2022年に、とにかく形が気に入っただけで、書けないペンをイタリアから取り寄せて家内にあきれかえられたことを書きました。
マットコート紙
その後色々と紙を試行錯誤した結果、マットコート紙には大変良く書けることが判明しました。しかし、高価な紙なので、マットコート紙のメモ帳などは市販されていません。色々と探してみたところ、はがきサイズに断裁したマットコート紙が売られているのを見つけました。これなら卓上で使うメモとして丁度良い大きさです。ようやく日の目をみることができました。両面マットコートなので、両面使えます。
エテルグラフのメリット
ようやく書ける環境が整ったので、あらためてエテルグラフのメリットを考えてみました。
半永久的に使用可能
ペンの先端は硬い金属のチップで、それを紙の上をこすると黒い(実際はグレーと言った方が良い薄い黒)筆跡が残ります。酸化作用との説明ですが、その機序はよくわかりません。しかし、確かに書けます。
全く減らないということはないと思いますが、減りは大変少ないので、かなりの長期間使用可能だと思います。一生かけても使いきれるかどうかわからないくらいの減り方です。
まあ半永久的と言ってもそれほどオーバーではないでしょう。
インクが切れたり補充する必要がない
使おうと思ったらインクが切れていたとか、乾いていた、詰まっていたなどの筆記具にありがちなトラブルは皆無です。いついかなる時でも使えます。
インクが乾くのを待つ必要がない
万年筆もボールペンも、筆記直後はインクがまだ液状なので、乾く前に触れるとこすれたりします。エテルグラフはインクは使わないので、筆記直後に触ってもこすれたりすることはありません。
自分は右利きですが、左利きの人の悩みである、ペンやボールペンの字がこすれてしまう現象は起きません。これは左利きの人には朗報かもしれません。
他のものにインクが付く心配がない
紙にこすらないと書けないので、洋服の生地やテーブルなどに書けてしまうことがありません。そのため、キャップなども必要なく、そのまま持ち歩いても衣服を汚したりする心配もありません。
裏うつりしない
紙の表面が変色するだけで、インクが染み込んだりしないため、裏写りはしません。マットコート紙90kgでも裏に書いた文字は透かさない限り見えません。
軽く書ける
メーカーの説明では、特殊な金属の酸化作用によって紙に筆跡を残すといった説明がされていますが、確かに紙との摩擦で削った粉を付けているという感覚ではなく、紙の上をすべらせると筆跡が残る不思議な感覚です。下が柔らかいと筆圧によって沈み込んだ分太さは変わりますが、濃度は変わらないようです。
重ね書き
紙が濡れないため、紙の変形や変性がないので、重ね書きしても問題ありません。
消えない
鉛筆とは異なり、削った粉を付着させているわけではないので、消しゴムなどで消すことはできません。
エテルグラフのデメリット
紙を選ぶ
これが一番の問題点です。通常のメモ帳やコピー用紙の裏紙など、普通紙や上質紙にはほとんど書けません。紙質によっては全く書けません。
酸化作用なのか何なのか分かりませんが、今まで試した中で最も効率よく筆記できたのがマットコート紙でした。
筆跡がうすい
マットコート紙には書けることがわかりましたが、筆跡はかなり薄く、黒と言うよりも薄いグレーのような筆跡です。10Hの鉛筆と言ったようなイメージでしょうか。
懸案事項
経年変化と耐候性
耐候性は不明です。2年ほど使用していますが、筆跡が消えるなどといった問題は発生していません。ただし、それが10年持つのか、20年経つとどうなるのか、温度、紫外線などの影響など、経年変化や耐候性はまったく未知です。
水に対しては強く、記述した紙を水没させても筆跡が消えたり滲んだりすることはありません。
サインに使えるのか
紙さえマッチすれば筆記に問題はありませんが、公式なサインなどで使えるのかどうか分かりません。消せないので、改ざんは難しいと思いますが、契約書などで筆記具として認められるのかどうか微妙です。
総評
書ける紙が見つかりましたが、「筆記具としておすすめか」と聞かれたら、「うーん、微妙」と答えるでしょう。
あまりに形が気に入ったのでイタリアから取り寄せましたが、到着して最初に試し書きしたときは騙されたかと思いました。その後、どうやら紙を選ぶことがわかってきて、試行錯誤してマットコート紙にたどり着きました。そんな説明はどこにも書かれていません。マットコート紙を使っても、上記のようなメリット・デメリットがあります。万人におすすめできる筆記具ではありません。あまりにコストパフォーマンスが悪すぎます。
普通とは異なるこだわりやデメリットを楽しめるような文房具フリークにのみおすすめできる筆記具なのかもしれません。もちろん、自分は満足しています。
何よりチタンで作られた網目構造があまりに素敵すぎて、個人的にはそれだけで全て許せてしまいます。