケはもちろん皆無で、ピント面では羽毛の1本1本が解像している必要があります。目が写っている写真では目にピントが合っていることが必須ですが、目の周りの羽毛は一本一本分解していないとがっかりさせてしまうことになります。
また、感度が上がることによる画質や解像感の劣化も避ける必要があります。昔で言うとサービス判、今で言うとスマホの画面サイズで見る分には粗が見えませんが、B4に伸ばして至近距離で見ると露呈する問題もたくさんあります。
かなりハードな条件ですが、この条件を満たすために必要なのは、単焦点レンズとAPS-C以上の撮像素子の組み合わせでした。野鳥撮影の仕事用として、レンズは最初から300mm F2.8、500mm F4、800mm F6.3と、ずっとこだわって単焦点レンズを使い続けています。ここ数年は800mmがメインレンズですが、近年、600mm F6.3 も短い最短撮影距離のために使うようになりました。解像感やボケなどの表現力はやはり単焦点レンズが優れています。
近年、新しい光学技術と電子技術が融合された素晴らしい撮影システムが続々と登場しています。位相フレネルレンズによる小型軽量の超望遠レンズや鳥検出AFシステムなどの恩恵により、野鳥撮影の成功率も年々よくなっています。
特に600mm、800mmといった超望遠レンズを手持ちで使えるようになったことが野鳥撮影においては革命的で、フィールドで持ち歩きながら撮影できることがチャンスの幅を広げてくれました。
B4の印刷には、長辺5000ピクセル程度は必要です。ボディはフルサイズとAPS-Cサイズを切り替えられるNikon社のZ9とZ8を使っています。どちらもAPS-Cサイズで使用しても5392×3592ピクセルなので、B4サイズの印刷に耐えられます。
APS-Cより小型センサーのカメラを使うと換算焦点距離は増えますし、画角が狭くなるので拡大率がアップしますが、画素ピッチが狭くなるため、回折現象の影響を強く受けるようになります。いわゆる回折ボケと言われているものですが、同じ画素数で同じ換算焦点距離、同じF値でもセンサーが小さくなるほど回折ボケが大きくなります。APS-Cサイズくらいまでであれば許容範囲なので、上記ピント面近傍の羽枝の解像レベルを満たすことが可能です。
私達が現在メインに使用している撮影システムです。
- カメラ:Nikon Z9、Z8
- レンズ:NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S、NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S
レンズは最短撮影距離が異なるため、公園によって使い分けています。
撮影法
今回の写真もすべてフィールドを徒歩で歩いて手持ち撮影した写真です。野鳥撮影は手持ちにこだわっていて、フィールドで三脚を使ったことは一度もありません。ターゲットにもよりますが、野鳥は突然現れ、枝被りを回避するためにカメラ位置を上下左右前後に移動したり、しゃがんだり這いつくばったりして撮ります。三脚に乗せてしまったらこのような動きができなくなり、撮影できないでしょう。今回使用した写真もすべて手持ち撮影にこだわっているからこそ撮れた写真です。
フォーカスはミラーレスになってから著しく進化したNikonの被写体認識AFに任せています。2024年5月現在では、Z8(Ver. 2.01)もZ9(Ver. 5.00)も被写体検出に「鳥」が追加されています。ほとんどの鳥はレンズを向けるだけで被写体として認識され、目を検出してフォーカスポイントを目に絞り込んでくれます。まれに認識されない、もしくは認識されにくい鳥種もありますが、マニュアルフォーカスでアシストすれば概ね問題ありません。
露出はマニュアル設定で、ISO感度のみをオートにしています。レンズのファンクションリングに割り振った露出補正機能で白飛びを回避するよう露出補正をして撮影します。
単焦点レンズなので、絞りはほぼ解放のまま使っています。ファインダー内に表示されるISOを見ながらシャッター速度を調整します。Z8もZ9も高感度耐性があまり良くないため、ISOが2000を超えないようにシャッター速度を限界まで下げて撮影します。できればISO 1000以下に保ちたいところですがブレとの戦いを強いられることになります。薄暗い環境では、1/100秒以下になってしまうこともありますが、昨今のカメラとレンズの優秀なVR機構が補佐してくれます。
暗くなってシャッター速度が手持ち限界に達してしまったら撮影終了です。
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B4サイズは配送が急に大変になり、コストもかかってしまうので、独自の配達システムを持っていて送料無料のアマゾンなどの有名通販サイトでの購入をおすすめします。
写真解説
表紙:ルリビタキ

Artist : Akira Yamanouchi
Exposure Time : 1/20
F Number : 6.3
ISO : 1400
Exposure Compensation : 0
Metering Mode : Center-weighted average
Exposure Mode : Manual
White Balance : Auto
Focal Length In 35mm Format : 1200 mm
Lens : NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S
毎年表紙候補として何枚かの写真を編集部にお送りして、緑書房さんの社内投票によって決定してもらっています。表紙はカレンダーの命運を分ける大切な写真なので、本作りに精通された方々の評価が重要です。どうも写真家が選ぶと、一般ウケはしないマニアックな写真になってしまう傾向があります。
野鳥のカレンダーを購入してくださる方々は、おそらく野鳥好きではありますが、ご自身ではあまり写真を撮られない方々ではないかと勝手に予想しています。また、過去のレビューなどを読ませていただくと、かわいい系、モフモフ系が好きな方々が多いように思っています。
そんな思いから、動物系に強い出版社の動物好き社員の方々の人気投票は理にかなった選択方式なのでしょう。結果、2025年版はこの写真が一番人気で選ばれました。ありがとうございます。
過去の表紙採用実績が物語るように、やはりルリビタキのオスは特別な鳥です。青さ加減が他の青い鳥とは異なり、濃い青です。緑色っぽく見えたり、シアンに見えたりすることはなく、波長が短い本物の青なのです。色素ではなく、微細構造によって青だけを反射している構造色によるものですが、どのくらいの歳月をかけてこの色を身にまとうようになったのかを考えると気が遠くなります。
面白いことに、ルリビタキは直射日光が当たっているときよりも、日陰の方が色がよく出ます。腹部の白も飛びにくいので、より発色が良くなります。寒い日だったので、体を膨らませて丸々していますし、まん丸の目にキャッチライトもうまいこと入りました。
背景が地味すぎますが、冬鳥の背景はいつもこのようなものになってしまいます。冬の寒い感じが出ますし、地味な背景の方が鳥が引き立って良い、とポジティブに考えることにします。
この写真は2月3日の16時59分に撮ったものです。関東地方でこの日時はかなり暗い状況です。EXIFデータから計算すると、EV 5〜6でしょうか。
しかし、そんなときが一番野鳥に遭遇できるのです。
この写真は、そろそろ撮影限界なので片付けようかと思っていた矢先、ふと目の前の枝に舞い降りてくれました。枝被りしない位置までそっと移動してシャッター速度を自分の手持ち限界付近の1/20秒まで落とし、絞り開放でとにかく連射しました。自分の技術ではこのくらいが限界です。しかし、さすがに1/20だと歩留まりが悪くなります。10枚に1枚ブレていない写真があれば大成功です。カレンダーに使うとなると、画質が優先なので感度はあまり上げられません。可能であればISO 2000以内に抑えたいものです。いつもブレと感度上昇による画質悪化とのせめぎあいで戦っています。「動かないでくれー」と願いながら撮影したこだわりの1枚です。何とかブレず、感度もISO 1400に抑えた写真が撮れました。
「野鳥あるある」のジンクスで、「野鳥に全然出会えなくてカメラを片付けると野鳥が出てくる」というものがあります。皆様も経験があるのではないでしょうか。私達もずいぶんと悔しい思いをしたので、近頃は完璧に撮影限界になるまで片付けないようにしています。それが功を奏した一枚です。

1月 ジョウビタキ

Artist : Takako Yamanouchi
Exposure Time : 1/60
F Number : 6.3
Exposure Program : Aperture-priority AE
ISO : 250
Exposure Compensation : 0
Metering Mode : Center-weighted average
White Balance : Auto
Focal Length In 35mm Format : 900 mm
Lens Model : NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S
ジョウビタキのメスは個人的には一番好きな野鳥で、撮影シーズンは毎日のように会いに行きます。最初は警戒されますが、毎日顔をみせていると、向こうもこちらの顔を覚えてくれるようで、徐々に警戒心も解け、だんだん距離が近くなってきます。
いつもの公園に行って探すと、遠くから飛んできて目の前の枝にとまったりします。もちろん、餌を与えたりしたことはありません。彼女にとっては何もメリットがないはずなのですが、こちらが想う気持ちが通じているのでしょうか。
この日は突如目の前に舞い降り、日向ぼっこをはじめました。800mmのレンズだと近すぎてピントが合わなくなってしまったので、5m以下の距離です。後ろは畑でこれ以上さがれません。遠くでアオジを撮影していた家内を手を振って呼んで、彼女が使用している最短撮影距離が4mの600mmで撮影してもらいました。それがこの1枚です。
何でしょう。この形状は。鳥とは思えません。スターウォーズに出てくるR2D2のようです。

寒い日でしたが、ちょうど直射日光があたって、暖かくて気持ちが良かったのでしょう。脇からフワフワの羽毛を出して目の前でしばらく日光浴をしていました。
しばらくするとなんと目をつぶってうとうとと昼寝をはじめてしまいました。そこまで信頼してくれるのはありがたいことですが、あまりに無防備で見ている方は責任重大です。こちらも動けなくなってしまいました。結局彼女が起きるまで目を離せず、至近距離で見守りましたが、私にとっては至福のひとときでした。
気のせいだと思いますが、心が通じ合っているのではないかと思わせてくれる行動です。

2月 アオジ

Artist : Takako Yamanouchi
Exposure Time : 1/200
F Number : 6.3
Exposure Program : Aperture-priority AE
ISO : 2000
Exposure Compensation : 0
Metering Mode : Center-weighted average
White Balance : Auto
Focal Length In 35mm Format : 900 mm
Lens Model : NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S
野鳥に興味を持つまで、こんなにカワイイ野鳥がいることを知りませんでした。おそらく多くの人が存在に気付いていない野鳥です。
以前、誰かがしきりに何を撮っているのかレンズの方向を確認して、「なんだスズメか」と捨て台詞を吐いて去って行ったというエピソードを書きました。その後も何度もスズメと間違えられている光景に遭遇しています。残念な方々ですが、野鳥に興味がない人にはスズメとアオジの区別はつかないでしょう。最近はアオジを知らない人は人生を損していると思うほどになりました。
確かにスズメサイズですが、無垢であどけない顔がすこぶる可愛く、見ていると平和な気持ちになります。藪の中に群れでいることが多いのですが、人がいなくなると広場に出てきて採食をはじめます。時折「チッ」と短く鳴いてお互いの存在や位置を確認しているようです。この地鳴きを頼りに探すと出会えます。
3月 メジロ

Artist : Takako Yamanouchi
Exposure Time : 1/200
F Number : 6.3
Exposure Program : Aperture-priority AE
ISO : 360
Exposure Compensation : +8/3
Metering Mode : Center-weighted average
White Balance : Auto
Focal Length In 35mm Format : 900 mm
Lens Model : NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S
メジロは花の蜜が好きなので、梅や桜が開花すると群れが集まってきます。
ウグイスと誤解されることが多いのですが、梅や桜で密をすっているのは大抵メジロです。
メジロを指さして「あれがウグイスだよ」と子供に説明しているお父さんやお母さんとよく遭遇します。そうやって誤った情報が未だに伝達されてしまっています。
訂正したいのですが、自分の子供に自信をもって説明している見ず知らずの親の間違いを子供の前で指摘するのもはばかられるので、いつも言いあぐねています。聞かれたら答えますが、「こうやってまた間違った情報が広まってしまうんだなー」と心配しながらスルーしています。ジレンマです。
花札の紅梅に緑色の鳥がとまっている「梅に鶯」の図柄の影響を強く受けている可能性があります。しかし、今まで数十年野鳥撮影をしてきて、実際に開花時の梅や桜にウグイスがとまっている光景はほとんど見ることはなく、花の蜜をすいにきている小鳥はほぼ100%メジロです。ウグイスは肉食が強い雑食性で、花の蜜をすっている光景は見たことがありません。
花札は安土桃山時代に作られたと言われていますが、もしかすると、当時からメジロとウグイスは混同されていたのかもしれません。
この写真は河津桜に集まっていたメジロです。冬の間は花が少ないため、蜜がすえないのでしょう。比較的早く開花する河津桜を待ってましたとばかりに集団で蜜をすいにきます。一心不乱に花の中にくちばしを突っ込み、蜜をすう姿が見られます。口の周りは河津桜の黄色い花粉がいっぱい付いています。花が咲く向きに合わせて、体をよじったり、逆さまにぶら下がったりしながら蜜をすっています。その姿が可愛らしいため、この季節はメジロ人気が急上昇します。
4月 カワセミ

Artist : Akira Yamanouchi
Exposure Time : 1/400
F Number : 6.3
Exposure Program : Aperture-priority AE
ISO : 100
Exposure Compensation : -1/3
Metering Mode : Other
White Balance : Auto
Focal Length In 35mm Format : 1200 mm
Lens Model : NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S
ペンギンのような変な姿勢のオスですが、それには事情があります。画面右の方に実はメスがいるのです。これはオスの渾身の自己アピールの図なのです。「どうよ俺、カッコいいだろ」とでも言っているようです。ポケットに手を突っ込んでいきがっているヤンキーのようにも見えます。

恋の季節になると、少し距離を置いて、右写真のように相手に見えるように目一杯体を伸ばしたり縮めたりしてうったえかけます。オスだけではなく、メスの方もそれに応えるように伸びたり縮んだりします。お互いにお辞儀をしているようにも、ダンスを見せ合っているようにも見えます。この季節特有の彼らのコミュニケーション手法なのでしょう。
いつも精悍で格好いいイメージのカワセミですが、恋するカワセミのコミカルな姿が対照的です。今風に言うと「ギャップ萌え」と言うのでしょうか。
恋が実るようにいつも応援しています。
5月 エナガ

Artist : Akira Yamanouchi
Exposure Time : 1/100
F Number : 6.3
Exposure Program : Manual
ISO : 1800
Exposure Compensation : +2/3
Metering Mode : Other
White Balance : Auto
Focal Length In 35mm Format : 1200 mm
Lens Model : NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S
これぞ正にJKが言う「おにかわ」ではないでしょうか。巣立ちして間もないエナガの幼鳥です。この季節、巣立ちした幼鳥が一斉に登場します。エナガは群れで行動するので、その群れの中に少し色が薄く、目の周りが赤く、ひときわ可愛い幼鳥が混ざっています。親についてまわっていますが、好奇心が強く、まだ恐れを知らないのか、時折目の前にとまってこちらを観察しているような素振りを見せます。
「なんだこのデッカイ生き物は」、「こっちにむけてるあの黒い筒はなんだろう」などと思っているのかもしれません。野鳥の片目が見えているときは、こちらを見ているのだと思います。
そのうち「危ないから戻ってきなさい」と親に呼ばれて回収されます。「変な動物には近づいちゃダメ!」という教育期間中なのでしょう。
エナガはほぼ白黒なので、露出補正が難しい鳥種です。白飛びしないよう、細心の注意で補正します。曇りや日陰は補正可能ですが、直射日光が当たると白飛びはほぼ避けられません。
また、落ち着きがなく、常に動き回っているので暗い環境でもあまりシャッター速度を落とせません。被写体ブレを防ぐために、エナガの撮影は1/100秒より速いシャッター速度が必要と思っています。暗かったのですが、何とか印刷に使えるISO 2000以下に抑えることができました。
6月 キビタキ

Artist : Akira Yamanouchi
Exposure Time : 1/125
F Number : 6.3
Exposure Program : Manual
ISO : 800
Exposure Compensation : +2/3
Metering Mode : Other
White Balance : Auto
Focal Length In 35mm Format : 1200 mm
Lens Model : NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S
初夏は渡ってきた夏鳥たちの恋の季節です。一生懸命に美しい歌声を披露してメスにアピールします。キビタキのさえずりは特徴的な音色で森の中をこだまします。その声を頼りに音源のあたりを探すと見つかるでしょう。しかし、季節的に木々の葉が生い茂っているので、なかなかクリアには見せてくれません。鳴きはじめるとしばらく同じ場所で鳴く習性があるので、枝や葉を避けて抜けるピンポイントの位置を探って撮影します。そんなときは手持ち撮影ができる望遠レンズが重宝します。
まるで工事現場のような目立つ黒と黄色と白の柄なのですが、意外にも保護色になっているようで、鳴いていないとなかなか発見できません。昔パースを描く授業で、植栽の絵は黄色と黒を混ぜて作ると教わったことを思い出しました。なるほど、緑の中での黄色と黒の配色は保護色になるのでしょう。
ペアができてしまうと鳴かなくなってしまうので、本格的な夏になる前が勝負です。
比較的薄暗い森を好むので、撮影は困難です。さらに白と黒が使われているため、白飛び、黒つぶれとの闘いになります。肩の白い模様が飛ばず、黒い羽毛の中の目が描写されるように細かく露出補正を行います。
7月 ウグイス

Artist : Akira Yamanouchi
Exposure Time : 1/100
F Number : 6.3
Exposure Program : Manual
ISO : 1000
Exposure Compensation : -2/3
Metering Mode : Center-weighted average
White Balance : Auto
Focal Length In 35mm Format : 1200 mm
Lens Model : NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S
「声はすれども姿は見えず」の代表選手のウグイスです。いつもブッシュの中を動き周り、撮影は枝被りとの闘いです。ブッシュの中で全身がクリアに見えることはほとんどありません。
しかし、時折目の前の草地に降り立つことがあります。この写真は偶然にも近すぎるくらい目の前に降りて来た時のものです。障害物もなく、全身が入らないほどアップで撮れてしまいました。
雌雄や年齢で多少の違いがあるのかもしれませんが、実際のウグイスの色は緑色ではありません。「 灰色がかった緑褐色 」と表現されることもあるようですが、フィールドで見るウグイスはほぼ茶色に見え、あまり緑色の要素があるようには見えません。「灰色がかった茶褐色」と言った方が近いのではないでしょうか。藪の中だと周りの緑色の葉の影響で緑がかって見えるのかもしれませんが、「むき出し」の状態ではこのように見えます。この写真を見て「緑色の鳥」と言う人はいないと思います。色鉛筆にある明らかな緑色の「ウグイス色」はメジロと混同して作られた色なのでしょう。
この写真はウグイス色の間違った情報を正すのに少しは役立つでしょうか。子供たちにも教えてあげてください。この色を言葉でどう表現するかは別として、これが本物のウグイスの色です。
なかなか姿はみられませんが、実はつぶらな瞳でかわいい顔をしています。とにかくじっとしてくれない鳥なので、出会えたら連写するしかありません。
ひとときもとまってくれないので、どんなに優れた手振れ補正付きのシステムでも被写体ブレはキャンセルできません。暗くてもシャッター速度は1/100秒くらいが限界です。
8月 カイツブリ

Artist : Akira Yamanouchi
Exposure Time : 1/1250
F Number : 7.1
Exposure Program : Manual
ISO : 250
Exposure Compensation : -4/3
Focal Length : 700.0 mm
White Balance : Auto
Focal Length In 35mm Format : 1050 mm
Lens Model : 500 mm f/4.0
カイツブリの幼鳥は、「幼鳥の可愛さランキング」なるものがあったとしたら、おそらく一位二位を争う可愛さだと思います。親鳥だけでなく、人間が見ても何とかしてあげたくなるこの幼鳥のデザインはどうやって生まれたのでしょう。進化論から推測すると、突然変異を繰り返し、環境に適応した個体のみが生き残って来たとしたら、やはり「かわいい」は正義なのです。万人が可愛いと思うこの形を見て、太古の昔から人もこの生き物を守って来たのでしょう。
池のほとりで撮影しているジジババはもうメロメロです。大きく写っていますが、実際は数センチの大きさです。孵化直後の幼鳥は人の親指程度でしょうか。そこそこの望遠レンズを使わないとなかなかこの可愛さを写し撮れません。
水鳥の撮影は簡単そうに見えますが、きちんと撮ろうと思うと意外に難しいものです。池の大きさや風速などによりますが、水面は波立っています。このくらいのサイズの幼鳥は波の影響をそのまま受けるので、超望遠レンズで狙うとかなり激しく上下に揺れていることがわかります。昨今の優秀な超望遠レンズは強力な手振れ補正機構が内蔵されているので、手振れは防げますが、被写体ブレは今のところ補正できません。波による上下動は被写体ブレなので、もろにその影響を被ります。特に小さい幼鳥は細かいさざ波でも影響を受けます。
思いのほか被写体ブレが大きいので、画像を確認しながら速めのシャッター速度で撮影するように心がけます。
9月 ヤマガラ

Artist : Takako Yamanouchi
Exposure Time : 1/60
F Number : 6.3
Exposure Program : Aperture-priority AE
ISO : 220
Exposure Compensation : +1/3
Metering Mode : Center-weighted average
White Balance : Auto
Focal Length In 35mm Format : 900 mm
Lens Model : NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S
いつも幸せそうでナイスキャラのヤマガラです。頭部の模様からか、面白い顔に見えますし、口元はいつも笑っているように見えてしまいます。一匹で行動していることが多いので、われ関せずでひょうひょうとしているように見えてしまいます。出会うといつもこちらが元気をもらえている気がします。
ヤマガラも黒、白、オレンジ色の配色なので、露出補正が比較的難しい鳥種です。ただし、白の部分がシジュウカラの頬のような白さではなく、オフホワイトなので幾分楽です。
10月 キセキレイ

Artist : Akira Yamanouchi
Exposure Time : 1/200
F Number : 6.3
Exposure Program : Manual
ISO : 1250
Exposure Compensation : +1/3
White Balance : Auto
Focal Length In 35mm Format : 1200 mm
Lens Model : NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S
キセキレイのメスです。「貴婦人のよう」とよく表現されれいますが、確かに気品がある美しい姿です。
背景がきれいだったので、とっさに地面にはいつくばって秋色の反射が強くなる位置を探りました。それに応えてくれるように、ちょうど良いポーズをしてくれました。水面の反射は角度が浅くなるほど強くなり、遠方の色を映し出します。初秋らしい配色になってくれました。背景の黄色とかぶらないよう、緑色になるように最適な位置を探して写しました。手持ち撮影だから撮れたカットです。
キセキレイは常に尾を上下に動かし、せわしなく動いているので、あまりシャッター速度を遅くできません。これは1/200秒での撮影ですが、このくらいが限界です。ISOが1000を超えてしまいましたが、これ以上遅くするとどこかがブレてしまいます。
11月 ジョウビタキ

Artist : Takako Yamanouchi
Exposure Time : 1/60
F Number : 6.3
Exposure Program : Aperture-priority AE
ISO : 720
Exposure Compensation : +2/3
Metering Mode : Other
White Balance : Auto
Focal Length In 35mm Format : 1200 mm
Lens Model : NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S
寒くなって来ると、また冬鳥の季節がやってきます。ジョウビタキ、ルリビタキは冬を代表するヒタキ科の渡り鳥です。どちらもオスは美しく、メスは可愛いという共通点があります。
1月のメスとは対照的にオスは派手な配色です。しかし、まん丸の黒い大きな目やつまようじのような細いくちばし、翼の白い班、針金のように細い脚などは雌雄共通です。とにかくヒタキの類は顔がカワイイのです。
残念ながら非繁殖期のヒタキたちは別種でも、同種の雌雄でも仲が悪く、縄張り争いをしてしまいます。冬の間は完全に単独行動です。「ヒッヒッヒッ」とか「カッカッカッ」などといった声を出して縄張りを主張します。男の子も女の子も、こんなにカワイイ顔をしながら、結構気が強いのです。
12月 ルリビタキ

Artist : Takako Yamanouchi
Exposure Time : 1/200
F Number : 6.3
Exposure Program : Aperture-priority AE
ISO : 1400
Exposure Compensation : -2/3
Metering Mode : Center-weighted average
White Balance : Auto
Focal Length In 35mm Format : 900 mm
Lens Model : NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S
表紙はオスですが、こちらは同じルリビタキの「メスタイプ」です。メスタイプという呼び方は、メスなのか、オスの幼鳥なのかわからないからです。生まれた年の冬にはもう冬鳥として渡ってきますが、オス同士の無駄な争いを避けるため、最初の冬はメスと大変似た配色で過ごします。翌年の冬には青い羽毛となり、立派なオスの姿になって渡ってきます。メスタイプは尾や脇の羽毛にその片鱗が見られますが、オスの成鳥とはかなり配色が異なります。
この個体は風切り羽や雨覆いなどが少し青みがかっているので、オスの幼鳥の可能性もあります。
メスタイプの方が柄に惑わされることなくパーツが良く見えます。頭部に対して目が非常に大きいのがわかります。大好きな「ねじくりポーズ」をしてくれました。
ヒタキ類のメス(メスタイプも)はとにかくカワイイのです。
2026年1月 ミソサザイ

Artist : Akira Yamanouchi
Exposure Time : 1/80
F Number : 6.3
Exposure Program : Manual
ISO : 1100
Exposure Compensation : +1
Metering Mode : Other
White Balance : Auto
Focal Length In 35mm Format : 1200 mm
Lens Model : NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S
日本の野鳥の小ささでキクイタダキと一二を争うミソサザイです。全長10㎝前後、体重10g前後しかありません。我が家の文鳥が30gくらいですから、その1/3程度しかありません。
そんな小さな鳥ですが、昔から様々な国の神話にもたびたび登場します。面白いことに、鳥界の王と呼ばれたり、小さいのに気が強いとか、勇敢に戦ったという武勇伝のような共通点があります。
実際、ミソサザイはどこにそんなにエネルギーを蓄えているのだろうと思うほど活動的ですし、びっくりするほど大きな声を発します。冬の地鳴きはウグイスの地鳴きに似ているといわれていますが、ウグイスよりも遥かに大きな声をだすのでミソサザイの存在がわかります。
日本のミソサザイは留鳥ですが、都市部の公園などでは冬の間しか見られない冬鳥です。夏は高緯度地域や亜高山帯から高山帯で繁殖しているようです。
都内の公園で、尾を90度に立てたミソサザイ特有のキメポーズをとってくれました。可愛さ爆発です。
販売
2024年6月現在、校正を終えて本紙校正中です。
2024年9月発売予定です。全国の書店などでも販売されます。アマゾンでも発売開始されましたら、このページでアナウンスさせていただきます。もうしばらくお待ちいただけますよう、お願い申し上げます。
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