NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S:手ブレ補正

当該レンズを検索すると、VR(手ブレ補正)がないことを理由に躊躇されているという意見が散見されました。

スマホには当然手ブレ補正機能が付いていますし、カメラレンズでも高倍率の標準ズームや望遠レンズには誇らしげに「VR」の文字が付いているので、若い世代の方々には、良いレンズにはVRが付いていて、VRの表記がないレンズはダメなレンズ、という図式が出来上がってしまっているようです。

われわれ旧人類は手ブレ補正がない時代から様々な焦点距離のレンズで失敗と成功を繰り返して来たので、VRがどのようなシチュエーションで有用であるかを理解しています。焦点距離が長くなるほと有益であり、焦点距離が短くなるほど必要性は薄れて行きます。

広角系のレンズでは、必要がないばかりか、画質や価格、重量などを考慮するとマイナス面が大きくなってきます。それを知らずに「VRがない=ダメレンズ」と思ってしまう人がいるのは残念なことです。

手ブレ補正機構を付けると、そのための可動レンズ群も必要になりますし、それを駆動させる機構なども組み込まれるので、重く、価格も高くなるのは必至です。さらに、手ブレ補正は光軸がずれるため、画質を犠牲にしていますし、故障の原因にもなります。

手ブレ補正機構があった方が良いのは、望遠系のレンズと倍率が高いマクロレンズくらいでしょう。しかも、FXのZシリーズカメラにはボディ内手ブレ補正機構が付いているので、広角レンズ使用時の手ブレを心配する必要はほとんどありません。

手持ち限界

撮影はマニュアルか絞り優先モードしか使わないので、新しいレンズを買った時はいつも自分の手持ち限界のシャッター速度をテストします。以下は14-24mmを購入直後に自分の手持ち限界を知るためにテストした時の画像です。すべて手持ち撮影で、各シャッター速度で4枚撮影し、その中の一番良い画像をピックアップしています。1/100秒から2秒までテストしてみました。ボディ側の手ブレ補正は「ノーマル」です。
自分のテスト用なのであまりお見せするような絵ではありませんが、VRがないレンズは不安だという方々のために、サンプルデータを公開してみます。

ボディ:Nikon Z9(Ver. 4.01):FX:VR ノーマル
レンズ:NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S:広角端14mm:絞り開放2.8

実写

各シャッター速度で夜景を撮影した全体像と、中央右端付近の1280角切り出し画像です。縮小以外の処理は行っていません。

1/100秒

まったく問題ありません。

1/80秒

全く問題ありません。

1/60秒

全く問題ありません。

1/50秒

全く問題ありません。

1/40秒

全く問題ありません。

1/30秒

全く問題ありません。

1/25秒

全く問題ありません。

1/20秒

全く問題ありません。

1/15秒

全く問題ありません。

1/13秒

全く問題ありません。

1/10秒

全く問題ありません。

1/8秒

全く問題ありません。

1/6秒

全く問題ありません。

1/5秒

全く問題ありません。

1/4秒

全く問題ありません。

1/3秒

全く問題ありません。

0.4秒

全く問題ありません。

1/2秒

この辺りからブレが認識できます。
しかし、全体像からは分かりません。等倍に拡大すると明らかにブレていることがわかります。全体を縮小して使う分にはまだ使える状態です。

0.625秒

拡大するとブレが大きくなっています。

0.769231秒

拡大するとブレが大きくなっています。

1秒

少しブレが収まっているように見えますが、おそらく偶然でしょう。

1.3秒

こちらもブレが収まっているように見えますが、偶然だと思います。ただし、システム全体での共振周波数があるので、シャッター速度によっては効果の違いが現れることもあるかもしれません。

1.6秒

明らかにブレています。

2秒

2秒ともなると、さすがに使えるレベルではないほどブレていますが、拡大しない全体像では普通に鑑賞できてしまいます。

総論

このレンズを使用時の自分の手持ち限界を知ろうと思って行った実験でしたが、Z9のボディ内手ブレ補正が思いのほか良く効くようで、手持ち2秒までチャレンジしていました。秒単位の露光は、常識的に考えて三脚などを使用するのであまり意味がある実験ではありませんが、普段手持ちで撮影している時も、日が暮れて暗くなったり、屋内の撮影では手持ちのスローシャッターを使うことがあるので、自分の手持ち限界を知っておくことは有意義です。

上の実験から、14mmでの自分の手持ち限界は1/2秒前後です。ボディ内手ブレ補正が1/2秒まで頑張ってくれて、限界を超えると急に崩れるような振る舞いです。

しかし、絞り開放から使えるレンズであることを考えると、かなり撮影範囲が広いことが分かります。ボディ内手ブレ補正があるカメラであれば、夜景や薄暗い屋内など、ほとんどのシチュエーションで問題なく手持ち撮影できるでしょう。もちろん、日中の屋外などではまずブレることはないでしょう。

もちろん、三脚や一脚などを使用すれば更なるスローシャッターで撮影できます。星野写真を撮るときなどは赤道儀などを使いますから、VRはかえって邪魔になるでしょう。

VRがないことで一部の人たちから叩かれているようですが、正直言ってこの14-24mmではレンズ内VRがなくて困ることはほとんどないと思います。
Nikonは不必要なVR機構を入れて画質を劣化させたり、無駄に重量やサイズの増加、価格のアップを引き起こすよりも、このレンズにはZマウントの優位性を活かして高解像・高コントラストで、単焦点を超える最高の画質を持たせたかったのでしょう。Nikonらしい超マニアックな仕様だと思います。




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Nikon Zマウントの超広角ズームレンズです。FXフォーマットでは画角114度で、最も画角が広いレンズです。
11群16枚(EDレンズ4枚、非球面レンズ3枚、ナノクリスタルコートあり、アルネオコートあり、最前面のレンズ面にフッ素コートあり)のレンズ構成は伊達ではありません。フランジバックが短いZマウントはどのメーカーよりも広角レンズに有利だと言われていますので、Nikonの威信にかけて設計した超広角ズームレンズのようです。
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位相フレネルレンズ採用の通称ロクロクサンと呼ばれる600mmF6.3の単焦点レンズです。
全長278mm、重量1470gで、600mmの焦点距離からは想像できないほど小型軽量です。レンズ単体で5.5段、Z9やZ8との組み合わせではシンクロVR機構によって6段分のVRにより、手持ち撮影が可能です。
DXフォーマットで使用すると900mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで840mmF9、1200mmF13、DXで1260mmF9相当、1680mmF13相当となります。
最短撮影距離が4mなので、野鳥が近い公園などでは有利となります。

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NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S

位相フレネルレンズ採用の通称ハチロクサンと呼ばれる800mmF6.3の単焦点レンズです。
800mmの超望遠レンズとしては驚くほど小型軽量で、全長385mm、重量2385gしかありません。レンズ単体で5段分、Z9やZ8との組み合わせでは、シンクロVR機構によって5.5段のVRにより、手持ち撮影が可能です。
DXフォーマットで使用すると1200mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで1120mmF9、1600mmF13、DXで1680mmF9相当、2400mmF13相当となります。 最短撮影距離が5mあります。野鳥が遠い公園や小型の野鳥を大きく写したいときに有利となります。
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著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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