自分は野鳥写真家と名乗っていますが、あくまでも写真家であって、鳥の専門家ではありません。大学のボス(某K博士)や知人の動物園園長(某M博士)が鳥類学者で、鳥に関する手ほどきを受けましたので、まったくの素人よりも多少は鳥の事を知っている程度です。
学者と言葉が通じない
鳥のことを学び始めた頃、彼ら鳥類学者たちと話をすると、言葉が通じなくて困った覚えがあります。知らない言葉のオンパレードです。いわゆる鳥類学用語というやつです。
鳥類は形態学的にも、解剖・生理学的にも哺乳類とは大きく異なるため、独自のネーミングがされています。さらに、鳥は愛玩動物としても古くから繁殖・飼育されてきたため、鳥のブリーダーの世界で独自に作り出され、使われてきた用語なども混ざっています。鳥の専門家と話をすると、そういった言葉が普通にポンポン飛び出してくるので、知らないと話がチンプンカンプンになります。
ちょっと気になった鳥類学用語をいくつか紹介しましょう。思いついたまま、この下に徐々に追記して行きます。
パーツの名称
鳥類は独自の進化をしてきたため、一般の哺乳類とはかけ離れた形をしています。哺乳類の部位の名称に対応する場所が鳥類にはなかったり、逆に鳥類にだけある部位の名称もあります。1対1には対応していません。
くちばし
カモノハシなど。一部の種を除いて、哺乳類にはくちばしがありません。「嘴」は常用漢字ではないため、最近では一般向けの多くの図鑑などではひらがなの「くちばし」と表記しています。くちばしは、上嘴(じょうし)、下嘴(かし)に分かれていて、種を割ったり、肉を引きちぎったりする役割があります。「カシの一部が赤いのがメスです」のような使い方をします。「ジョウシが黒い」は素人は「上司が黒い」ように聞こえてしまい、闇バイトやブラック企業を連想してしまうので注意が必要です。
最近まで知らなくて驚いたことは、くちばしの開閉は下嘴が下がるだけではなく、上嘴も上に開くことができるということです。上嘴は頭骨に固定されていて、下嘴のみが開くと勘違いしている人が多いようです。多くの哺乳類の上顎は頭骨に固定されているので、鳥の上嘴が可動である事実は自分にとっては衝撃的でした。
羽、羽根、羽毛、翼
これらの区別がつきますか。私は未だによくわかりません。
一般には、鳥のつばさを表すのが「羽(はね)」、鳥の全身を覆っている羽毛一つ一つを「羽根(はね)」と表記するようですが、必ずしもそうではなく、かなり曖昧な使われ方をしています。
「羽ペン」などは一枚の羽根なのに「羽」が使われます。つばさではなく、鳥の体についている羽毛は「羽」と表記し、抜け落ちたものは根っこが見えるから「羽根」と覚えると良い、という説明もありました。
「羽毛(うもう)」も曲者です。いわゆる羽根の形ではなく、ダウンのような形状のものにもっぱら使うのでしょうか。もしくは、「全身の羽毛」のように、いわゆる羽根型のもの(Feather)とダウン(Down)をひっくるめて総称のように使うのでしょうか。どちらかというと、後者のような使い方が多いように思います。
このあたりは、かなり難しい問題をはらんでいます。勝手なイメージですが、学者たちは混乱を避けるために、羽ばたく飛行装置(Wing)の方を「翼(つばさ)」、体やつばさの表面に生えているもの(Feather)を「羽(はね)」と表現することが多いようです。「羽根」という表記は学術的にはあまり使わないのかもしれません。この問題に関しては、WingとFeatherで明確に区別されている英語の方が分かりやすいですね。
さらに混乱するのは、学者の方々も学生や素人相手に話すときは、「鳥の羽を広げると……」などと表現することもあります。
さて、あなたは「鳥の羽」と聞いて鳥のどの部位を連想するでしょうか。
部位や羽の名称
鳥の各羽には実に難しい独特の名称が与えられています。
初列風切羽(しょれつかざきりばね)、次列風切羽(じれつかざきりばね)、雨覆(あまおおい)、上尾筒(じょうびとう)、下尾筒(かびとう)など、最初は聞いたことがない単語だらけです。
鳥の専門家と話をするためには、最低限これらの名称を覚えておく必要があります。
跗蹠 (ふしょ)
難しいですね。読めもしないし書けない漢字なので、一般向けにはひらがなで書くのが通例のようです。それにしても鳥の勉強をしないと、おそらく聞いたこともない単語だと思います。
鳥の足は膝が人間とは逆に曲がっているように見えますが、中間で折れ曲がっている関節は実は膝ではなく、かかとです。鳥の足のメインに見えている部分は、哺乳類で言うと、かかとから足指までの部分、すなわち足のひらの部分を細長く伸ばした部位に相当します。その部分を「ふしょ」と呼びます。
不思議な言葉ですよね。でもそれしか呼び名がないので、仕方ありません。
色
青(アオ)
和名で「アオ〇〇」という鳥が多いのですが、日本語のアオはかなり曖昧で、緑色もグレーも「アオ」と表現されます。アオゲラ、アオサギ、アオジなど、青の成分は入っていませんが、名前にアオが使われています。信号の青も英語はグリーンですし、日本語の「木々が青々としている」などという表現からも分かるように、緑からシアン、青までを昔の日本人は「青」と表現したのでしょう。
バフ色
鳥類に限ったことではないのですが、生物界ではよく「バフ色」という名称が使われます。淡い黄褐色というか、薄い黄土色のような色を表現するようです。語源のBuffは鹿や牛の革で、よく物を磨いたりするときに使う淡黄色の柔らかいもみ革を指します。
「胸から腹がバフ色で」などと使われます。知らないと想像できない色です。
とや
どのように表記するのかも分かりません。ひらがなで「とや」なのか、カタカナの「トヤ」なのか。鳥の羽が抜け替わることを言います。本によっては「換羽」の読みとして「とや」と書いてあるものもあります。おそらく古くからのブリーダー用語なのでしょう。
論文などでは「換羽(かんう)」が使われているので、学術分野ではあまり好ましくない表現のようですが、会話では普通に使われているので、鳥の世界に入る場合は知っている必要がある単語です。
ペリット
鳥は基本的に食べ物を丸のみするので、消化できない植物の種や昆虫の殻、動物の骨、毛などをまとめて口から吐き出すことがあります。それを日本の鳥類関係者は「ペリット」と呼びます。英語表記はPelletですが、日本では、食材を粒状に加工したものは「ペレット」、鳥類学用語として未消化物を丸めて口から排出したものを「ペリット」と呼ぶ習慣があるようです。
日本の鳥類学用語としてはなぜ「ペリット」と呼ぶのでしょう。ChatGPTに聞いてみました。
どうして鳥類学ではペレットのことをペリットと呼ぶのですか
鳥類学において「ペレット」が「ペリット」と呼ばれる理由は、発音や日本語のカタカナ表記に関連しています。英語での正しい発音は「pellet(ペレット)」ですが、日本語に翻訳される過程で、より自然な音に変換されることがよくあります。この場合、「ペレット」を「ペリット」と表記することが、音的に日本語の発音に合わせやすいため、使われることが多いのです。
具体的には、「ペレット(pellet)」は「小さな塊」や「固まり」という意味を持ち、鳥が消化できない食物の残骸(羽毛や骨、その他の消化されない部分)を吐き出す際に形成される固形物を指します。このような生物学的な現象に関して、日本語では「ペリット」という表記が広く浸透しており、音の違いは単に発音の違いにすぎません。
要するに、「ペレット」と「ペリット」の違いは日本語表記や発音の違いによるものであり、意味は同じです。
とのことです。わかったような分からないような……。
想像ですが、昔々、偉い鳥類学者の先生が海外の論文に登場したPelletを、フードの「ペレット」と同じでは具合悪いと思われたのか「ペリット」と訳して、それが浸透したのではないでしょうか。もしくは、学会発表で使われていたPelletの発音を聞いて「ペリット」のカタカナ表記がふさわしいと思われたのかもしれません。
結果的に言われなくても食べ物と吐き出したものの区別がつくこととなりました。日本語の多様性ですね。英語圏ではどちらも単純にPelletなので、文脈でどちらを指しているのかを判断する必要があります。
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