Nikon Z9+NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S+Z TELECONVERTER TC-1.4x:レビュー:野鳥撮影

総論で書いたように、旧人類はテレコンバーター(以下テレコン)に対してあまり良い印象を持っていませんでした。しかし、仕事で強拡大する必要があり、Z TELECONVERTER TC-2.0x(以下TC-2.0)を試したところ思いのほか劣化が少なく、仕事でも閊えるレベルであると感じました。

野鳥撮影のメインレンズはハチロクサンことNIKKOR Z 800mm f/6.3 VR Sですが、状況によっては800mmでも焦点距離が足りないことがよくあります。小型な野鳥であったり、警戒心が強く、あまり近寄れない場合です。DXフォーマットで使用しているので、実際の画角は35mm判換算1200mm相当です。それでもまだ足りないのです。贅沢な悩みです。

B4サイズの印刷は仕事でよく使うので、Z9のDX以上のクロップはできません。焦点距離もZレンズでは800mmが最長焦点距離で、これ以上長い焦点距離は現時点ではありません。そうなると、唯一の解決策はテレコンしか残されていないのです。
現在、NikonのZマウントには、1.4倍と2倍のテレコンが販売されています。どちらも非球面レンズを組み込み、「テレコンバーター使用時に気になりやすい各種収差の発生を最小限に抑えながら、主レンズの高い光学性能を活かす光学設計を追求しました」とあるので、昔のテレコンとは一線を画する自信作だということなのでしょう。

TC-2.0は以前レポートした通り、画質劣化も少なく、好印象だったのですが、ハチロクサンで使用するとF値が13になってしまうため、少し暗くなると野鳥撮影には意外と厳しいことが分かりました。

今回はハチロクサンにZ TELECONVERTER TC-1.4x(以下TC-1.4)を装着した際の使用感をレポートします。

倍率比較

焦点距離を1.4倍にするので、単純に800mmが1120mmになります。DXフォーマットで使用すると、35mm判換算で1680mm相当の画角となります。野鳥撮影時は、概ねDXフォーマットで撮影しているので、1200mmから1680mmへの変化です。
使ってみると意外と変化が大きく、野鳥がぐっと引き寄せられて迫力が増します。

ただし、喜んでばかりもいられません。レンズの口径は変わらないので、当然のことながらF値は6.3から9になってしまいます。あわせてZ9(Z8も同様)はお世辞にも高感度耐性があるとは言えず、自分の基準ではISO 2000を上限としています。できればISO 1000以下に抑えたいところです。

F6.3でも暗めですから、F9になると撮影可能時間が制限されます。また、晴天日中でも日陰や森の中、藪の中などの撮影はかなり困難になることは否めません。

置物

まずはいつもの置物でテスト撮影をしてみました。

NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S+Z TELECONVERTER TC-1.4x

上は左からハチロクサン単体、TC-1.4装着、TC-2.0装着の撮影例です。すべてDXフォーマットなので、換算1200mm、1680mm、2400mmです。無加工、ノートリミングで、長辺1280ドットに縮小しています。ターゲットはいつものお気に入りのジョウビタキの置物です。

倍率だけを見るとTC-2.0の迫力が圧倒的ですが、F値が13になってしまうことを忘れてはなりません。一眼レフ時代はファインダーが暗くなりましたが、ミラーレスになるとF値が暗いレンズをつけてもファインダーが暗くならないので、ともすると騙されてしまいますが、確実に暗くなっています。2段暗くなるということは、シャッター速度を2段遅くするか、2段感度を上げないと同じ露出になりません。
Z9では感度は上げたくないので、必然的にシャッター速度を遅くする必要があり、手振れや被写体ブレとの戦いになります。

晴天日陰で十分な明るさがありましたので、すべて手持ちでの撮影です。上の画像は各画像の頭部周辺1280ピクセル角の切り出しサンプルです。昔のテレコンとは比較にならないほど高画質が維持されています。ベースレンズのできのよさと、非球面レンズを使ったこだわりのテレコンの恩恵なのでしょう。

TC-2.0では1/60sになってしまいましたが、置物では被写体ブレがないので、VRに助けられて何とかブレずに撮影できます。実際の野鳥ではよりハードルが高くなります。

野鳥

コサギ

NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S+Z TELECONVERTER TC-1.4x

800mm単体、テレコン1.4倍、2倍の比較です。

カワセミ

NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S+Z TELECONVERTER TC-1.4x

ちょっと焦点距離が足りないというときにテレコンは有用です。
しかし、レンズが遠位方向に飛び出した独特の形状は大変扱いにくく、フィールドで気軽に扱える代物ではありません。今回はテスト撮影として単体、1.4倍、2倍テレコンを付け替えながら撮影しましたが、大変気を使いました。できればフィールドでは行いたくない作業です。実際に使うとすると、落ち着いた室内で取り付けて、フィールドではつけっぱなしになると思います。やるとしても、暗くなって取り外す作業くらいにとどめたいところです。

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NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S



テレコン TC-1.4x



テレコン TC-2.0x

NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S+Z TELECONVERTER TC-1.4x:野鳥撮影サンプル

ハチロクサンに1.4倍テレコンをつけた作例です。
すべてDXフォーマットノートリミングなので、35mm判換算1680mm相当の画角です。

上の画像の頭部1280ピクセル角切り出し

AFは問題なく動作し、特に遅くなったと感じることはありませんでした。精度も問題ありません。自己基準としている目の周りのツブ状の羽毛部位も問題なく解像しています。

VRはがんばってくれていますが、F値が暗くなり、シャッター速度が遅くなって限界を超えると、急に歩留まりが悪くなる印象です。
焦点距離が伸びたうえ、暗くなってシャッター速度も遅くなるので当然ではありますが、ミラーレスのファインダーは露出さえ合えば明るく見えてしまうのが注意すべき点です。いくら優秀なVRがあっても、単体の手持ち限界シャッター速度の半分程度で考えておいた方が良いでしょう。

総評

はたして、昔のテレコンの悪いイメージは見事に払拭されました。光学的な性能は、十分仕事に使えるレベルです。

ただし、「十分な光量がある環境下で」という条件付きです。
単体の6.3でも暗めなので、1段暗くなってF9になるのは、やはり野鳥撮影においては大きなハンデとなります。

晴天日中の明るい環境では問題なく撮影できますが、少しでも暗くなるとすぐに撮影困難となります。曇天や日陰、晴天日中でも暗い森などでも急に撮影が難しくなります。高感度耐性がもっと良いボディであればもう少し暗い環境でも撮影可能でしょうが、Z9、Z8ではできるだけ感度を低く抑えたいので、撮影可能な状況はかなり限られます。
少しでも暗いシチュエーションで、シャッター速度を遅くするとブレとの戦いを強いられることになります。さすがにボディとレンズのシンクロVRでも限界があります。拡大される分、手振れのみならず、被写体ブレも拡大されるので、野鳥撮影などではレンズ単体よりもブレる確率は高くなります。
光学的には素晴らしい出来であっても、その他の要因でフィールドでの撮影が制限されてしまうといった印象です。特に私のように夕方から活動するダメな野鳥写真家には使える時間がかなり限られてしまいます。

また、1.4倍も2倍もテレコンは特異的な形状をしています。ボディ側はフラットですが、マスターレンズ側はレンズが筒状に大きく飛び出した形状です。大変持ちにくく、扱いが極めて困難な形状です。キャップを外したらどこにも置けないような形状です。テレコンの着脱は、フィールドでは基本的に行いたくない作業です。
現場で「ちょっと焦点距離が足りないから取り付ける」とか「暗いから取り外す」といったように気軽に着脱できるものではありません。ちょっと大げさかもしれませんが、フィールドでの着脱にはそれなりの覚悟が必要です。

自分の場合は、明るい環境で、予め撮影距離が離れていることが分かっている場合は事前に取り付けて行き、フィールドでは付けっぱなしの運用になります。

光学的に焦点距離を延長するので、トリミングによる拡大よりも明らかに画質は良くなりますが、F値が暗くなり、感度を上げずにシャッター速度でコントロールすると手振れと被写体ブレとの戦いになります。検討される方は、テレコンの特性を十分に加味して使い分けることをおすすめします。

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Nikon Z 9 ボディ

野鳥撮影にも最強のパフォーマンスを発揮するミラーレスフラグシップです。被写体検出機能で野鳥も認識して目にフォーカスを合わせてくれます。本格的に野鳥撮影をする方にはおすすめです。
FTZ-IIを介して今までのFマウントの超望遠レンズも問題なく使えます。ZマウントのNIKKOR Z 800mm f/6.3 VR Sとの組み合わせは5.5段のVRが効き、800mm(DXで1200mm)ながら手持ち撮影が可能になります。




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Nikon Z 8 ボディ

Nikon Z9の縦位置グリップをなくして小型軽量化を実現したカメラです。
Z9の機能をほぼそのまま継承しているので、野鳥撮影にも最適です。もちろん、鳥を認識して目にフォーカスを合わせてくれます。縦位置を多用しない方にはおすすめです。
重さもZ9の1340gからZ8は910gと軽量化されています。フィールドで持ち歩くには最適で、女性にもおすすめです。
特に小型軽量のロクロクサンことNIKKOR Z 600mm f/6.3 VR Sとの組み合わせは野鳥撮影セットとしてイチオシです。




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位相フレネルレンズ採用の通称ロクロクサンと呼ばれる600mmF6.3の単焦点レンズです。
全長278mm、重量1470gで、600mmの焦点距離からは想像できないほど小型軽量です。レンズ単体で5.5段、Z9やZ8との組み合わせではシンクロVR機構によって6段分のVRにより、手持ち撮影が可能です。
DXフォーマットで使用すると900mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで840mmF9、1200mmF13、DXで1260mmF9相当、1680mmF13相当となります。
最短撮影距離が4mなので、野鳥が近い公園などでは有利となります。




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NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S

位相フレネルレンズ採用の通称ハチロクサンと呼ばれる800mmF6.3の単焦点レンズです。
800mmの超望遠レンズとしては驚くほど小型軽量で、全長385mm、重量2385gしかありません。レンズ単体で5段分、Z9やZ8との組み合わせでは、シンクロVR機構によって5.5段のVRにより、手持ち撮影が可能です。
DXフォーマットで使用すると1200mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで1120mmF9、1600mmF13、DXで1680mmF9相当、2400mmF13相当となります。
最短撮影距離が5mあります。野鳥が遠い公園や小型の野鳥を大きく写したいときに有利となります。

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