茶髪

日本の方々

大学で受け持っている授業の生徒は90%以上が女性なので、まるで女子大のようです。みなさんそれぞれ個性的で、奇抜なファッション、髪型、お化粧をされているようです。ファッション関係は、知識も興味もまったくないのですが、髪の色は大変気になります。おそらく、ほぼ100%の学生さんは髪を染めていらっしゃるのではないでしょうか。濃い茶色であったり、ブルネットであったり、人によってはほぼ金髪であったり、部分的に緑色だったり、多種多様です。

自分が旧人類だからか、自分たちが高校生や大学生だった40年前はみな黒髪で、一部の不良(これはもはや死語か)や暴走族の方々が脱色したり、メッシュを入れたりして自己主張されていた時代でした。高校生が髪染めてきたりしたら退学になるような時代です。

日本の方々

しかし、現在の学生さんを見ると、黒髪を見つける方が大変なほどです。日本人は元々は黒髪で、緑の黒髪と言われるほど、艶のある真っ黒な髪が自慢だったはずです。それがどうしたことでしょう。黒髪を尊重せず、わざわざ時間とお金をかけて茶色にされるようです。手間ひまかけて白髪を染めるのは分かりますが、若い人はせっかくの真っ黒な髪をなぜわざわざ茶色にしたがるのでしょう。不思議でなりません。
大学に入った解放感からか、茶髪にする人が増え、2年、3年とエスカレートする傾向が見られますが、就活がはじまるとまるで別人のように真っ黒に戻ります。研究室で会っても「えっ?誰?」と思うこともしばしばあります。就活シーズンになると黒髪に戻しているところを見ると、どこかで「良くないこと」と罪悪感を持ちながら茶髪にしているのでしょう。多かれ少なかれ、社会的に見て良くない印象を与えているということを自認しながら茶髪にしているということがわかります。面白い現象です。そこまでして茶髪にする理由を個人的に考えてみました。

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仮設1:外国人へのあこがれ

本物

昔、 素顔の日本という本の内容で、「世界中の人種のなかで、ピグミー族とホッテントットを除けば、おそらく身体的な魅力といった点で最も劣っているのは、日本人であろう。」 という記述が問題になったことがあります。著者は海外に精通していらしたであろう、アルゼンチン大使だった方です。比較する民族を出してしまったのが問題であって、純粋に日本人の体形を語れば問題はなかったものと思われます。言論の自由とはいえ、日本を代表する大使の言葉として公言するのはやはり問題が多かったのかもしれません。

しかし、実際海外生活をしていると、この大使が言いたかったことはよくわかります。アメリカやヨーロッパに住んでいると、あちらの方々の姿かたちは、やっぱり同じ人間とは思えないのです。人種差別する気はありませんが、純粋に見て、あちらの方々はやはり芸術的観点からして、均整がとれた容姿をしていらっしゃるのです。

金髪に青い目で彫りが深く、すらっと背が高く、八頭身で身長の半分が足です。ギリシャ彫刻がそのまま歩いているような人が普通に存在します。地中海沿岸のイタリア、フランスあたりの海岸を歩くと、まさに絵画から抜け出したヴィーナスのオンパレードのようです。男も女も、誰が見ても明らかにあちらに軍配が上がるでしょう。

ですから、金髪やブルネットの外国人に憧れるのは無理もありません。少しでも近づきたくて髪を脱色するのでしょうか。髪の色だけ彼らに近づけようとする姿はいささか滑稽に見えますが、当人たちがそれで満足のようなのでよしとしましょう。

ヴィーナス

エスカレートすると髪の色は茶色からどんどん金髪に近づき、目もカラーコンタクトで青くするまで発展している人もいるようです。外国人のモデルに凄まじい憧れを持っていらっしゃるようです。そのかたくなな努力には脱帽します。

個人的には黒髪の方が、日本人の姿かたちにマッチしていて、可愛らしいと思うのですが、多くの女性は外国の映画やファッション雑誌、テレビのCMなどに洗脳されてしまっているのだと思います。

仮説2:目立ちたい

髪の色は人目につきやすいので、目立つために色を変えているのでしょうか。どちらかと言うと、男性に多いようですが、女性なども音楽活動をされている方などにこういう傾向がみられるようです。

動物としては理にかなった行動なのかもしれません。とにかく生きるためや繁殖のために異性から目立たないといけません。
純粋に目立つことを目的に染めるのでしたら、現在では緑や赤、青など、より奇抜な色にしないと目的は達成できないでしょう。

先日は真っ白にしている学生を見ました。確かに大変目立ちます。本人の目的は遂げられたのでしょうが、それを見て「すてきー」と思う人がどの位いるのか、はなはだ疑問です。真っ黒の方が若々しくて何倍も素敵だったのではないかと思います。本人には言えませんが。

私たちが二十歳前後だった40年前ならともかく、現在だったらほぼ全員が茶髪なので、目立つ目的なら逆に黒髪の方が目立つのではないでしょうか。

仮説3:社会に対する反発

70年代のいわゆる「不良」が髪を脱色していた理由はこれでしょう。とにかくダメと言われていることをやらないと気が済まない方々です。自己主張のための脱色です。昔は今のように気軽に脱色剤や染色剤が売っていたわけではないので、世の不良たちはそれなりに努力しないといけない時代でした。オキシドールをかけたり、キッチンの漂白剤を使ったり、危ない橋を渡っていました。目に入ると危険だし、髪も頭皮も荒れるので今はそんなリスクを冒す人はいないでしょう。きっと当時はそんな危険なことをしてまで脱色をするということが不良の証として彼らのステータスだったのでしょう。炭酸飲料で髪を洗うと良いとか、コーラが良いとか、色々と言われていた時代です。
今では、誰でも簡単に脱色できるので、社会に対する反発で髪を染めている人はほとんどいないと思います。

仮説4:軽く見られたい

以前、疑問に思って研究室の学生たち(女性)に聞いてみたことがあるのですが、皆口をそろえて言ったのが「黒髪は重苦しい」ということです。ふむふむ。なるほど。確かに、文欽高島田や幽霊の長い黒髪は重そうなイメージですが、一般的に見る長さの髪型であれば黒髪でもそれほど重苦しいというイメージはないと思うのですが、そのようにインプットされてしまっているのでしょう。

おそらく、彼女たちがいう「重い」は、実際の髪の重さではなく、性格とか、行動を表す重い軽いを表しているようです。黒髪だと真面目で陰湿そうだけど、明るい色にすると、性格も明るく、快活そうに見えるというイメージを持っているようです。思い込みだと思いますが、世間がそういうイメージを作り上げてしまったのでしょう。
黒髪だと、まじめ、ガリ勉、仕事熱心で、考え方も古風で、おいそれと声をかけられない壁を作っているイメージで、明るい髪色なほど、明るくおおらかで、社交的なイメージが強くなると考えているようです。男性からも誘いやすいイメージだと思われているのでしょうか。

ファッションも、髪型も、髪色も、お化粧も、その人物が発しているメッセージなのでしょうから、理解したいと思うのですが、世代が違うと解釈に苦しみます。

仮説5:茶髪の方がモテる!?

男性が茶髪の女性をより好むということはないと思います。むしろ、美しい黒髪の方が好まれるのではないでしょうか。私も個人的にはもちろん黒髪派です。

黒髪の支持率

気になったので調べてみたら、興味深いアンケートの結果が見つかりました。
2017年に2つの頭髪治療の医療機関が、東京と大阪の1600人を対象にして「東京大阪の髪に関する意識調査」を実施したものです。その結果、東京大阪にほぼ差はなく、黒髪が良いとする男性群が一番多く、約半数は黒髪の女性を支持しています。ところが、黒髪を支持する女性は30%以下です。この結果を見ると、異性の目を意識して茶髪にしているのではないことが分かります。つまり、男性が黒髪の女性が好きだと言っているのに、あえて労力をかけて茶色く染めているということです。男性を意識するのでしたら、黒髪の方がモテると思うのですが。
謎は深まるばかりです。

結論

結局、結論は出ませんが、 日本の女性たちは、黒髪は重いとか、格好悪と信じているようです。いつの頃からか、洗脳されてしまったのでしょう。テレビの宣伝も、化粧品のモデルも、美しい外国の女性を使っているので、無意識のうちにあこがれてしまっているのではないでしょうか。
テレビや映画などの影響が大きいのだと思いますが、せっかくの黒髪が、日本人の美しい特徴として活かされていないことを大変残念に思います。 外国では逆に黒髪にあこがれを持って黒く染める人もいるようです。
大きなお世話だと言われそうですが、もう少し自分たちが持って生まれた漆黒の髪に自信をもっても良いのではないかと思ってしまいます。

いつの世も、隣の芝は青いのでしょうか。

著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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