AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR

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AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR
Nikon Imaging https://www.nikon-image.com/
AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR MTF曲線
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2018年9月14日に発売になったNikonの500mm単焦点超望遠レンズ、AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR(以下500mmF5.6E PF)に衝撃を受けた人も多いのではないでしょうか。少なくとも私はその一人です。
発売当時は人気があり過ぎて、注文しても入荷は半年後とか1年後と言われるほどでした。このレンズのために他社からNikonに乗り換えた人も多いでしょう。それほど人気のレンズです。発売から2年以上経って、ようやく普通に買えるようになりました。

それまでは500mm単焦点と言うと、AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR(以下500mmF4E FL)しかなく、重さ3kgオーバー、価格130万円オーバーでかなりハードルが高いレンズです。車が買えてしまう価格なので、お父さんが趣味で買うには相当家族の理解が必要なレンズです。仕事で使っている人以外では、退職金で購入したとおぼしきご高齢の方が使っている姿しかあまり目にしないレンズです。
その状況を打破するために投入されたと思われるのが本レンズです。
F値は5.6ですが、重さ1.5kg以下、価格556,600円で、重さも価格も半分以下です。それで写りも半分以下であれば問題ですが、上のMTF曲線を見ても分かる通り、500mm F4E FLと同様に4つの曲線が重なって天井に張り付いています。ほぼFXフォーマットのイメージサークル全体において高コントラストで高解像度であることが分かります。

このレンズは位相フレネルレンズという特殊なレンズを使って色収差を補正しています。フレネルレンズは色分解の方向が通常のレンズとは逆になる特性を利用して、同じ凸レンズでありながら通常レンズと併用すると色消しになります。一般的に望遠系レンズ設計は色収差との闘いで、フローライトや材質が異なるガラスで凸レンズや凹レンズをいくつも組み合わせて色消しを行います。それによってレンズは大きく重くなります。

500mm F5.6E PFは位相フレネルレンズとEDレンズを効果的に組み合わせ、超軽量コンパクトの超望遠レンズを実現しています。さらに4段分と言われる手振れ補正機構によって、フィールドで野鳥撮影をするのに理想的な仕様に仕上がっています。500mm F4E FLは真上の鳥を撮影するのは困難ですが、500mm F5.6E PFであれば軽々と真上に構えることができます。軽く、機動性が高いということは、それまで撮れなかったり撮りにくかったものが撮れるようになるということです。軽さもレンズの重要な性能なのだとあらためて感じさせてくれたレンズです。

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絞り値による画質変化

開放F5.6から十分な解像度とコントラストを発揮しています。F8の方が若干シャープに見えますが、F11では少し解像感が失われているので、F5.6からF8の間で最高のパフォーマンスを発揮できるのでしょう。F5.6からF11までは十分に実用域です。F22以上絞ると回折の影響か、急に解像感が失われてきます。野鳥目的であればほぼ開放F5.6のままか、絞っても1段以内で使うと思うので、このレンズの一番おいしい絞り値で使うことになるでしょう。絞りはF32まで絞れますが、被写界深度を深くして望遠効果を発揮するような特殊な使い方以外で、あまり使うことはないと思います。

色収差はほぼ完璧に抑えられているようで、開放から高コントラストの境界部でも色づきはほとんどありません。通常のガラスレンズとフレネルレンズの色分解の相殺が大変うまく行っているようです。

また、単焦点では当たり前ですが、ディストーション(歪曲収差)もほとんどなく、四角いものが気持ちよくきっちり四角く写ります。

F5.6

F8

F11

F22

実写サンプル

フレネルレンズは逆光に弱いと言われています。確かに条件によっては急激にコントラストが低下するシーンに遭遇することもありますが、通常は順光で撮影することの方が圧倒的多いので、あまり問題になることはないでしょう。

F5.6
F5.6
F5.6
F5.6
F5.6

総評

ズームレンズと異なり、開放F5.6から使えます。そこが単焦点レンズの醍醐味です。背景をボカし、被写体を浮き上がらせることができます。DXフォーマットで使うと1.5倍換算なので、750mmF5.6の超望遠レンズに変身します。それなのに重量1.5kg以下で、値段も500mmF4E FLの半額以下です。順光で撮っている限り、500mmF4E FLと遜色ない画質が得られます。50万円前後の価格が許されるのであれば、野鳥撮影用レンズとしては最高のコストパフォーマンスで、おすすめできるレンズです。

個体差なのか、D5600との相性があまり良くなかったのですが、FTZを挟んでZ50で使うと最高のパフォーマンスを発揮しました。

このレンズは、一度手にすると、大きさや軽さは重要な性能であると思うようになります。特に野鳥撮影では撮影システムを持って野山を歩き回り、長時間水平に構えたり、真上に向けることもあります。重いシステムでは撮れなけど、このレンズなら撮れるというシーンにかなりの確率で遭遇します。巨大な大砲を向けられるよりも、野鳥に与える恐怖感も少ないでしょう。枝被りを避けるために細かく移動したり、向きを変えるのも大変楽で、良いシーンに遭遇するチャンスも増え、結果良い写真が撮れる確率が上がります。

フィールドで持ち歩き、手持ちで野鳥撮影するための機材でしたらイチオシのレンズです。

一時期は人気があり過ぎて、納期が半年とか1年と言われていた絶大な人気を誇る500mm超望遠レンズです。とにかく500mmのレンズとしては小型軽量で、フィールドを歩き回って野鳥を撮影するスタイルの人には最適なレンズです。一度このレンズを持つと他のレンズを持つのが嫌になるほど軽量でコンパクトです。
逆光に弱いという弱点がありますが、概ね問題はないでしょう。ミラーレスとの相性も良く、手振れ補正も良く効きます。
価格がネックとなりますが、500mmF4E FLの半額以下です。

著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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