Z 50の遊び方(その1)

ボディ:Nikon Z 50
レンズ:LEICA SUMMILUX-M 1:1.4/50、ELMARIT-M 1:2.8/24 ASPH.

わが家には、義理の父の形見のLEICA M6と、 SUMMILUX-M 1:1.4/50、ELMARIT-M 1:2.8/24 ASPH. の交換レンズが眠っていました。使わないともったいないと思いつつ、一眼レフでは使えないため、眠らせておくしかなかったのです。
今回、Z50を使ったところ、思いのほか写りがよく、これならLEICAレンズを復活させることができるのではないかと思い、LEICA MマウントからNikon Zマウントに変換するアダプターを買ってみました。
ミラーレス一眼は、そもそもフランジバック(レンズマウント面からセンサーまでの長さ:以下FB)が短いため、それよりもFBが長いレンズは基本的に使うことができます。中でも2018年に発表されたNikonの新しいZマウントはどのメーカーよりも大口径で、どのメーカーよりも FB が短い仕様となっています。この事実は、他のメーカー製レンズも含めて、世の中にあるほぼすべてのレンズは、マウントアダプターさえあれば、物理的にはZマウントに装着することができるということを意味しています(撮影できるかどうかは別の問題です)。

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マウントアダプター

カメラの歴史は百年以上ありますが、20世紀は35㎜判のフィルムカメラが普及し、さらに一眼レフが発明されてから飛躍的に進歩を遂げました。特に戦後は一眼レフ専用の優れたレンズが数多く生産されました。
21世紀になり、カメラはミラーレス一眼へと移行しはじめています。有名カメラメーカー各社も一眼レフからミラーレス一眼へ主力商品をシフトすることを余儀なくされています。
その際、同一メーカーの一眼レフ用レンズがミラーレスで使えないということはあってはならないので、どこのメーカーも一眼レフ用レンズを自社のミラーレスで使うための純正マウントアダプターを出しています。一眼レフ用レンズは FB が長いので、よほど特殊なレンズでない限り、自社のマウントアダプターを使えば使用可能なはずです。

各社のミラーレス一眼は FB が十数ミリから20ミリ程度なので、マウントの物理的形状さえ合えば、FBが40ミリ前後はある他社の一眼レフ用レンズさえ取り付けることができます。純正ではないので、マニュアルフォーカスで絞りもマニュアルで調整する必要がありますが、フィルム時代にマニュアルで撮影していた人には違和感なく使えることでしょう。ものによっては電気接点もコンバートし、AFや絞りも連動させられるものもあります。

さらに、ミラーレス一眼用レンズでも、長い FB のレンズを、短い FB のカメラに取り付けることが可能です。現在NikonのZマウントはFBが最も短いため、他社ミラーレス一眼用レンズさえもNikonZマウントカメラでは使える可能性があります。つまり、NikonZマウントカメラには、歴代の各社の一眼レフ用レンズ、 レンジファインダー用レンズ 、最新のミラーレス用レンズなど、今まで世の中に登場したほとんどのレンズを装着することができるということになります。

これは大変面白いことです。電気接点など、コンバートされないものもありますので、うまく撮れるかどうかは別問題ですが、古いレンズをマニュアルで使用すれば、概ね何とかなるでしょう。

そんな状況なので、ミラーレス一眼の登場以降、様々な組み合わせのマウントアダプターが続々と登場しています。これにより、愛着のあるレンズや味のあるオールドレンズなどを、最新の高画質なミラーレス一眼で復活させることができるようになりました。

使えないレンズ

比較的新しいレンズで、絞り環がなかったり、電気接点のコンバート機能がなかったりうまく行かないアダプターでは、絞りのコントロールができません。フォーカスリングも機械的な動作でなく電子的な仕組みのレンズは注意が必要です。フォーカスも絞りも使えないと、たとえうまく取り付けられたとしても、写真を撮ることはできません。

逆に、古いレンズで、機械的に動作するピントリングと絞りリングが付いているものでしたら、大抵は大丈夫でしょう。

いずれの組み合わせでも事前に確認する必要があります。使えなくても、もちろん、私は一切責任を持ちません。レンズ遊びは自己責任でするものです。

LEICA M マウントレンズ

ミラーレス一眼の時代になって、メーカーごちゃまぜで、ほとんどのレンズを装着できるようになりましたが、普段使う場合は、例えばNikonのレンズを持っている人はNikonのボディを買うでしょうし、Canonのレンズ資産がある人はCanonの ボディを買うのが自然でしょう。どうしてもCanonのレンズをNikonの ボディで使いたいとか、その逆もあまりないと思います。
大きな需要が考えられるのは、味のある名玉と言われているレンズや、描写が独特なオールドレンズなどで写真を撮りたい場合です。特にLEICAやZEISSなどのレンジファインダー用レンズは人気が高く、作品作りに使いたいという人が多いのです。しかし、これらのレンズは FBが30mm前後と短く、今まではFBが長い一眼レフでは物理的に使用不可能でした。それが、ミラーレス一眼の出現によって復活の兆しがみえてきたのです。特にNikonのZマウントは口径が55mmと大口径で、FBが16mmなので、次の表で分かる通り、マウントアダプターがあれば、CanonやSonyのミラーレス用レンズでさえ装着することが可能です(メーカー保証外なので自己責任でお願いします)。

マウントFB(mm)備考
Nikon Z16フルサイズ・APS-Cミラーレス共通
Canon RF20フルサイズミラーレス
Canon EF-M18APS-Cミラーレス
Sony FE、E18フルサイズ・APS-Cミラーレス共通
LEICA M27.8Mシリーズレンジファインダー用
CONTAX 32ZEISSレンジファインダー用

世の中おもしろいもので、最新の技術でカリカリに解像度が高いレンズを追い求める人もいれば、何十年も前のふわっと柔らかい描写のレンズで作品作りを楽しむ人もいます。後者の人にとっては今はすごく良い時代になりました。最新のボディによって、名玉と言われているレンズの描写を余すことなく記録することができるのです。

それらのレンズが作られた時代はフィルム時代であり、制約も多かったのですが、最新のミラーレスのボディによってより正確に、また、多彩な表現ができるようになりました。例えば、多少暗いレンズでも、高感度耐性が優れたボディを使うことによってそのレンズのポテンシャルを最大限に引き出すことも可能です。ボディによっては手振れ補正も付いていますので、ブレによる失敗も少なくなります。また、カラーモードを変えた様々な表現も可能ですし、白黒にすることもできます。

そんな需要から、マウントアダプターが雨後の竹の子のように登場しています。特にLEICAの人気は高く、LEICA Mマウントを各社ミラーレスのマウントに変換するマウントアダプターは必ずと言って良いほど存在しています。LEICA Mマウントのレンズは、レンズ側でマニュアルフォーカス、マニュアル絞りで使用することを前提に作られていますので、物理的なマウント変換だけでどこのメーカーのミラーレスでも基本的に使えます。

マウントアダプターには光学部品は何もなく、マウント径とFBを合わせるための素通しの筒なので、価格も多くは数千円で買えるものです。電気接点の変換まで対応しているものは高価ですが、オールドレンズは電気接点がないので、物理的な接続だけで済みます。

ただし、欲を言えばボディ側はフルサイズのミラーレス一眼が理想的です。35㎜判はライカ判とも呼ばれるように、ライカが規格化したものであり、ライカレンズは当然ライカ判用として設計されているので、フルサイズよりも小さいセンサーではすべてを記録できないことになります。
Z50はAPS-Cサイズのセンサーなので、フルサイズより一回り小さくなりますが、何とか許容範囲でしょう。むしろ、小型軽量で、気軽に使える点が有利になります。
以前、より小型のマイクロフォーサーズやNikon1で試したことがありますが、さすがに小さすぎ、LEICAレンズの良さが引き出せなかった思いがあります。

SHOTEN LM-NZ

LEICA MマウントをNikon Zマウントに変換するマウントアダプターです。光学部品はなく、電気接点の変換なども必要ありません。物理的なマウント変換に徹しています。価格は6千円ほどでした。
ZマウントはフルサイズもAPS-Cも共通なので、フルサイズのZ6やZ7にもそのまま使えます。

作りは大変良く、ボディ側もレンズ側もきっちりはまります。大変精度が良い加工がなされているようで、きつくて入らないとか、ガタがあるようなことは一切なく、双方のバヨネットとも、高精度でカチッとはまる感じです。

Nikon Z50 + LEICA SUMMILUX-M 1:1.4/50

まずは、SUMMILUX-M 1:1.4/50 を装着してみました。第三世代でフードが内蔵されているタイプです。LEICAレンズは明るさによって呼び名が変わり、F2はズミクロンと呼ばれます。それより一段明るくしたシリーズがズミルックスです。

焦点距離50mmを標準レンズとしたのもLEICAです。したがって、LEICAの50mmはZEISSのプラナーと共に、35㎜判カメラの歴史の中の原器のようになり、その後の世界中のカメラメーカーの標準レンズ設計に影響を与えています。

レンズ構成は、変形ガウスタイプと言って、絞りを挟んで前後が対称型となる配置です。ガウスタイプは最もオーソドックスなレンズ構成で、描写に癖がなく、ボケも美しいと言われています。

ちなみに、ガウスタイプと言われるレンズ構成はかの有名なガウスが発明したものではなく、1888年 にアルヴァン・クラークという人が、ガウスが発明した 凸凹 の色消しレンズを対象型に 凸凹 凹凸 に配置すると歪曲収差 が除去されることを発見したのが発端です。そのため、正確にはダブルガウスと言いますが、一般には単にガウスタイプと呼ばれています。当時はコンピュータもなく、シミュレーションもできなかったので、収差除去のために膨大な試行錯誤が行われたことと思われます。それを発展させ、製品として凸凸凹(絞)凹凸凸のガウスタイプを作り上げたのはZEISS社で、1895年のプラナーが最初です。その後さらに改良され、 LEICA のズミルックスの前身であるズマールが誕生します。今から125年も前の設計が未だに引き継がれているのは驚きです。現在は変形ガウスタイプと呼ばれ、さらに改良が加えられていますが、今回の SUMMILUX-M 1:1.4/50 もそんな歴史を感じさせれくれるレンズです。

SUMMILUX-M 1:1.4/50
ラテン語で、SUMMIは最高、LUXは光を意味します。

LEICAレンズは金属とガラスの塊で、単体でも重く、軽さを追求したZ50に装着すると大変アンバランスです。お世辞にも持ちやすいとは言えません。まあ、本家のLEICA M6ボディでも持ちやすいとは言えないので、Z50の深いグリップの恩恵で、むしろ救われている感はあります。

見た目はなかなか精悍な感じです。外筒はすべて金属の梨地仕上げで、見ただけで質感が伝わってきますし、触れるとタダモノではないことがひしひしと伝わってきます。ずっしりと重く、ピントリングは限りなくスムーズで、絞りリングの確実なクリック感など、職人がこだわりぬいて作ったことがよく分かります。それだけで、「こいつできるな」と思わせるオーラを発しています。

ボディ側の設定は、露出はマニュアルモードにして、感度をオートにすると使いやすいでしょう。絞りを変えると自動的に感度が変わってくれるので、ファインダーでは同じ明るさに見えながら、被写界深度だけが変動するのが分かります。これは今までにない感覚で大変新鮮です。
フォーカスピーキング表示にしておくと、ピントが合っている範囲のエッジが赤く表示されるので、マニュアルでのフォーカシングは思ったよりもやりやすく、Z50のファインダーのできの良さも相まって、気持ちよくピント合わせができます。最新のボディがオールドレンズの使い勝手をアシストしているような感じです。これは使えます。
ピーキング表示のまま絞りを開けたり絞ったりすると、ボケが変動するのとともに、赤く表示された合焦範囲がピンポイントになったり、前後に拡大されたりするのがファインダーで見えます。撮影するための情報としてこういったことが確認できるのは素晴らしいことです。一眼レフでも絞りプレビューで被写界深度は確認できましたが、光学ファインダーでは絞ると暗くなり、ほとんど見えなくなります。そこが大きな違いで、EVFがOVFに勝るところだと思います。

Nikon Z50 + LEICA SUMMILUX-M 1:1.4/50
絞り開放1.4 1/250 ISO 140
さすがズミルックスです。ピントが合っている目の周辺は
シャープで、その前後はグワッとボケます。
ガウスタイプなので、とろけるようなボケ方が特徴で、
美しいグラデーションを見せてくれます。
Z50で使うと35mm判換算で75mm相当となり、
ポートレート用に適した焦点距離になります。

最新のカメラセットではなく、こういった味のあるレンズを付けると何故か写真を撮る気が起きます。人間はわがままなもので、誰でも気軽に綺麗に撮れてしまう機器だとおもしろくないようです。LEICAのレンズを付けるだけで何か良い写真が撮れそうな錯覚に陥り、普段だったらカメラを向けないような被写体も撮って見たくなるのです。それが醍醐味であり、よいところなのかもしれません。LEICAのレンズを装着して町を歩くだけで、普段見慣れた風景も違って見えたりするから不思議です。たとえシャッターを切らなくても、このレンズで撮ったらどう写るんだろうなどと想像しながら歩くからワクワクするのでしょう。そのワクワク感を与えてくれるのがこういった名玉と言われるレンズたちなのです。

仕事では失敗が許されないカリカリの医療写真を撮っているので、たまにリセットしないといけません。手術室では、ストロボを使い、望遠マクロをF22や時にはF32まで絞って画面上すべてにピントが合っている写真を撮ります。ボケ味なんてくそくらえの世界です。背景が綺麗にボケていても誰も褒めてくれないどころか、情報の欠落とみなされます。
仕事を離れたら、時にはこういったレンズで芸術家になった錯覚に陥り、別の視点で世の中を見てみるのもよいものです。もちろん、絞り開放で。

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