ミラーレスの恩恵

本職は医療カメラマンと称してもっぱら手術シーンの撮影をしていますが、最近は動画も撮ってくれという要望が増えてきました。少し前までは手術の動画撮影は動画専用のビデオカメラを使い、静止画は一眼レフを使っていました。しかし、セミナーに使うとか、授業に使うからと、動画と静止画両方撮ってくれという要望が圧倒的に多くなりました。無茶言うなよと思っていましたが、おりしもミラーレス一眼が主流となり、動画性能が向上したので、長時間の動画撮影+静止画撮影を一台のカメラでできるようになり、あながち無茶とは言えなくなりました。今後はどんどんそういった要望が増えてくることでしょう。もう一眼レフとビデオカメラの時代は終わったようです。

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Z50再評価

医療現場の静止画撮影では一眼レフであるD500に絶対的信頼をおいていました。DXフォーマットの方が術創から離れて撮影できますし、D5と同じAFユニットはほぼ完ぺきで、失敗が許されない撮影では素晴らしい仕事をしてくれます。
しかし、動画となると急に弱くなります。お世辞にも動画性能が良いとは言えません。と言うか、かなりプアな部類でしょう。今までは静止画と動画を両方撮ってくれという要望に対して、D500とビデオカメラHVR-Z5Jを両方ぶら下げて撮影に挑んでいましたが、今回、家内のメインカメラであるZ50を借りて仕事に挑んで来ました。

結果最高でした。

以前、Nikonは動画に弱いイメージがありましたが、最近はライバルと肩を並べたか、一歩進んでいるのかもしれません。Z50でも動画機能はしっかり盛り込んであります。8時間ほどの撮影時間で4K30pの動画を相当撮りましたが、熱暴走することもなく、期待に応えてくれました。

4K

動画も4Kの時代になり、そもそも動画からの切り出しでも3840×2160の静止画が作れます。ただ、動画処理ソフトなどを使って書き出す必要があるので、いささか面倒です。メーカーや機種によって異なりますが、多くのミラーレス一眼は、動画撮影中に静止画を撮ることができます。ただし、機種によっては一瞬動画が止まったり、静止画が撮れる枚数に制限があったりしますのでご注意ください。シャッターを押すと動画撮影が停止する機種もあるようです。

Nikonは10年以上前に登場したNikon1にも動画撮影中に静止画撮影できる機能は搭載していました。眼科撮影などでこの機能は使っていましたが、高感度耐性がなく、最大でフルHDであまり画質がよくなかったので使わなくなってしまいました。
Nikon1の開発は終わってしまいましたが、ここで培われた技術はNikonのZシリーズにも活かされています。動画撮影中にシャッターを押せば普通に静止画が撮影できます。動画に影響を与えることなく、その場の写真も撮れるのは画期的なことです。
もちろん、通常の静止画モードで撮る 5568×3712 よりも小さい4Kサイズの 3840×2160 ですが、セミナーや授業でパワーポイントに貼る静止画としては十分すぎる解像度です。今回はこの機能を使って仕事をしてきました。

サンプル

様々なエキゾチックアニマルの保定や診察、検査、強制給餌などのシーンの動画と静止画撮影を依頼されました。どちらも大学の授業や卒後教育用としてパワーポイントに貼って使う目的なので、最終的にはフルHD画質あれば十分です。静止画の解像度とトリミング耐性を考慮して、すべて4K30pで撮影し、動画の納品はフルHDにダウンサンプルしました。動画録画中に撮影した静止画は4Kと同じ解像度なので、パワーポイントに貼るにはオーバースペックなくらいです。静止画はそのまま納品しました。

今回は狭い診察室内での撮影で、三脚は使えないとのことだったのですべて手持ち撮影でしたが、VRはよく効きました。
値段の割に驚くほどよく写ると言われているキットレンズのNIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR とAF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDにFTZを付けて使用しましたが、どちらも十分なパフォーマンスを発揮してくれました。

絞り優先、もしくはマニュアル露出で、ISOオートに設定して撮影しています。こういうシチュエーションでは一番安全で確実です。F5.6付近を使いました。簡易露出補正機能をオンにしておくと、ダイアル回すだけで簡単に白飛びを抑えられるので大変便利です。
なお、ホワイトバランスはマクベスのグレーカードで設定しました。光源に合わせて最初に設定しておけば、動画も静止画も同じ色味で撮影できます。
手術室の無影灯下でも、グレーカードで撮影前にプリセットマニュアルでホワイトバランス調整を厳密にしておくと、動画も静止画も見た目通りに撮影できます。しかも、6種類を登録できるので、光源毎に設定しておくと素早く切りかえることができます。

上の動画を撮りながら撮影した静止画:3840×2160を1920×1080に縮小。
動画撮影中に撮った静止画の拡大:元画像が3840×2160あるので、パワーポイントで使う程度であれば半分の大きさにトリミングしても十分なサイズです。

総評

一人で行う撮影で、動画と静止画両方必要な場合はミラーレス一眼一択です。もう一眼レフとビデオカメラの組み合わせには戻れません。
静止画は一眼レフ、動画はビデオカメラに固執していましたが、ミラーレスの方が圧倒的に楽な上、カメラを持ち換えたりする必要もなく、シャッターチャンスを逃さないので仕事としても絶対的に有利です。
録画しながら重要なポイントポイントでシャッターも押すので仕事としては大変ですが、一人で両方撮る方法はこれしかありません。特に手術シーンなどの場合は一発勝負なので、動画撮ってから静止画を撮るなどということはできません。録画しながら静止画が撮れるミラーレスに軍配が上がります。

他メーカーの機種でも同様なことができると思いますが、検証はしていません。少なくともZ50はできたということを述べておきましょう。録画しながらシャッターボタンを押すだけで静止画もどんどん撮れてしまいます。最初は不思議な感覚ですが、馴れると非常に便利です。

難点

4K動画を撮影し続けると、バッテリーをかなり消費します。4つのバッテリーを使いまわしたのですが、まったく足りなく、撮影しながら使い終わったバッテリーを順次充電して、何とか乗り切りました。
みるみる減るので、動画目的でZ50を使用する時は気を付けてください。1日がかりの撮影では、予備のバッテリーと充電器が2つ欲しいと思いました。

また、録画中に静止画用シャッターを押すとき、気を付けないと画面を揺らしてしまうことになります。左手でしっかりホールドして、右手でシャッターを軽く押すようにすると良いでしょう。三脚を使用すればかなり回避できますが、狭い場所では使えません。一脚だけでもシャッターボタンのブレは回避できるでしょう。
ジンバルを使用するときはリモコンを使用すると動画への影響を回避できます。

絞り優先モード時のシャッター速度と感度がどうなるのかはカメラ任せになってしまうので、状況によっては不都合が発生することもあります。暗い状況では絞り開放にしてもシャッター速度1/30sになってしまうので、動きが速い動物の静止画は被写体ブレが発生します。多少感度が上がってもシャッター速度を速くしたい場合もあります。そのような場合は、マニュアル露出にして、感度をオートで撮影すると良いでしょう。

著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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