野鳥撮影にはまったきっかけ

長年、医療カメラマンと称して動物の症例や手術シーン、解剖写真などといった特殊な撮影を仕事としてきました。

10年以上前のことですが、仕事である獣医大学の医療現場の撮影をした後、今でも師匠としてあがめている某K博士と出会いました。私の医療写真を見られて、「こんな撮影技術があるなら野鳥写真をはじめませんか」と何気なく誘われました。それまで野鳥なんて全く興味がなく、スズメとハトとカラスくらいしか知りませんでした。
某K博士は野生動物系の研究室で、動物の行動などを研究されています。最初は大して興味はなかったものの、某K博士の話を聞くうちに、徐々に野鳥に興味を持ちはじめ、自分でも撮ってみようと思いはじめました。最初は仕事用で使っていた105㎜マクロでいたずらに撮っていましたが、より良く撮りたいと思うようになり、望遠レンズを買ってしまうことになります。
医療現場の撮影は自信を持っていましたが、いざ野鳥撮影をはじめると、これがなかなか難しく、野鳥たちはうまく撮らせてくれません。うまく撮れなかったからこそ、そこから野鳥撮影にのめり込むこととなります。

最初に某K博士に言われたのは、「普通に枝にとまった鳥の写真は撮るな」ということです。図鑑的な綺麗な鳥の写真ならフィルムの時代から先達が膨大な数を撮られているので、それと同じものを撮っても意味がない、ということのようです。
それで、しばらく野鳥の観察と撮影をしていて、飛翔シーンが美しいことに気づき、飛んでいるシーンを自分のテーマとしました。
飛翔写真は比較的少ないので、某K博士は賛同してくれましたが、実際撮るのは大変難しく、いばらの道であることが後から分りました。でも決めた以上、これからも飛翔写真にこだわって撮って行こうと思っています。

撮影した野鳥写真は、すべて師匠の某K博士にお見せして評価を仰いでいたのですが、最初の頃はいつも「つまらん」とか「もっといい写真がいくらでもある」などといった超辛口の評価しかいただけません。私の性格からして、それでより一層のめり込むことになって行きます。すべてをお見通しの某K博士に上手に刺激されたという形です。

「某K博士をうならせる写真をとること」- それがいつしか自分の目標となって行きました。そのために、この10年以上、様々な方法を試したり、装置の開発をしてきました。カメラやレンズの進化もあり、ようやく某K博士にも納得していただける飛翔写真が撮れるようになりました。

お蔭で某K博士とは共著でいくつかを出させていただきましたし、今後もいくつか出す計画があります。今では次の本に使うために、こういう写真を撮りためておくように、という指令が届きます。
もしかすると、あの当時、私が鳥にはまり、こういう状況になることを予測されて私を野鳥の世界に誘われたのではないかと思うことがあります。
以来、私は見事に野鳥にはまって野鳥写真を撮り続けていますが、最近になって私に付き合わされているうちに家内が野鳥撮影にはまってしまいました。その入れ込みようは尋常ではなく、今まで家にいるのが好きだった人間が、一眼レフに500㎜のレンズをぶら下げて、私よりも積極的にフィールドに出るようになりました。
老後の運動不足解消とボケ防止にうってつけです。
まさか当時から、某K博士はわれわれの健康まで考慮して、かつ、われわれの性格を読んで野鳥撮影をすすめたのでしょうか。考え過ぎでしょうか。
いずれにしても人生の大きな楽しみを与えていただいた某K博士にはこの上なく感謝しています。

私たちも、次の世代の方々に野鳥撮影の世界とその面白さを伝えたく、このページを作っています。どなたかの参考になれば幸いです。

著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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