カメラ:Nikon Z50
レンズ:Nikon AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR
購入の経緯
家内が野鳥撮影にはまって3年になりました。
2017年にD5600のダブルズームキットの70-300ズームからはじめて、数ヵ月後には200-500ズームにステップアップし、週に2日もフィールドに出るほど野鳥撮影がすべてになってしまいました。そして2019年には単焦点500mmPFへステップアップ。もう誰も止められない勢いです。
(たかちゃんのトリトリ~:撮影機材の変遷)
私の影響から、野鳥撮影をしてみたいと言い出したときは、せっかく芽生えた野鳥撮影への思いを的確に受け止めるために、コンパクトカメラなどではなく、きちんとした一眼レフと望遠レンズの組み合わせをすすめたわけですが、それが見事にツボにはまったようで、今では私よりも積極的にフィールドに出て、私よりも野鳥を発見し、私より良い写真を撮るようになりました。D5600はその思いを受け止めるキャパシティがある大変良いカメラです。
最初は写真のことを何も知らなかった彼女に撮影テクニックを一から教えましたが、今ではオートフォーカスを使いこなし、構図を考えてシャッターを切るまでに成長しました。
しかし、3年経っても唯一超えられない壁がありました。露出補正です。
一眼レフの弱点
光学ファインダーの一眼レフは、タイムラグなく、被写体をそのまま投影しています。そのため、決定的瞬間を逃すことなくシャッターを押すことができます。それが一眼レフ最大の強みです。フォーカスが合っているかどうか、絞りによる被写界深度の深さ、背景のボケ、構図など、撮影のためのすべての情報をファインダーで確認することができます。ただ一つだけ、露出を除いて。
そうです。光学ファインダーは撮影するための他の情報がすべて直感的に分かるように作られていますが、唯一露出だけは撮影してみないと分からないという大きな欠点があるのです。これは一眼レフが発明されてから、フィルムの時代も、デジタルカメラになってからも、どうしても克服できない欠点であり、一眼レフの宿命です。
そのため、カメラマンたちは経験を積み、こういう場合は露出オーバーになりやすいとか、アンダーになりやすいということをあらかじめ予測し、露出補正を行って適正露出を得ようとします。長年経験している人はかなり的確に露出補正ができますが、経験が浅い人はなかなか適正露出を予想することができません。
カメラも進化して、さまざまな露出モードや測光モードが搭載されるようになりましたが、完璧なものはありません。さらに悪いことに、カメラ側が決める露出は、各カメラメーカーや、同じメーカーでも機種によって異なるため、カメラを替えると経験値が役にたたないこともあります。
暗い背景に立つダイサギや真っ白な曇り空を背景に飛ぶカラスに、はじめて渡された一眼レフで瞬時に露出を合わせられる人はいないでしょう。たとえプロカメラマンでも。しばらく使い込んで、測光モードなどの癖を読まないと無理なはずです。ペンタプリズムを利用した近代一眼レフが発明されてから70年間、カメラはめざましい発展を遂げますが、唯一露出の過不足が直感的に分からないという欠点は克服できませんでした。
家内も野鳥を撮りはじめて、練習によって枝の隙間の野鳥にピントを合わせたり、できるだけ手振れしないように構えたり、さらに構図まで気が回るようになりました。これらはすべてファインダーで見えているからです。
しかし、露出補正だけは直感的に分かりづらいようで、適切な補正量を決定できないでいました。デジタルカメラでは、白飛びは致命的で、ずいぶんと悔しい思いをしていました。補正が足りなかったり、過補正になったり、はたまたプラスマイナスを間違えたりします。
それは家内だけではなく、多くの人が思っていることでしょう。たとえプロでも露出補正の問題は常についてまわり、大失敗することもあります。撮影前に、撮ろうとしている被写体の露出が的確かどうか、ファインダーで見えないことが問題なのです。
トリトリの方々にはご理解いただけると思いますが、鳥の撮影チャンスは一瞬で、画像を確認して露出補正なんかしてると、もう鳥はいなくなっているものです。それで悔しい思いを経験された方も多いのではないでしょうか。
ミラーレス一眼の登場
ミラーレス一眼は新しい技術で、未だ発展途上の部分もありますが、上記一眼レフ最大の欠点である露出の問題を払拭した点を高く評価しています。
フォーカス、被写界深度、ボケ、構図はもちろん、一眼レフでは不可能だった露出の過不足やカラーバランスまで撮影前にファインダーで確認できるようになりました。これは画期的なことです。撮影者は、ファインダーで見えている通りの結果を得ることができるようになったのです。
まだまだタイムラグの問題やバッテリーの持ちの問題がありますが、時間の問題で克服されることでしょう。一眼レフのような撮影のたびにミラーを上下する機構もなくなるため、手振れも起きにくくなります。全体的に機械的な部品が減り、信頼性や耐久性も向上します。一眼レフユーザーとしては残念ですが、時間の問題で一眼レフは淘汰され、今後はミラーレス一眼の時代に移行して行くのでしょう。
Z 50
そんな折、ニコンから撮像素子が同社初のAPS-Cサイズ(ニコンはDXフォーマットと呼んでいる)のカメラが発表になりました。それがZ50です(正式名称はZ 50とスペースが入るようですが、文中で使うと変に見えるので、以下Z50と表記します)。野鳥やスポーツ写真を撮るカメラマンは一般的にフルサイズに興味はなく、より望遠効果が期待できるDXフォーマットを好む傾向があります。
さっそくニコンのショールームに見に行き、家内が求めている仕様はこれだ、と確信しました。露出がファインダーで確認でき、絞り優先モードで露出補正簡易設定にしておけば、ファインダーを覗きながらコマンドダイヤルを回すだけで補正ができてしまいます。撮ろうとしている鳥の露出がオーバーであれば、ファインダーでもオーバーに見え、アンダーであればファインダーでもアンダーに見えます。当たり前のようですが、今までの一眼レフでは不可能なことです。
ミラーレスでダイヤルを回して被写体の露出が適正になるように調整するのは、大変直感的なことです。今までのように鳥が白くて背景が暗いから飛ばないように-1.7に補正しようとか、背景が曇り空で鳥が黒っぽいから+1.3にしよう、などと考える必要がないのです。ファインダーを見ながらダイヤルを回して、撮りたい物の露出が適正に見えたところで止めるだけです。それでシャッターを押せばファインダーで見えている通りに撮れるのです。
レンズは最近のFマウントレンズであれば、アダプターFTZを装着すれば問題なく使用できます。
さっそく購入し、使わせてみましたが、予想は的中です。Z50をはじめて使った日から、今まであれほど苦労していた露出補正がほぼ完ぺきになりました。
70年以上続く一眼レフの歴史と比べると、まだ問題も残されていますが、撮影前にファインダーで画像を確認できるのは画期的で、比較的短期間で、一眼レフはミラーレスにとって代わることでしょう。一眼レフからミラーレスへの転換は、フィルムからセンサーに移行した事件と同レベルの歴史的転換点です。
個人的にはもうしばらく一眼レフを使い続けたいと思っていますが、今回家内のために購入したZ50を使ってみて、世間のミラーレスへの移行は予想よりも遥かに早く訪れることを確信しました。タイムラグやAF速度、バッテリーなどが改善され、一眼レフの方が優位なことがなくなってしまったら、一眼レフを使う意味はもはやなくなるでしょう。
設定
絞り優先モード(A)、ISO感度オート、スポット測光、露出補正簡易設定をオンにして使っています。Z50にはメインとサブの二つのコマンドダイアルがあるので、サブ(人差し指側)で絞りのコントロール、メイン(親指側)で露出補正ができるようになります。別のボタンを押しながら回したりする必要はなく、メインコマンドダイアルを回すだけで露出補正ができるところがミソです。そのため、ファインダーから目を離さず、覗いたまま簡単に調整できます。野鳥撮影時は、開放から1段位の範囲しか絞りは使わないので、サブコマンドダイアルはほとんど使いません。夕方になってきたり、暗い場所で開放にするとき位でしょう。そのため、人差し指はシャッター、親指は露出補正に役割分担でき、ファインダーを覗いたまま撮影に集中できるようになります。
作例
プロでも難しいシチュエーションです。背景の水面が暗く、純白のコサギが露出オーバーにならないように補正しなければなりません。Z50をはじめて使った彼女は、直感的に一発で適正露出に調整できていました。背景に引っ張られることなく、サギの白が飛ばないギリギリに補正しています。
同様に難しいシチュエーションです。画面の背景が暗く、ターゲットが小さいので露出が背景に引っ張られて露出オーバーになりがちです。 これも直感的に補正していました。
エナガも白と黒なので、なかなか適正露出にするのは難しく、白が飛ぶか黒がつぶれます。しかし、初日から適正露出に調整できるようで、後処理が大変楽になりました。
不満点
やはりAF速度には課題が残っています。一眼レフのようにシャッターを半押しにするとスッと合焦する感覚ではありません。場面にもよりますが、マニュアルでアシストしないとなかなかターゲットに合ってくれないこともあります。ミラーレスのAF速度に関しては、もう少し進化を待たなければならないようです。
しかし、最終的には撮像面のコントラストAFになるので、一度合焦するとその精度は高く、AF微調整の機能がないD5600と比べると、ワンランク上のレンズを使っているような、カリカリにピントが合った絵になります。レンズ固有のピントのばらつきなども吸収されるので安心感があります。
総評
何を撮るかによって評価が分かれると思いますが、今回は野鳥撮影で露出補正を直感的に行いたい、という目的でD5600からの移行なので、その目的には完璧に応えてくれました。もっとも、露出の過不足が撮影前に分かるのはZ50の特権ではなく、ミラーレスであればどの機種でもできることですが、Z50の良くできたファインダーと、コマンドダイアルだけで操作できる露出補正簡易設定の機能があるため、ファインダーを覗きながら、直感的に、かつ素早く正確に操作できるところが大変高く評価できます。
高感度耐性、発色などは、メーカーを信じてあまりきちんと評価していませんが、総じてD5600より進化していることでしょう。そういったスペック的な評価は別のサイトに委ねます。
激しいスポーツシーンや鳥の飛翔シーンを狙うには、まだまだ一眼レフに軍配が上がると思いますが、一般的な撮影では個人的には好印象です。特に露出補正でお悩みの方々にはおすすめできるカメラです。
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