ウルトラスティックのカーボンタイプ一脚(UC-STICK R60)

「三脚なんか使ったら野鳥撮影はできない」が持論なので、手持ち撮影にこだわっています。枝被りを回避するためにはカメラの位置を動かす必要があるので、三脚を使うとその動きができなくなります。
Z9+800mmF6.3の組み合わせではレンズとボディのシンクロVRによってDXフォーマットで1200mm相当ながら1/100sくらいまで手持ち撮影が可能になりました。しかし、暗い森の中や日没後の撮影ではもっとシャッター速度を落とすことがあります。そんなときは一脚の出番です。被写体ブレは防げませんが、一脚を使えば、1/20s程度のシャッター速度までブレずに撮影可能です。一脚は手持ちよりは制限されますが、カメラの位置は移動できるので、三脚よりは機動性が高くなります。シャッター速度を落とさなければならない場合のみ、他者に迷惑にならない範囲で使用します。

UC-STICK R60はストラップの付け根付近の台座までで、その上にマンフロットのゴム雲台+アルカスイス互換プレートを乗せています。

いままで画期的な一脚としてウルトラスティック BK7を使用していましたが、数年間使用していくつかの不具合が出てきました。ウルトラロックの機構は健在で使用には差し支えないのですが、ラバー部分が劣化したことと、内部の何かが外れたのか、途中で引っ掛かって完全に縮小できなくなりました。

以前、カーボンタイプが登場したと紹介しましたが、なぜかカーボンタイプ(315g)の方がアルミタイプ(267g)よりも重く、カタログスペックだけ見て躊躇していました。アルミよりカーボンの方が重いとは何事だと。しかし、耐荷重がカーボンタイプの方が優れていて、4kgとなっていることには少し魅力を感じていました。
今までのウルトラスティック BK7は耐荷重3kgでしたが、それにZ9+500mmF4+TC14E-II+FTZ−IIで計4.745kgを載せていたので、耐荷重を遥かに超えてかなり酷使していたことになります。力いっぱい捩じらないと使用中に縮んでしまうので、オーバーロードだったのでしょう。間違った使い方なのでおすすめしません。

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カーボンタイプ(UC-STICK R60)

今回カーボンタイプに買い替えてみた結果、カーボンタイプの方が圧倒的に使いやすいことが分かり、大満足しています。

カーボンタイプを使って最も違いを感じたのは、ウルトラロック機構の使い勝手です。アルミタイプよりも軽い力で効果的にロックされます。近年は三脚や一脚のカーボン化が進んでいますが、カーボン製品は基本的にカーボン繊維が含まれた樹脂ですから、アルミよりも摩擦係数が大きいのでしょう。アルミタイプでは確実にロックするためにはちょっと力をいれて捩じる必要がありますが、カーボンタイプでは軽い力で確実にロックされる印象で、捻ったときのギュッと締まる感触がまったく異なります。カーボンタイプの方が、ウルトラロック機構の完成形だと感じました。全体的な剛性感も高く、安心感があります。耐荷重が増えていることも納得できます。

瞬時に伸長して使い、瞬時に縮小できるというウルトラロックのすぐれた機構はそのままです。ここぞというときにサッと出して使って、使い終わったらすぐに仕舞うといった使い方に最適です。縮んだ状態からフルに伸ばすのに2秒程度、フルに伸びた状態から縮小するのも2秒程度です。
普段は手持ち撮影ですが、暗い藪や林の中、日没後の撮影などでちょっと使いたい時に簡単に伸ばせる一脚は大変重宝します。重さに関してはアルミタイプよりも48g重いだけなので、ほとんど気にする必要はないでしょう。アルミタイプよりも大きく、径も太いので、持った感覚はかえって軽く感じるくらいです。

耐荷重4kgもありがたい仕様向上です。現在はZ9に800mmF6.3で合計3725gなので耐荷重としては許容範囲です。ロック機構がアルミよりもカーボンの方が確実性を感じられ、実際に使用中に縮んだりすることもありません。全体的に剛性感が増したように感じます。

単に炭素繊維を含んだ樹脂なのですが、その織模様を見ているだけでワクワクします。

「カーボン」という単語を聞いただけでドキドキする理系男子(女子も)にはうってつけです。カーボン繊維の織りや表面の仕上げも美しく、完成度の高い製品です。最上部の台座もマグネシウム製で、軽量化にこだわっている様子が伺えます。理系人間は大抵、マグネシウムという単語にも萌えます。

ウルトラロック機構の一脚をお探しの方には、今でしたらカーボンタイプのUC-STICK R60がイチオシです。お店にサンプルがあれば両方を試して見られることをおすすめします。メーカーの説明ではまったく触れられていませんが、アルミとカーボンでロック機構の感覚や力加減、操作性が雲泥の差です。機構としては同じですが、操作した感覚は別物と感じました。カタログスペックだけではわからない、UC-STICK R60のすぐれた特徴だと思います。個人的には目から鱗でした。

雲台

台座から上は今までのウルトラスティックで使用していたマンフロットのゴム雲台とアルカスイス互換クランプとプレートをそのまま移植してあります。ゴム雲台は自由度が高く、一脚の雲台としては適度なテンションがあり、ピッチ、ヨー、ロールの動きをゴムが吸収してくれます。製造中止になってしまったのが惜しまれます。レンズを上に乗せるだけの使い方ですが、垂直振動のブレをキャンセルするだけの目的なので、これで十分目的を果たせます。

撮影例

Exposure Time : 1/20
F Number : 6.3
Exposure Program : Manual
ISO : 2000
Exposure Compensation : +1
Z9をDXフォーマットで使っているので、35mm判換算で1200mm相当となります。キビタキのような暗い森を好む野鳥は、開放F6.3でも感度が上がってしまいます。カレンダーなどでB4程度に伸ばす場合、ISO感度は2000以下になるようにシャッター速度を限界まで落として撮影します。このキビタキの撮影はシャッター速度を1/20sまで落とすとようやくISOが2000以下に降りてきてくれました。手持ち1/20sも頑張れば撮影可能ですが、歩留まりが悪くなるので、一脚を使用しました。
上の写真の部分拡大:ちょっとブレていましたが、1200mm相当の超望遠を1/20sのシャッター速度でここまで写せます。等倍に拡大してあらを探さない限り許容範囲です。感度を可能な限り低く抑えられると、ノイズが低減され、解像感がアップし、諧調が豊かになります。Z9の高感度耐性はあまり優れているとは言えないレベルなので、ISO 2000以下、できれば1000以下になるように心がけています。

ISO 2000以下であれば高感度ノイズもそれほど発生しないので、B4程度でも耐えられます。レンズととボディのシンクロVRでさらに一脚を使用すると1/20sでも被写体さえ動かなければ何とか撮影できます。

Exposure Time : 1/13
F Number : 6.3
Exposure Program : Manual
ISO : 1400
Exposure Compensation : +1
1280×1280の切り出し。一脚を有効に使うと一昔前では考えられなかった設定で撮影ができてしまいます。これも腕ではなく、100%機材の進化の恩恵にあずかっているだけですが、撮影の幅が大幅に広がりました。

このEXIFデータから推測できますが、日没後の暗い森で、開放F6.3、シャッター速度1/13sにしてようやくISOが1400になるほどの暗さです。当然1200mm相当のレンズを1/13sで手持ち撮影は無理があるので、そんな時は一脚の出番です。ヒタキ類は比較的落ち着いた動きなので、1/13sでも被写体ブレしないタイミングを狙えば撮影可能です。


UC-STICK R60
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普段は手持ち撮影で、必要な時だけ一脚を使う人にはイチオシの一脚 UC-STICK R60です。
2秒で伸ばして、2秒でたためるのは本当です。野鳥撮影は時間が勝負なので、サッと伸ばして使えないとチャンスを逃してしまいます。練習すれば1秒ちょっとで伸展できると思います。上下のブレ防止が目的なので、台座の上はレンズが乗せられるスポンジなどを工夫して設置するだけで使えると思います。
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個人的にはアルカスイスのクランプを取り付け、アルカスイスのプレートにスポンジゴムを貼ってその上にレンズを乗せるだけで使っています。乗せるだけなので、それも1秒で乗せられます。一脚伸ばしてロックしてレンズ乗せて撮影準備ができるまで、数秒ですみます。
動画撮影などで使うときは、アルカスイス互換にしておくとプレートを外してクランプでカメラを固定することもできます。
著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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