ウグイス(Horornis diphone)

声はすれども姿は見えず。
日本で一番有名な野鳥なのですが、その姿を見たことがある人は驚くほど少ないようです。「ホーホケキョウ」という鳴き声はあまりにも有名で、誰しもその鳴き声の正体がウグイスであることを知っていますが、いざウグイスの絵を描けるかと聞かれるとほとんど描けないでしょう。もっとハードルを下げて、似た大きさの野鳥の写真を並べてウグイスを選ぶクイズでも正解率は低いでしょう。多くの人はウグイス色のメジロの写真をウグイスだと言いはります。
実際のウグイスは地味なカラリングの野鳥ですが、大変可愛らしい顔をしています。

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フクピチュ

多くの野鳥の名前はその鳴き声からつけられています。ウグイスはそのような鳴き声ではないと思われがちですが、枕草子の頃は「うくひす」と表記されていたそうです。
文字は千年経っても残っていますが、1千年前にそれがどのように発音されていたかは定かではありません。言語は流動的に変化するものですから、「うくひす」がそのまま「U Ku Hi Su」と発音されていたとは限りません。むしろ1千年も変化しなかったと思う方が不自然でしょう。

一説によると、「うくひす」のそれぞれの文字は、1千年前は次の様に読まれていた可能性が高いそうです。

  • う→Fu
  • く→Ku
  • ひ→Pi
  • す→Chu

1千年前の「うくひす」の発音を現代のカタカナで書くと「フクピチュ」という音に近いということです。この説は大変納得が行きます。現代の日本人はウグイスは「ホーホケキョウ」と鳴いているというように子供の頃から洗脳されていますが、実際よく聞くと、「ホーホケキョウ」とは言っていません。大乗仏教の経典である「法華経」に絡めて都合よく当てはめられてしまったのでしょう。一度そのことをリセットして、今度ウグイスの声が聞こえたら、「フークピチュ」と鳴いていると頭で考えながら聞くと、何と「フーーーークピチュ」と鳴いているように聞こえます。騙されたと思ってやってみてください。「ホーホケキョウ」よりも「フークピチュ」の方がしっくりきます。

1千年前の人は、この鳴き声を聞いて、当時の文字の音に合わせて、「うくひす」という字を当てはめ、この鳥の名前としたのでしょう。もちろん、当時の読みは「FuKuPiChu」です。
それが1千年の間に「うぐいす」に変化したということです。

ウソかマコトかわかりませんが、何ともロマンがある説で、個人的には支持しています。

撮影

さて、1千年前も現在も、ウグイスは同じようにふるまっていたことでしょう。おそらく、1千年前も人前にはあまり姿を見せない野鳥だったと思います。現在もカメラマン泣かせで、撮影が大変難しい野鳥です。クリアな場所に出てくることはまずなく、ほとんどは藪の中で過ごしていて、しかも常に動き回っています。1か所にじっとしていることはありません。
大きさもスズメ程度であり、暗い藪の中を高速で動きまわるので、体全体をクリアに捕捉できることは滅多にありません。ウグイスの撮影は枝被りとの闘いとなります。

もちろん、三脚なんか使ってウグイスを撮影するのは不可能でしょう。そんなに都合よく三脚を構えた先に出て来てはくれません。手持ちで、こちらも常に動き、枝がかぶらないピンポイントの位置を探して撮影しなければなりません。左右に微妙に移動したり、中腰になったり、しゃがんだりしながら、枝の隙間から抜けるポイントを探すので、大変疲れます。

作例

常に動いているので、暗いブッシュの中でもあまりシャッター速度を下げることができません。1/200秒前後が限度でしょう。必然的に感度が上がってしまうので、絞り、シャッター速度、感度のせめぎあいです。それでもなかなか満足できる写真は撮れません。未だに挑戦しています。

2021

Nikon D500+TC14E-III+ AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR

Exposure Time : 1/500
F Number : 7.1
Exposure Program : Manual
ISO : 2800
Date/Time Original : 2021:04:16 15:37:40
Exposure Compensation : -2/3

思いっきり「フークピチュ」と鳴いているところです。

Exposure Time : 1/400
F Number : 7.1
Exposure Program : Manual
ISO : 500
Date/Time Original : 2021:04:16 15:38:41
Exposure Compensation : -1

なかなか全身が見れることはありません。ずっと藪の中をちょこちょこ動いているので、待って待って、出て来た瞬間に連射するという撮影スタイルになります。

Exposure Time : 1/400
F Number : 7.1
Exposure Program : Manual
ISO : 1400
Date/Time Original : 2021:04:16 15:40:34
Exposure Compensation : -1

1つの枝に数秒しか止まってくれないので、連射しても数枚しか撮れません。多くの場合は、ピントが合った瞬間にもういない野鳥です。

Exposure Time : 1/250
F Number : 7.1
Exposure Program : Manual
ISO : 640
Date/Time Original : 2021:04:16 15:57:24
Exposure Compensation : -1

トリミング画像。どんな場合でも目が写っている以上、目にピントが合ってないとボツです。仕事写真としては、感度をできるだけ下げたいので、シャッター速度を限界まで下げます。目の周りのツブツブが解像されている必要があります。

Exposure Time : 1/250
F Number : 6.3
Exposure Program : Manual
ISO : 1000
Date/Time Original : 2021:04:16 16:15:44
Exposure Compensation : -4/3

地味ですが、かわいい顔をしています。

Exposure Time : 1/125
F Number : 6.3
Exposure Program : Manual
ISO : 220
Date/Time Original : 2021:04:16 16:34:59
Exposure Compensation : -1

歩留まりは悪くなりますが、より暗いシチュエーションでは感度が上がらないようにシャッター速度を1/125秒くらいまで落とします。レンズのVRの恩恵で、何とか撮れます。ISOオートで、ファインダーで感度を見ながらシャッター速度を限界まで落とす方法で調整しています。

撮影中はアドレナリンが噴出しているので気付かないのですが、一日ウグイスの撮影を行うと、へとへとに体力を使い、3日間ほど筋肉痛になります。

著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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野鳥野鳥撮影
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