無限遠補正光学系顕微鏡対物レンズによるスーパーマクロ撮影：Nikon 1編

前回のNikon Zシリーズのミラーレスによるスーパーマクロ撮影に引き続き、Nikon 1シリーズでも同様に無限遠補正光学系顕微鏡対物レンズで超マクロ撮影にチャレンジしてみます。

販売終了になってしまいましたが、13.2×8.8mmのCXフォーマットは、こと拡大という意味においてはFXやDXよりも圧倒的に有利でした。ただし、画素ピッチが狭くなるので回折ボケは避けられず、当然画質においては不利になります。どこまで許せるかのせめぎあいになると思いますが、診察中の外部寄生虫の撮影に使う分としては十分使えるのではないかと思い、テストをしてみました。ターゲットはノミやダニなので、芸術写真とは程遠いものです。

Nikon 1
レンズ
実験
結果
倍率
総評
実写
- セミの単眼（アブラゼミ）
- おまけ

Nikon 1

2011年に発売になったNikon 1は、13.2×8.8mmのCXフォーマットで登場しました。ニコン初のミラーレスカメラですが、小型軽量でスナップカメラとして持ち歩くのにも適したカメラでした。
小型センサーなので、望遠やマクロ撮影に有利です。対角が約1インチなので、DXやマイクロフォーサーズよりも拡大率が高く、レンズの35mm判換算値は2.7倍にもなります。110mmのレンズが約300mm相当、300mmのレンズは810mm相当となります。
マクロ撮影でも、像の拡大率はフルサイズの単純に2.7倍になります。
自分はV1、V2、J1を所有しています。J1は顕微鏡カメラとしても購入し、3眼鏡筒の上に鎮座していていまだに現役です。当時の顕微鏡専用カメラよりも遥かに安く、写りも良かったのです。2.7倍に撮影できることと、電子シャッターが使えるので無振動で撮影ができます。

今回は初期のV1を使ってテストしてみました。

レンズ

理論上は200mm前後の望遠レンズが適していると思いますが、Nikon1システムの望遠系は
・1 NIKKOR VR 30-110mm f/3.8-5.6
・1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6
しか手元にありません。これでテストしてみます。

実験

比較のため、Ｚシステムの時と同様に10円硬貨の表面（平等院鳳凰堂がある面）中央の扉をターゲットとして撮影しました。すべて手持ち撮影、ノートリミングで、長辺を1920ドットに縮小しただけです。

1 NIKKOR VR 30-110mm f/3.8-5.6

1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6

結果

1 NIKKOR VR 30-110mm f/3.8-5.6では、焦点距離80mm付近からケラレがなくなり、CXフォーマットの全面にイメージサークルが広がります。110mmでDXフォーマットテスト時の180mmと同等の範囲が写っています。

1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6では、焦点距離150mm付近からケラレがなくなり、CXフォーマットの全面にイメージサークルが広がります。200mm、300mmでは部分拡大され、拡大率に関してはさすがにCXフォーマットの優位性を感じます。

倍率

フォーマットが異なるので倍率はあまり意味がありませんが、約2mmのサイズがCXフォーマットの長辺いっぱいに写っているので、撮影倍率としては約6.6倍です。それよりも約2mm×1.3mmほどの範囲が画面いっぱいに写ると表現した方が分かりやすいかもしれません。

0.5mmの格子です。300mmで横約2mm、縦約1.3mmほどの範囲を撮影できます。

総評

所有しているNikon1が初期のV1、V2、J1です。致命的な欠点として、ファインダーや液晶に露出が反映しないことがあげられます。せっかくミラーレスで、シャッターを押す前に露出の過不足が分かるはずなのに、それが反映されないのです。ミラーレスの優位性が活かされていません。
直感的な露出補正ができないため、今回の撮影でも大変苦労しました。

現在のZシリーズでは当初からファインダーにも液晶モニターにも露出が反映されるようになりましたので、圧倒的に楽になりました。Nikonはミラーレス化が遅れていた時期でしたので、Nikon1システムはZの設計のための試験段階だったのかもしれません。そこでの問題点やノウハウをZシステムにつぎ込んだのでしょう。なかなか面白い企画で、気に入っていたので、なくなってしまったのは残念です。

そういった欠点はあるにしろ、拡大率をアップするためのCXフォーマットは理にかなっています。FT1でFマウントのマクロレンズを使用すれば2.7倍のマクロになりますし、今回の実験のように顕微鏡レンズを使うと約2mmのものを画面いっぱいに写すことができます。