マンフロットのゴム雲台

みなさんは、「あー、あの時買っておけばよかった」と後悔した製品はないでしょうか。私にはありました。マンフロットのゴム雲台がそれです。

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出会い

この絶妙なくびれが美しい

今から約30年ほど前、カメラ量販店で興味深い雲台を見つけました。ゴムでできた雲台です。形がくびれた円柱形で、双曲線の回転体のような形が気に入りました。下には1/4インチの雌ネジが埋め込まれ、上に1/4インチの雄ネジが突出しています。三脚とカメラの間に挟む自由雲台として使う仕様のようでした。ただ、単なるゴムの塊りなので、ボール型の自由雲台と違って、固定したりすることはできません。

その発想と形状はたいへん気に入りましたが、価格が高かったこともあり、悩んだあげく、その時は購入を断念しました。その当時、写真は趣味の範疇で、645フォーマットカメラで天体写真などを撮っていました。ゴム雲台が使えるシチュエーションが自分にはなかったのです。

それから数十年経ち、写真は仕事となり、撮影するターゲットも変わりました。
教科書制作の仕事で、野鳥写真を頻繁に撮りに行くようになって、ある日その雲台のことを思い出しました。野鳥の望遠撮影をする上で、まさにその雲台が最適だと思ったからです。
さっそく近くの量販店を回って探しましたが、もうどこにも売っていませんでした。店員さんに聞いたら、もうかなり前に廃版になったとのことでした。30年前に買っておけばよかった、と後悔した瞬間です。

やっとの思いで再会できたゴム雲台

手に入らないとなると、余計に欲しくなるものです。どこかにデッドストックがあるのではないかと量販店のシステムで検索してもらったり、インターネットで調べてもしばらくノーヒットでした。数ヵ月後、海外の中古ショップでようやく見つけました。しかも未使用の新品です。
まさに探していたものです。さっそく取り寄せました。

ゴム雲台の使用感

まさに思った通りの製品でした。30年前の自分には利用価値がなかったと思いますが、今なら大変有効に使えます。飛ぶ鳥の撮影が専門なので、基本は手持ち撮影です。しかし、長時間重いレンズをホールドする場合や暗くなってシャッター速度を落とさなければならない状況の時は、一脚が必要になることがあります。その一脚の雲台として使いたかったのです。ボール型の自由雲台だと大仰だし、重量も重くなってしまいます。その点、このゴム雲台は軽く、適度のテンションがあり、大変使いやすい製品でした。超望遠レンズの重量を支えてくれる一方、上下左右への自由度があり、野鳥の飛翔シーンの流し撮りには最適です。縦ブレだけ効率よく防いでくれるので、歩止まりも上がりました。一眼レフの場合、ミラーブレ、シャッターブレの多くは縦ブレなので、縦方向の振動をキャンセルするだけで劇的にブレを減らすことができます。
ゴム雲台は、この数十年で入手したカメラ備品で、一番役立つ買い物だったかもしれません。

ちなみに、上の写真はVelbon Ultra Stick BK7(349g)にマンフロットゴム雲台を取り付け、その上にアルカスイス互換の取り付け器具を装着しています。Ultra Stickも優れもので、縮めると255㎜のものが、一瞬で1370㎜に伸ばせます。それにゴム雲台の高さ+アルカスイス互換取り付け器具+レンズフットなどを足すと、身長183㎝の自分が丁度ファインダーを覗ける高さになります。5㎏程度のカメラシステムを乗せても十分耐えています。

通常は伸ばして上にレンズの重量バランス点付近を乗せるだけで使っています。乗せるだけなのですぐに使えて、すぐに外せます。乗せるだけでミラーブレ、シャッターブレを防げるので、低速シャッター時の歩留まりは大幅にアップします。

最近は動画撮影にも使用しています。動画の場合はクランプで固定します。ボール型自由雲台のリリースした状態とは違い、常に軽くテンションがかかっているので(ゴムが戻ろうとする力)グラグラせず、より安定します。あのくびれが絶妙なのでしょう。程よくテンションがかかる強度となっています。

経年変化でゴムが劣化しないかと心配していますが、2年以上使用して今のところまったく問題ありません。
一脚を使う場合、多くの人はボール型自由雲台をフリーの状態にして使っていると思います。私も以前はそのような使い方でした。鉛直荷重を支えることと、縦ブレを防ぐという目的ではどちらも役目を果たしますが、動かしたときの感覚が全く異なります。
フリーのボール雲台は、本当にフリーで、気を抜くと前後左右に重いものが下を向うとします。支えてあげないと重力に任せてあらぬ方向を向いてしまいます。
ゴム雲台は、水平状態が安定なので、常に水平に戻ろうとします。曲げると抵抗が大きくなり、元に戻ろうとする力が生まれます。軽く支えるだけで水平近くに保て、大きく上を向けたり下を向けるとボール雲台とは逆に、抵抗が強くなります。
そこが大きな違いでしょうか。

あまり大型の機材には向きませんが、このくらいのシステムではゴム雲台で結構安定します。
ボール雲台をフリーで使うとブラブラですが、ゴム雲台は適度なテンションがかかっているので、感覚はかなり異なります。

一脚を多用される方で、現行の自由雲台に不満がある方にはおすすめです。
海外の中古などで時々でることもあるようです。国内ではいくら探してもまったくひっかからないので、日本ではほとんど売れなかったのでしょう。こんなに優れた製品なのに。
もし見つけたらイチオシの逸品です。

見つからない場合は小型の自由雲台を使うことになります。鉛直荷重を支えるだけなので、ロックせずにフリーで使います。そのため、ボール径が大きな高級自由雲台を使う必要はなく、数千円の軽い自由雲台の方が良いでしょう。

一脚に付けて鉛直荷重だけ受け持たせるのであれば、フリーで使うので高価で頑丈で重い自由雲台はオーバースペックで無駄なだけです。軽くて安い自由雲台で十分です。数千円でアルカスイス互換プレートとクランプまでついているものがあります。
手術シーンの動画撮影機材もよく聞かれますが、ブレ止めとしてウルトラスティック(一脚)と自由雲台をおすすめしています。何もない空間でビデオカメラを持ちづ付けると安定しませんが、雲台はブラブラの状態でも一脚があるだけで安定度は見違えるように良くなります。
著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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野鳥撮影一脚・三脚その他
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