Nikon Z9:ファームウェア Ver. 3.00(ハイレゾズーム)

Nikon Z9のファームウェア3.00からハイレゾズームなる機能が追加されました。限られた画像サイズと解像度の動画撮影時に限定して使える機能ですが、どんなレンズを使っていても、画質を維持したまま連続無段階で2倍までズーミングをすることができます。単焦点レンズであろうと、LEICAのオールドレンズであろうと、はたまた顕微鏡や望遠鏡にアダプタを介して撮影している場合でも、2倍までの高画質のズーミングをすることができます。

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ハイレゾズーム

仕組みとしては単にデジタルズームなのでしょうが、2Kや4K撮影時はCCDの解像度に余裕があるので、デジタルズームを行っても画質が劣化しません。それを利用して、あたかも光学的なズームを行っているかのように画角を変化させることができます。要は見せ方の技なのでしょう。8K撮影ができる解像度を持っているので、逆に言うと2Kや4Kは画素を間引いて低解像度で撮影していることになります。したがって、8K動画の画素のうち、理論的には等倍で2Kや4Kの解像度になる解像度までは劣化せずにズーミングすることができるはずです。
もちろん、連続無段階でズーミングしているように見せるにはそれなりの補間技術が必要だと思いますが、画像処理エンジンの進化によってリアルタイムでできるようになったのでしょう。

静止画でデジタルズームと言うと画質劣化の代名詞のようにイメージが悪いものですが、2K、4K動画に対して、Z9のCCDは十分な余裕があるので、劣化のないズーミングが実現できているのでしょう。

テスト撮影

大好きなジョウビタキの静止画撮影が目的だったのですが、しばらく動かなかったので、ハイレゾズームテストのモデルになってもらいました。

まるで光学ズームのように、1倍から2倍まで、滑らかに連続してズーミングすることができました。
レンズはNIKKOR Z 800mm f/6.3 VR Sです。単焦点レンズですが、800-1600mmズームのように使うことができます。急遽ハイレゾズームのテストをしたので、ブレて見苦しい画像ですがご勘弁ください。1600mm相当なので、きちんと撮影する場合はそれなりの大型ビデオ三脚などの設備が必要です。

動画は、FX 3840×2160 30pで撮影したクリップを1920×1080 30pで出力したものです。犬とジェット機がうるさかったので、音声はオフにしてありますが、電子的に行っているので、ズーム操作は完全に無音です。

整数倍の離散的な動きではなく、内部的にうまく処理が行われているようで、実にスムーズにズーミングが行われているように見えます。
レンズは選ばないので、単焦点レンズでも光学ズームぽい動画が撮れる面白い機能です。ズームレンズでも、望遠端のさらに2倍までズーミングできます。しかもハイレゾの名の通り、画質が劣化しません。

もちろん8Kではできませんが、4Kや2Kでは大変有効に使える機能だと思います。
2K動画では原理的には4倍までズームできそうですが、2倍に抑えられています。中央部のクロップなので、レンズの素性がよければ行けそうですが、さすがに4倍だと厳しいのでしょうか。

総評

仕事は静止画がメインで、動画の仕事は単発的に入る程度なので、ハイレゾズームはあまり関係ないと思っていたのですが、使ってみると面白い機能です。高解像度CCDだからできる技なのでしょうが、今までイメージが悪かったデジタルズームも見せ方によってこれほど有効に使えるということが分かり、目から鱗でした。
画素を間引いたり合成したりして、2倍、3倍など、整数倍にするのは簡単にできることが想像できますが、このハイレゾズームは1倍~2倍の間を連続無段階にスムーズにズーミングしているように見えます。簡単そうに思えますが、中間倍率を実現するためには、相当高度な補間処理を高速に行う必要があります。4Kの60pには使えず、30pまでとなっていますので、3840×2160のフレームの補間処理に1/30秒弱かかるのでしょう。1920×1080では120pまで行けます。面積が1/4ですから、1フレーム1/120秒以下で補間処理ができるというのも、計算上合っていそうです。

他社のミラーレスは使っていないので他の機種でも同様なことができるのか、もしくは将来できるようになるのかわかりませんが、今までは動画に弱いと思っていたNikonがこういった機能を盛り込んで来たのが新鮮です。
個人的には、8K動画を撮ることはなく、仕事でもメインは2K動画で、まれに4Kを使う程度です。そのため、今回のVer. 3.00でのハイレゾズームの追加は大変面白い機能追加だと思いました。自分が使うかどうかは別として、次のようなレンズや場面で使うと今までにない効果を発揮できると思います。

明るい単焦点レンズやオールドレンズのズーム化

NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noctや NIKKOR Z 50mm f/1.2 S のような明るい単焦点レンズを50-100mmズームとして使えます。F値は変わらないので、とろけるようなボケはそのまま、全身からポートレートまでズーミングすることができます。最短撮影距離も変わらないので、アップやマクロっぽい使い方もできるでしょう。動画としては今までになかった映像が撮れると思います。
Zマウントレンズでも、アダプタを介した他メーカーレンズやオールドレンズなどでも、F値はそのままで、焦点距離2倍までのズームレンズとして動画撮影できることになります。

LEICA SUMMILUX-M 1:1.4/50

制約はありますが、Z9のハイレゾズームは動画撮影においてどんなレンズでも2倍ズームにしてしまうポテンシャルを持っています。
今回は義理の父の形見、LEICA SUMMILUX-M 1:1.4/50でテストしてみました。 開放F1.4の50mm単焦点の最短撮影なので被写界深度は極めて浅く、マニュアルフォーカスなのでカメラを前後に移動してピント合わせをしました。
ターゲットはわが家の文鳥です。一応フォーカスピーキング表示で目に合わせようとしましたが、動く鳥の目に合わせ続けるのはかなり困難です。しかし、ピントが合った場所は大変シャープで、それ以外の画面はとろけるようなボケ味です。2K、4K動画だけですが、Z9(Ver. 3.00)を使えば、LEICAの50mmF1.4の単焦点を、50-100mmF1.4という実在しないズームレンズ的ふるまいをさせることができます。
これは映像クリエイターの創造力を刺激し、可能性を大きく広げる機能だと思います。

超望遠レンズの拡張

単焦点レンズでも、動画撮影ではFXからDXを超える2倍までの画角を連続無段階で使うことができるようになります。

NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S

2倍の焦点距離相当まで光学ズームを行うような映像を撮ることができます。2K、4K限定ですが、F値も変わらず、画質劣化もなく、800mmの画角から1600mmの画角まで連続無段階で、あたかも光学ズームを行っているようなふるまいを見せることができます。
三脚を使っていないので、画面の揺れはご勘弁ください。

マクロレンズのさらなる拡大

多くの純正マクロレンズは単体で等倍まで撮影できますが、Z9の動画ではあたかもズームレンズのようにさらに2倍まで拡大撮影ができます。

Nikon AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF)

FマウントのNikon AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF)は単体で等倍まで撮影できますが、FTZを介してZ9で使うと、動画撮影ではまるでズームレンズ化したように連続無段階で2倍まで拡大できます。面白い機能です。 セミの頭部を拡大してみました。虫苦手な人は見ないようにしてください。

ズームレンズのさらなる拡張

ズームレンズでも、その焦点域を2倍に拡大できます。NIKKOR Z 24-120mm f/4 S は、光学ズームとハイレゾズームを組み合わせると、24-240mmとなります。しかもF4のままです。
NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sは70-400mm F2.8、NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sは、100-800mm F4.5-5.6の高倍率高性能シネマレンズに早変わりします。
4Kで使えるので、8Kまでは必要ない人には朗報だと思います。

その他にも、顕微鏡カメラ、望遠鏡カメラとして使った動画撮影も解像度を落とさずに2倍までズーミングすることができます。

NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

雨で野鳥撮影に行けなかったので、三脚を使ってベランダの花をターゲットにテストしました。NIKKOR Z 24-120mm f/4 S の5倍ズームとハイレゾズームの2倍ズームで、24mmから240mm相当の10倍ズームが実現できます。光学ズームと遜色なく、解像度を落とさずに4K動画撮影ができます。これは使えそうです。

注意事項

根本原理がクロップなので、元のレンズが優秀であることが前提です。解像度が落ちなくてもレンズの収差などが残っているとそれらも拡大されることになりますので、注意が必要です。解像度に余裕があるZマウントのSライン系のレンズでの使用をおすすめします。

おまけ

ファームウェアがVer. 3.01になり、被写体検出とハイレゾズームのテストをしました。問題ありません。ジョウビタキがペレット(おそらく種)を頻繁に吐き出すのでまとめてみました。何をしていても可愛さ爆発のジョビコです。


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野鳥撮影にも最強のパフォーマンスを発揮するミラーレスフラグシップです。被写体検出機能で野鳥も認識して目にフォーカスを合わせてくれます。本格的に野鳥撮影をする方にはおすすめです。
FTZ-IIを介して今までのFマウントの超望遠レンズも問題なく使えます。ZマウントのNIKKOR Z 800mm f/6.3 VR Sとの組み合わせは5.5段のVRが効き、800mm(DXで1200mm)ながら手持ち撮影が可能になります。


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全長278mm、重量1470gで、600mmの焦点距離からは想像できないほど小型軽量です。レンズ単体で5.5段、Z9やZ8との組み合わせではシンクロVR機構によって6段分のVRにより、手持ち撮影が可能です。
DXフォーマットで使用すると900mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで840mmF9、1200mmF13、DXで1260mmF9相当、1680mmF13相当となります。
最短撮影距離が4mなので、野鳥が近い公園などでは有利となります。

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位相フレネルレンズ採用の通称ハチロクサンと呼ばれる800mmF6.3の単焦点レンズです。
800mmの超望遠レンズとしては驚くほど小型軽量で、全長385mm、重量2385gしかありません。レンズ単体で5段分、Z9やZ8との組み合わせでは、シンクロVR機構によって5.5段のVRにより、手持ち撮影が可能です。
DXフォーマットで使用すると1200mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで1120mmF9、1600mmF13、DXで1680mmF9相当、2400mmF13相当となります。 最短撮影距離が5mあります。野鳥が遠い公園や小型の野鳥を大きく写したいときに有利となります。
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著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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