Nikon Z9が発表され、メカニカルシャッターレス仕様であったことが世界に衝撃を与えました。ミラーレスの上、メカニカルシャッターもなくなり、ブレの軽減とともに、完全な無音撮影が可能となりました。
レンズ交換できるフルサイズのカメラでメカニカルシャッターを排除したのはNikon Z9が世界初のようです。 今まで電子シャッターの性能上の問題(ローリングシャッター歪み等)で実現できなかったのです。
そもそもコンパクトカメラやスマートフォンなどは以前からミラーレスであり、メカニカルシャッターレスであり、完全無音撮影が可能ですが、特にスマートフォンでは盗撮を防止するために、電子シャッター音を必ず出す仕様になっています。簡単に設定を変えられては意味がないので、基本的に設定画面などではシャッター音を解除できない仕様になっています。
カメラは撮影のための道具であり、カメラの格好をしたものをどこかに向けていればその方向のものを撮影していることが明らかなので、特に無音撮影を規制するような動きはありません。むしろ今まで一眼レフなどではシャッター音をなくすことができないためにカメラが使えなかった場所もたくさんあり、その足枷が取れるということで、完全無音撮影ができる仕様は歓迎されます。今まで技術的に困難だっただけで、完全無音撮影ができると撮影できるシチュエーションが大幅に増えることになります。
たとえば、競技で選手が全神経を集中している時など、シャッター音による選手への影響を配慮して静止画の連射などは自粛されていました。また、クラシックコンサートやセミナー会場など、静粛性が重視れる環境など、今までは撮影不能であった場所でも依頼があればプロカメラマンによる完全無音撮影が可能になります。
電子シャッター音
せっかく完全無音化できたのに、Nikon Z9には電子的なシャッター音を発生する機能があります。しかも、音質や音量も細かく設定できるようになっています。「スピーカーからインチキのシャッター音を出すなんて意味ないじゃん」、とか、「何だか子供だましみたい」、と批判的な声も多く聞きますが、カメラのシャッターの音は実は結構重要な役割を担っています。Nikonはそのことを重々承知なので、こんなところにもこだわってユーザーが細かく設定できるようにしてあるのです。
せっかく完全無音化できたのに、なぜシャッター音を出す必要があるのでしょうか。
女優さんやモデルさんのため
シャッター音が必要な状況はよく言われているように、モデルさんを使った撮影のときです。プロのモデルさんを使った撮影をしたことがないと分りにくいと思いますが、モデルさんたちはカメラマンの撮影テンポに合わせて様々なポーズをしたり、表情を変えたりします。そのタイミングがシャッター音なのです。完全無音撮影ではモデルさんもいつ撮影されたのかわからず、ポーズや表情を変えるタイミングがわからなくなります。そのため、シャッター音は必需品です。
撮られ馴れた優秀な女優さんやモデルさんは、こちらが何も注文を出さなくても、シャッター音のタイミングで次々とポーズをとってくれるので撮影側も非常に楽です。特に優秀な方はポーズや表情の引き出しが多く、こちらが圧倒されるくらい次々と美しい姿を披露してくれます。彼女たちはプロ意識も高く、自分を美しく魅せるために日々研究しているので、自分が現在どういう表情をしていて、どういう風に写っているかがわかっています。
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良いモデルさん
シャッター音とともにどんどん新しい表情が出てくるので、それに応えるようにこちらもミスが無いようにアングルや画角、構図などを変えながら追従します。カメラマンとモデルさんのキャッチボールであったり、時には戦いのような感じです。双方がプロ意識を持って戦い、それがシンクロすると素晴らしい作品が生まれます。その時のカメラマンとモデルさんの共通言語がシャッター音なのです。
最初に「明るい雰囲気で」とか「物憂げな感じで」などとお願いすると希望通りの表情をしてくれます。さすがプロ!驚きます。
モデルじゃないけど
本職は獣医療系撮影が多いのですが、その際もシャッター音が必要と感じています。手術シーンなどの術創は撮影困難なポジションであることも多く、時間が勝負なのですが術式はどんどん進んでしまいます。そんな中、これも撮られなれた術者は、必要な写真のイメージができているので、ポイントポイントで一瞬撮りやすいように手を止めてくれることがあります。そのタイミングで撮影するのですが、そのときも撮った瞬間がわからないと術者もいつまで保持していいかわからないので、シャッター音は必須です。この場合も術者と臓器がモデルさんと同じ役割であり、シャッター音が次々とポーズを変えるタイミングになります。
時には術式の教科書を作るために手術手技をコマ送りのように撮影することがありますが、そんな場合も術者にシャッター音を聞かせると、何も言わなくても術者はタイミングよく一連の動作をしてくれます。
自分のため?
撮る側のカメラマンもカッコいいシャッター音じゃないと撮る気がしないという人もいるようで、そのためにも電子音で音質や音量を設定できるようになっているのでしょう。人によっては自分のテンションを上げるために必要なようです。
車メーカーがドアの開閉音にこだわるのと同様、カメラメーカーも昔からシャッター音にはこだわっていました。特にNikonの一眼レフ時代のシャッター音は人気が高く、「これがカメラの音だ!」というシャッター音の代名詞のように思われていたようです。ミラーが跳ね上がり、シャッターが開閉し、ミラーが戻るという動作が一瞬のうちに行われ、それらが複合的に絡み合った音です。その後にモータードライブがフィルムを巻き上げる音が続きます。結構騒がしい音です。
デジタル時代になって、モータードライブの音はなくなりましたが、フィルムがなくなったおかげで高速連写ができるようになりました。それが快感だと感じる人も多く、マシンガンのような連写音にこだわる人が多いようです。「セーラー服と機関銃」世代の人はその気持ちを理解できます。
どんな音が望ましいのか
本来無音のカメラなので、シャッター音を出すときは電子音をスピーカーから出しています。そのため、基本的にはどんな音でも出せるはずです。しかし、前述のように「撮られた感」や「撮った感」を演出するために、電子的な「ピッ」という音よりも、カメラっぽい音が望まれるようです。おそらく、これは今まで「カメラとはこういう音だ」と洗脳されてきたジジイ世代がそういったことにうるさいだけで、若い世代はピッでも良いのかもしれません。
歴史的には一眼レフの時代が長かったため、ミラーとシャッターが上下する機械的なシャッター音を聞くとテンションが上がるという人が多いようです。特にわれわれジジイ世代はその音を聞くと違和感がなく、安心するのでしょう。
モデルさんもそのほうが「撮られたー」という実感が湧くようで、変な電子音よりも、昔ながらの一眼レフライクな音を好む人も多いようです。
考えてみると、昔のカメラはもっとノイジーでした。自分はずっとPentaxの645を使っていたので、ミラーもシャッターも35mm判よりも遥かに大きく、音も相当なものでした。モータードライブの音もあるので、「ガシャゴーン」という派手な音です。モデル撮影でも、ハッセルブラッドやマミヤの中判カメラが主流でしたので、シャッター音とともに、フィルム巻き上げの音が発生し、それがスタジオ内などで小気味よく聞こえていました。今よりも、撮った方も「撮ったぞ感」が大きく、撮られた方も「撮られた感」が相当大きかったと思います。
Z9のシャッター音はおそらく自社の一眼レフのシャッター音をサンプリングしたものでしょう。何種類か用意されているようですが、ユーザー設定で音源を自由に変えられると面白いですね。例えば、音源を猫の鳴き声とかにすると、シャッターを切る度にニャーニャー音がでるようにできるでしょう。子供の写真を撮る時に笑顔を引き出すことに役立つかもしれません。Z9のような無骨なカメラからニャーとかワンといった音が聞こえてくるだけで、大人でも笑うでしょう。連写するとワンワンワンワンと吠えるとかなり楽しくなります。緊張して硬くなった人も、良い表情を引き出すことができるかもしれません。機械的な音が出ないカメラは、そんな可能性を秘めているのです。
いずれにしてもメカニカルシャッターレス仕様になったことで、完全無音撮影と電子的なシャッター音付きの撮影を選べるようになりました。今までもミラーレスでは電子シャッターだけに切り替えて無音撮影をすることができましたが、様々な制約がありました。そのため、通常はメカニカルシャッター仕様で撮影していましたが、Z9からは使い方が変わってくるでしょう。
私の仕事では、おそらく、基本は無音撮影で、必要なシチュエーションはシャッター音を発生させるという運用になりそうです。音を出すときはモデルさんや術者に「聞かせるため」に出すので、撮られた感を出すために比較的大きめの音を出すでしょう。
無音撮影
野鳥撮影の仕事では完全無音撮影が適しています。野生動物にどれほど影響を与えているかは分かりませんが、無駄な刺激を与えたくないので、無音にできるカメラであれば無音で撮影するのが良いと思っています。
野鳥カメラマンが集まった公園などでは、まるで有名芸能人の取材会見のようにカメラマンたちの連射音に包まれます。野鳥たちは耳も良いはずですので、相当なストレスになっている可能性は否めません。
近い将来、各社でミラーレス化、メカニカルシャッターレス化が進み、そのような状況が改善されることを期待しています。
授業や実習、セミナー風景などの撮影を依頼されることもありますので、完全無音化できるのは大変ありがたい仕様です。仕事の幅が増えるでしょう。
結婚式であっても、誰かがスピーチをしているそばでガシャガシャ写真を撮るのははばかられます。無音でできるのであれば無音にこしたことはありません。
以上のように、無音撮影もできる一方、シャッター音が欲しい時には出せるという仕様は、一般にはどうでも良いことかもしれませんが、撮影を仕事としているカメラマンにとっては、実は撮影現場の幅を大幅に広げてくれる素晴らしいことだったりするのです。
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