Nikon Z9:ローリングシャッター歪み(FXフォーマット編)

前回、Nikon Z9のDXフォーマットでのローリングシャッター歪みの検証を行いました。メカニカルシャッターを搭載した一眼レフは現在D500しか所有していなかったことと、Z9、Z8以外のミラーレス機でメカニカルシャッターと電子シャッターが使える機種がZ50しか手元になかったからです。同じDXフォーマットの土俵で比較したかったのと、野鳥撮影ではDXフォーマットの方をよく使うため、Z9もDXフォーマットにしての比較検証でした。

結果、DXフォーマットでのZ9のローリングシャッター歪みはD500のメカニカルシャッターの歪みと同等であることがわかりました。D500はDX機のフラグシップ的存在なので、ストロボ同調速度が1/250秒であることからもそれなりのシャッターユニットを使用していると思いますが、DXフォーマットにおいてはZ9の電子シャッターはD500のシャッターの幕速と同等なスキャン速度が実現できたということなのでしょう。

しかし、Z9は本来は 4571万画素 もある高画素フルサイズ機なので、FXフォーマットでのローリングシャッター歪みも見たい、という要望をいただきました。そうですね。確かに気になります。サイズが大きくなる分、スキャンの行程も長くなり、それに伴って歪みも大きくなることは十分予想できますが、どの程度なのでしょうか。Z9のFXとDXでスキャンのアルゴリズムも異なるかもしれません。
フルサイズ一眼レフでスポーツ写真などを撮影されている方々にとっては、メカニカルシャッターレスとなったZ9の一番の懸念点かもしれません。今まで、「電子シャッターはローリングシャッター歪みがひどくて動体の撮影では使い物にならない」と信じられていた時代がありましたので、Z9に対する不安感もあるかと思います。
とにかく実験してみましょう。

とは言うものの、メカニカルシャッターを搭載したフルサイズ機で動作可能なデジタルカメラは現在所有していないので、フルサイズメカニカルシャッターとの比較ができません。単純に前回と同じテストパターンを同じ回転数で回して撮影したらどう写ったかという検証のみにとどめておきます。せいぜいZ9でのFXとDXフォーマットでのローリングシャッター歪みの比較ができるくらいでしょう。本来は、D6クラスの一眼レフやZ7などのメカニカルシャッター搭載機とZ9を比較したいところですが、悪しからず。

お使いの一眼レフで同様なテストを行っていただき、メカニカルシャッターでの歪み像と本ページのZ9のFXフォーマットでの歪み像を比較してご自身でご判断ください。

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ターゲット

前回DXの比較で作った中心から12本の黒い線を描いた直径8㎝の円盤をそのまま使用しました。
中央は黒く塗り、1ヵ所正方形の白抜き部を設けました。これは回転数計測用です。

比較実験をしたい方に、A6(ハガキサイズ)印刷用のPDFデータを設置しておきます。ご興味がある方はダウンロードしてご自由にご利用ください。
自分は厚紙のハガキ用紙に印刷したものを丸く切り抜いて中央に穴を空け、M3のボルトナットで固定したものをリューターのチャックに差し込んで使用しました。

回転装置

PROXXON TYP28510というリューターのチャックにボルトを通したターゲットを取り付けて回転させました。

リューターの速度調整ボリュームの最低の回転数を計測すると約5600 rpm前後でした。 TYP28510 の仕様書によると、回転数は5000~20000 rpmなので、誤差範囲でしょう。

回転数の計測

赤色レーザーが当たっている場所の明暗をカウントして回転数を計測します。

非接触型回転数計測機( ‎FCMADE 社製 ‎FMTDT2234C )を使用し、ターゲット中央近くの白抜き部を狙って回転数を計測しました。リューターの軸にも反射テープを貼り、その数値と比較してほぼ同じであることも検証しています。

FOCUSMART 非接触式レーザー測定タコメーター 非接触型の回転数計測機です。
こんな安価な機械でも立派なタコメーターです。
1回転に1ヵ所他より反射率が高い5mm四方位の部位を設置すると、レーザー光線を当ててその反射明暗を計測して瞬時に回転数をrpmで表示してくれました。
銀色のテープも付属しているので、それを5mmほど切って計測したいものに貼るだけで計測できます。明暗が計測できれば良いので、黒地に適度な大きさの白い四角でも計測できます。
一家に一台タコメーター!(普段は使うことはないと思いますが)

線速度

ターゲットの直径は8cmなので半径4cm。そうすると、円周は2×π×4 cm=25.14 cmです。1分間に5600回転しているので、円周上の1点の線速度は25.14×5600=140672 cm/分=23.4 m/sとなります。こんなチャチな装置でも秒速23 mという、結構な速度を実現できるのですね。

照明

シャッター速度を上げられるよう、至近距離から撮影ライト(SmallRig社製SR3936 [RC-120D COBビデオライト])を照射しました。



SmallRig社製SR3936 [RC-120D COBビデオライト]

SmallRig社製SR3936 [RC-120D COBビデオライト]
室内撮影でいつも使用しているライトです。
CRIが95以上なので、色の再現性が高いのが特徴です。人物撮影、商品撮影など、あらゆるシーンで活躍しています。
輝度も大変高いので、静止画でも高速シャッターが切れるので、最近はストロボの出番が少なくなって来ました。

撮影機材

  • カメラ:Z9 Ver. 4.10
  • レンズ:NIKKOR Z 24-120mm f/4 S

Nikon Z9:FX(フルサイズ)でのローリングシャッター歪み

結論です。

結構歪んでみえますが、これがFXのシャッター歪みとして良いのか悪いのか、判断できません。メカニカルシャッター機と比較できないのが痛いところですが、DXフォーマットの比較でD500のメカニカルシャッターに勝るとも劣らない性能だったので、FXフォーマットのメカニカルシャッター機でも同程度の歪みが発生する可能性は否めません。
とりあえず、ここではフルサイズメカニカルシャッターとの比較ではなく、事実を述べるにとどめておきましょう。冒頭の放射パターンを5600 rpmで回転させたものをZ9FXフォーマットの画面いっぱいに写すとこのように歪むということです。

理論値

放射パターンの回転数は5600 rpmですから、1秒で93回転です。計算上は1回転するのに要する時間は約10 ms(ミリ秒)となります。従って、真上の棒が反時計回りに回転して真下に来るにはその半分の5 msほどになります。ターゲットをファインダーの上下ギリギリに捉えると、半円形の経路ですが外周の点は5 msで撮像素子の縦方向を横切ることになります。おそらく、メカニカルシャッターの幕速や高速化されたZ9のローリングシャッターのスキャン速度と同様なオーダーになっていると思います。

比較

前述のようにフルサイズメカニカルシャッター機を所有してないので、以下は参考資料です。

Z9のDX、FXの比較

走行距離が長い分、歪みは多くなりますが、ぱっと見はあまり変わりません。歪んだ黒線の足が少し伸びている程度です。

Z50電子シャッターとの比較

これは土俵が違うので比較の意味はありませんが、あまりに差があるので掲載しておきます。これはZ50が悪いわけではなく、Z9のスキャン速度が異常に速いだけなのだと思います。Z50開発当時の電子シャッターはこれが限界だったのでしょう。そのため、メカニカルシャッターが必要だったのです。
Z50の問題ではなく、Z9やZ8以外のメカニカルシャッターが必要だと判断されて搭載されているカメラは、多かれ少なかれ電子シャッターだけではローリングシャッター歪みを制御できないので、メカニカルシャッターが必要だったということでしょう。

総評

ヘリコプターのメインローターは300 rpm程度、扇風機の羽が1000 rpm前後、プロペラ機のプロペラで2000 rpm前後と言われています。今回実験を行った回転数よりも遥かに遅く、かつプロペラを画面いっぱいに写すことも少ないと思いますので、あまり問題となることはないかと思います。厳密に言えばグローバルシャッター以外、どんなカメラで撮影しても必ず歪みは生じているはずですが、その歪みが分かるか分からない程度なのか、気になるか気にならないか、の違いなだけなのだと思います。おそらく、ほとんどの人はメカニカルシャッターの幕速度があれば世の中の大抵のものはあまり歪みなく写せるので、それで良しとしているのでしょう。
Z9の電子シャッターのローリングシャッター歪みもその域に達したということのようです。
個人的にはローリングシャッター歪みが問題となるような撮影はしませんが、スポーツ撮影が専門の方々にとっては死活問題なのかもしれません。自分は専門ではないので、評価は差し控え、実験結果のみの報告とさせていただきます。

今後はカメラのシャッターもグローバルシャッターに移行して行くのでしょうが、いつの日か、同条件でテストしてみるのが楽しみです。

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1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで840mmF9、1200mmF13、DXで1260mmF9相当、1680mmF13相当となります。
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DXフォーマットで使用すると1200mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで1120mmF9、1600mmF13、DXで1680mmF9相当、2400mmF13相当となります。 最短撮影距離が5mあります。野鳥が遠い公園や小型の野鳥を大きく写したいときに有利となります。
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著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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