ねじくり

ルリビタキ

長年野鳥撮影をしていると、野鳥の独特な仕草やポーズが気になってきます。初めの頃は飛翔シーンに魅せられて飛んでいるところばかりを狙っていましたが、飛ぶのを待っているときに彼らが時々見せるポーズが大変可愛らしく、いつしかそちらを狙うようになってしまいました。それが「ねじくり」です。

「ねじくり」とは

ここで言う「ねじくり」とは、野鳥が背中を見せながら目だけこちらに向けているポーズです。首をねじってこちらを向くので、勝手ながら「ねじくり」と命名させていただきました。見返り美人図のような感じですが、人間は鳥ほど首が回らないので、ちょっと違います。鳥は真後ろまで向けます。
狙うとなかなかしてくれないものですが、とまっている野鳥のポーズとしては抜群に可愛らしいポーズだと思っています。
バーダーの中では専用の呼び方があるのかもしれませんが、某K博士に聞いてみましたが「ない」との返答でしたので、とりあえず「ねじくり」ポーズと呼ぶことにしました。Googleで「野鳥 ねじくり」で検索しても1件もヒットしないので、誰もあのポーズのことを「ねじくり」とは呼んでいないようです。

「ねじくり」の定義

勝手な命名なので、どこにもそんな定義はありませんが、自分の中では概ね次のように考えています。

  • 背中の模様が見えている(必須)
  • 少なくとも横顔が見えていて、片目はこちらを見ている(必須)
  • ピントは目に合っている (必須)
  • できれば脇も見えている
  • キャッチライトが入っているとベター
  • 全身が切れることなく入っている
  • 枝などがどこにもかぶってない

といったところでしょうか。なかなか全部をクリアするのは難しいので、概ね背中が見えて、首をねじくって目がこちらを向いていれば「ねじくり」と認定しています。

「ねじくり」の価値

見つけて楽しむ身近な野鳥の観察ガイド」の写真を編集しているときに感じたのですが、野鳥は見る角度によって色も模様も異なり、一つの鳥種の姿を説明するために、さまざまな方向から撮った写真が必要になります。体も顔もその種特有な模様であることが多く、それらが識別するポイントになります。図鑑としてはその特徴が写った写真を用意しないとなりません。
正確に記録しようとしたら、正面、側面、背側面のように、建築の3面図のような写真が必要です。しかし、生きている野鳥でそれを記録するのは不可能ですし、味気ないものになってしまいます。
そんな中で、斜め後ろからの撮影で、顔だけこちらに向けているポーズの情報量が極めて多いことに気づきました。多くの野鳥は背面の模様に特徴があり、腰、尾、脇、尾筒の特徴も記録されます。さらに横顔も見えていれば、嘴の形状や色、虹彩の色、過眼線の有無、頬の模様や眉斑の有無なども同時に記録できます。胸や腹の特徴が見えなくても、多くの鳥は「ねじくり」ポーズの写真一枚に写っている特徴で識別できます。学術的にも大変価値がある一枚になるのです。

可愛い

色々とうんちくを並べましたが、実はそんなことよりも、「ねじくり」ポーズは何といっても可愛いという理由だけで狙う意味があるのです。美しい背中の模様を見せながら、クリクリしたつぶらな瞳をこちらに向けた瞬間がシャッターチャンスです。
どんな状況でも、ピントは必ず目に合わせます。目に合っていないと台無しです。運よくピントも露出もばっちり撮れると、最高に可愛い一枚になるでしょう。皆さまもぜひ「ねじくり」を狙ってみてください。

作例

ジョウビタキ
メジロ
カイツブリ
カワセミ
ウグイス
コチドリ
ヤマガラ
ヤマガラ
モズ
エナガ
アオジ
ルリビタキ
ハクセキレイ
コゲラ
セッカ
シロハラ
シジュウカラ

ねじくり卓上カレンダー

ご要望をいただき、2021年版卓上カレンダー「ねじくり」を製作いたしました。よろしければYILストアからご購入いただけると助かります。コンパクトなハガキサイズでスタンド付きです。

著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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野鳥野鳥撮影
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