Nikon Z9:ファームウェア Ver. 5.xx

2024年3月13日、いよいよZ9のファームウェアVer. 5.00がリリースされました。2021年末のZ9登場時のキャッチフレーズがUnstoppableでしたが、そのフレーズ通り、2年以上経った今でも他の追随を許さないNikonのフラグシップとしての進化を続けています。

一眼レフ時代はどんなに高性能なフラグシップであろうと、生まれた瞬間から古くなる運命でした。ところが、ミラーレスの時代に突入すると、カメラの性能はソフトウェアに依存するウェイトが多くなります。Z9やZ8などのようにメカニカルな機構を極力排除されたカメラはなおさらです。

特にAIの機械学習を取り入れた被写体検出などは純粋にソフトウェアによる動作であり、その出来がAFの精度や速度に大きく影響します。

Z9も初期の頃はお世辞にも野鳥撮影に向いているとは思えない動作でしたが、Ver. 3辺りから目覚ましい進化を遂げ、Ver. 4.10の被写体検出の鳥の追加辺りから、野鳥撮影カメラとしてはほぼ不満がない状態まで進化してきました。

未来を見据えた当初の設計が素晴らしく、CPUに余裕があったということでしょう。どこまでUnstoppableが続くのか未知数ですが、CPUの限界まで進化が続くものと思われます。ファームアップは無料ですから、時代に合わせたファームアップによる機能向上は大変ユーザーフレンドリーであり、歓迎される方式です。

ファームウェア Ver. 5.00(2024年3月13日)

今回はVer. 4.10から5.00のメジャーアップデートなので、より大きな進化を遂げているものとして期待されます。早速バージョンアップを行ってテストしてきました。
なお、Ver. 5.00は様々な機能の追加がありますが、自分の仕事は医療撮影と野鳥撮影がメインです。医療写真はお見せできるものではないので、フィールドでの野鳥撮影に絞ってのレビューとなります。

公式ウェブサイトの変更点を読むと、多くの機能追加がなされています。その多くは、おそらくパリ五輪のスポーツ写真に向けた機能向上がメインのように見受けられます。素晴らしい進化をしていると思いますが、自分は専門外なので、その評価はスポーツ写真専門の方々にお任せします。

AFに関してはバグフィックス程度のようです。鳥に対する検出率や追従性などに対する言及はされていません。しかし、今までの経験上、記載がなくてもファームアップによって被写体検出能力が進化もしくは退化している可能性もあるので、身近な野鳥でテストをしてみました。

アオジ

従来通り目の検出も追従も問題なく行われます。

メジロ

今までメジロの目の検出に難があると感じていましたが、改善されているように思います。あんなに目が目立つのになぜかピントが甘いことが多かったのですが合焦率が上がったようです。動きに対する追従性も良く、せわしなく動き回るメジロを高確率で追いかけている様子が分かります。

キセキレイ

キセキレイも問題なく検出・追従します。

ジョウビタキ

大好きなジョウビタキです。以前から検出には問題ありませんが、Ver. 5.00でも問題ありません。鳥モードでは確実に鳥として認識され、ほぼハズレなく目を検出してくれます。ピント精度も高く、目の周囲の羽毛に精度高く合焦しています。目が見えている間は、たとえ前後に枝があっても、前景がかぶっていても、ピントを奪われることはほとんどありません。

ヤマガラ

エゴの実を割るために激しく頭を上下に動かしていますが、かなりの確率で目を検出し、かつ追従しているのが分かります。ほぼ正面から撮影して、目があまり見えない状況でもしっかりと目を検出しているところが見事です。

シロハラ

上記ファインダーログ通り、シロハラの検出があまりよくなく、誤検出が多く見受けられました。人が見たところでは、他の鳥よりも分かりやすい形状だと思いますが、そのあたりは機械学習特有の複雑な事情があるのでしょう。改善の余地がまだまだあると思いました。

アオサギ

アップすぎるからなのか、アオサギもあまり検出率が良くありません。全体像はもっと検出するのかもしれませんが、頭部のみでは背景抜けが頻繁に起きます。マニュアルフォーカスでアシストして目を検出させると追従するようになりますが、何かをきっかけにまた背景抜けしてしまうことがあります。また、頭部と背が見えている状態で目が見えなくなると背を鳥として誤検出していました。改善の余地があると感じました。

上の例は頭部アップのため誤検出が多かったのかと思い、後日ひきで体全体が入るような距離で撮影してみました。

全体をいれてもアオサギの検出はあまりよろしくないようです。一度目を検出しても、障害物で隠されると誤検出状態になり、なかなか目を検出した状態に戻ってくれません。
鳥の角度や背景などにもよるのかもしれませんが、他の野鳥の高精度の検出率と比較してかなりよろしくない状況のように思えます。

Ver. 5.00ではAFの向上はうたっていませんが、まだ改善の余地があると感じています。

キビタキ

キビタキの季節になりましたので、キビタキで被写体検出テストをしてきました。 キビタキの頭部は黒い羽毛に覆われており、その中に黒い目があるので目の検出は困難と思いますが、こちらを向いて目が見えている場合は難なく目を検出してフォーカスポイントを絞り込んでくれます。 後ろを向いて目が見えない場合でも以前のように前後に探しに行ったりせず、目をロストした付近にフォーカスポイントがとどまるため、再び目が見えた時にすぐに検出されます。 暗い状況でも良く検出されるので、好印象です。

最短撮影距離近傍(NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S)

ロクロクサンの最短撮影距離4mまで1歩ずつ近づいてみました。最後の距離は一度フォーカスポイント枠が赤くなってから緑に変わる位置まで下がって撮影したもので、ほぼ最短撮影距離での撮影です。
AFの追従性もピント精度も良好です。

総評

野鳥をターゲットとしたAFに関しては、Ver. 4.10でかなり良くなっていたので、今バージョンで劇的に進化したという印象はありません。若干食いつきが良くなった気がしますが、気のせいかもしれません。Nikonからもアナウンスは何もないように、大幅な変更などはないようです。これは悪い意味ではなく、今までと遜色なく良い状態が保持されているという意味です。

少なくともアルゴリズムの変更などで改悪になっていることはないので安心しました。多くの野鳥では、後ろを向いたり、枝に隠れたりして目が検出できない状況でも、無駄に前後に探しに行ってロストしてしまうこともなく、目が見えた瞬間にフォーカスポイントが復帰するような動きは健在です。
AF精度も高く、最短撮影距離近傍でもAF動作は良好です。

大変せわしなく動き回るメジロを追いかけてみましたが、AFの追従性は良くなっているようにも感じます。シチュエーションによるものかもしれませんが、AF動作は良好です。

一方、シロハラやアオサギのように、人が見ると明らかに標準的な鳥の体形で目も分かりやすい野鳥での誤検出も見受けられました。鳥種によってばらつきがあるようで、まだまだ機械学習による進化の余地はありそうです。次回のバージョンアップに期待しています。

飛翔写真など動的な被写体に対する進化はわかりませんが、このレベルになると、客観的な評価は困難です。いつかレポートします。

ご注意

公式ページには次のように書かれています。

・静止画モードと動画モード各々で撮影モードを設定可能にしました。
※ ファームウェアのバージョンアップ直後は、撮影メニュー[A]~[D]の撮影モードがすべて P に設定されています。

Ver. 5.00にアップグレードすると、撮影メニューの撮影モードがすべてPになります。A、S、Mなどで使用されていた方々は設定をし直す必要があります。自分はよく読んでいなかったため、マニュアル操作が効かないことで気づきました。

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野鳥撮影にも最強のパフォーマンスを発揮するミラーレスフラグシップです。被写体検出機能で野鳥も認識して目にフォーカスを合わせてくれます。本格的に野鳥撮影をする方にはおすすめです。
FTZ-IIを介して今までのFマウントの超望遠レンズも問題なく使えます。ZマウントのNIKKOR Z 800mm f/6.3 VR Sとの組み合わせは5.5段のVRが効き、800mm(DXで1200mm)ながら手持ち撮影が可能になります。


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Nikon Z9の縦位置グリップをなくして小型軽量化を実現したカメラです。
Z9の機能をほぼそのまま継承しているので、野鳥撮影にも最適です。もちろん、鳥を認識して目にフォーカスを合わせてくれます。縦位置を多用しない方にはおすすめです。
重さもZ9の1340gからZ8は910gと軽量化されています。フィールドで持ち歩くには最適で、女性にもおすすめです。
特に小型軽量のロクロクサンことNIKKOR Z 600mm f/6.3 VR Sとの組み合わせは野鳥撮影セットとしてイチオシです。

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位相フレネルレンズ採用の通称ロクロクサンと呼ばれる600mmF6.3の単焦点レンズです。
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DXフォーマットで使用すると900mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで840mmF9、1200mmF13、DXで1260mmF9相当、1680mmF13相当となります。
最短撮影距離が4mなので、野鳥が近い公園などでは有利となります。

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位相フレネルレンズ採用の通称ハチロクサンと呼ばれる800mmF6.3の単焦点レンズです。
800mmの超望遠レンズとしては驚くほど小型軽量で、全長385mm、重量2385gしかありません。レンズ単体で5段分、Z9やZ8との組み合わせでは、シンクロVR機構によって5.5段のVRにより、手持ち撮影が可能です。
DXフォーマットで使用すると1200mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで1120mmF9、1600mmF13、DXで1680mmF9相当、2400mmF13相当となります。 最短撮影距離が5mあります。野鳥が遠い公園や小型の野鳥を大きく写したいときに有利となります。
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著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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