もう一台、オヤジの形見のCanon Pがあります。私が1960年生まれ、CanonPの発売が1959年なので、おそらく私の成長記録を撮るために1960年頃に買ったカメラだったのでしょう。当時はそれほどカメラは普及していなかったでしょうし、かなり高価な贅沢品だったと思います。おかげ様で、当時としては珍しく、自分が幼少の頃の写真は結構残っています。オヤジが積極的に撮ってくれたのでしょう。
そのため、このカメラ・レンズと私は同い年です。
Canon P
定番ですが、撮影していたら、またブンチョウがちょっかいを出しに来てしまいました。いつもレンズを見るとつつきに来ます。
このころのキヤノンはライカLマウント(L39)を採用しています。第二次大戦でドイツが敗北し、ドイツの特許が無効となって各社がこぞってライカのマウントに合わせてカメラを生産したようです。レンズを生産する技術がなくても、ライカLマウントの規格に合わせてボディを作れば、豊富に出回っている世の中のライカLマウントのレンズを使えるからです。
その後ライカがバヨネットのMマウントに移行し、各社も独自のマウントを開発するまで、ライカLマウントがデファクトスタンダードだった時代です。
Canon Pは50mmF1.4付と50mmF2.8付のものが発売されました。調べてみると、50mmF2.8付のセットが37,700円、F1.4付のセットが 52,700円 だったようです。1960年頃の大卒初任給は1万円程度なので、給料4、5ヵ月分ほどの高価な買い物だったことが分かります。オヤジはF1.4付のセットを購入しているので、相当頑張ったのだと思います。
その10年後くらいにアメリカに移住したときも、ウィーンに移住した時も常にこのカメラを持ち歩き、ことある毎に家族の写真を撮影していました。その間一度も壊れたことはなく、60年経った今でもまったく問題なく、普通にシャッターが切れます。
50mm 1:1.4
キヤノンはこの頃から明るいレンズにこだわりを持っていたようです。当時はフィルムの感度も低く、ASA(今のISO)100しかありませんでした。今のように手振れ補正などもないので、少し暗くなるともう撮影不能でした。それを打開するためにはレンズを明るくするしかなかったのです。F2.8よりも2段も明るいF1.4は撮影の幅を大きく広げました。
ライカLマウント→Nikon Zマウント変換アダプタ
1954年のライカM3の登場と共に発表されたライカMマウントに移行する以前はライカLマウントがデファクトスタンダードだったので、さまざまなメーカーがライカLマウントレンズを作成していました。当時は現在のようにコンピュータによるレンズ設計や非球面レンズなどを加工する技術もなかったので、現在のレンズと比較するとかなり甘いレンズが多いのですが、それがオールドレンズの良いところなのでしょう。ピントの甘さだったり、ディストーションが大きかったり、周辺減光があったり、像面湾曲収差によって中央と周辺でかなりピント位置が違ったり、コントラストが弱かったり、色収差が残存したり、コーティング技術が未熟で盛大なフレアが発生したり、といった、今のレンズでは不具合として扱われてしまう問題点を「味」として評価されてしまうところがオールドレンズの面白いところです。
ライカLマウントレンズは、中古市場でも玉数は多いので、ライカLマウントレンズをNikon Zマウントに変換するアダプターは一つ持っていても損はないでしょう。オールドレンズフリークとしては必需品です。
ライカLマウントも人気が高いマウントなので、各社から沢山のアダプターが販売されています。今回はK&F Conceptのものを使用しました。
すでにライカMマウント→ニコンZマウント変換アダプタを持っている場合はライカL39マウント→ライカMマウント変換アダプタを購入する手もあります。その方がいくらか安くなりますが、アダプタを二重につけることになりますので、あまりお勧めはしません。
K&F Concept M39-NIK Z マウント変換アダプタ
1930年に登場したバルナックに使われたマウントには正式な名称がなく、ライカマウント、Lマウント、ライカスクリューマウント、L39マウント、M39マウントなど、様々な名称で呼ばれていました。一般的にはライカLマウントやL39マウントと呼ばれることが多いと思うのですが、2015年に発表になった新しいライカのマウントがLマウントという正式名称になってしまったので、昔のスクリューマウントをLマウントと呼ぶと混乱が起きる事態になってしまいました。そのためか、こちらのアダプタはM39-NIK Zという名称になっています。M39と言うと、フランジバックが異なるゼニットマウントなど、別の規格の名称としても使われているので、ややこしいのですが、ここではM42など、メートル法のM〇〇という呼称でM39という名称を使っているのでしょう。仕様としては、レンズ側が内径39mm、 フランジバック28.8mmのライカスクリューマウントで、ボディ側がNikon Zマウントのアダプタです。間違いやすい名称のものがたくさんあるので、購入時はご注意ください。
作りは大変良くできています。マウント変換だけなので、光学部品も電子部品もありません。双方のマウントともしっかり作られていて、Zマウントはカチッとはまります。ライカLマウント側も特に問題なく普通にねじ込めます。
やはりレンジファインダー用のレンズはフランジバックが短いので、Z5に取り付けた時に妙に出っ張ったりせず、一眼レフ用レンズと違って収まりが良くなります。
Z5での使用感
ライカレンズを使った時と同様、フォーカシングや露出補正はZ5の優れたファインダーとフォーカスのピーキング表示、簡易露出補正機能によって大変使いやすく、相性は抜群です。本家Canon Pのボディよりも遥かに使いやすく、味があるレンズを最新のテクノロジーで余すことなく引き出すことができます。さらに、5段の手振れ補正は素晴らしく、しっかり構えれば1/2秒まで何とかなります。Z5のボディ内手振れ補正によって、今まで撮れなかったものまで撮れるようになるでしょう。
- 絞り優先モード
- ISOオート
- フォーカスピーキング表示ON
- ハイライト重点測光
- 簡易露出補正ON
で使うとかなり手間を省くことができます。フィルム時代から写真を撮っていた人は問題なくすぐに使いこなせるでしょう。ボディ側で絞りを調整する時代に写真をはじめた人には多少違和感があるかもしれません。左手はレンズに添えて、絞りとフォーカシングを左手が担います。右手は露出補正とシャッターを担います。直観的なので、はじめてでもすぐに馴れると思います。とにかくファインダーで見た通りに撮れるので楽です。
作例
手振れ補正テスト
レンズテスト
周辺減光が大きかったので、絞りによる変化をテストしてみました。
左上から1.4、2、2.8、4、5.6、8、11、16、22の像です。
5.6まで絞ると周辺減光はほぼなくなります。面白いことに、F11あたりからコントラストが弱くなり、カラーバランスがおかしくなります。回折によって像が悪化するのはわかりますが、色が変になるのはわかりません。すべてISO100なので、感度による変化ではありません。カメラが悪いのか、レンズが悪いのか、双方の相性なのか言及できませんでした。
被写体の色によるAWBの誤作動なのかと思い、被写体を変えてみましたが、同様にF11あたりからコントラストが低下し、カラーバランスが崩れてきます。
左F1.4 開放、右F5.6。5.6に絞ると周辺までかっちりピントが合い、周辺減光も改善されます。
Nikon Z5 レンズキット
K&F Concept メーカー直営店 マウントアダプター L39 M39 マウント ニコンZ マウント 変換 Leica M39レンズ-Nikon Zカメラに対応 ライカM39-ニコンZ zf z8 無限遠実現 高精度 |
フルサイズに対応したオールドレンズなどを余すことなく表現したい場合は、フルサイズのNikon Z5はおすすめです。アダプターさえ買えば、名玉と呼ばれているような有名どころのレンズは使えると思います。特にライカマウントはオールドレンズフリークには人気が高いので、アダプターはいくつも出ています。マニュアル絞り、マニュアルフォーカスができるレンズであれば概ね使えるでしょう。 |
Nikon Zシリーズ ボディのみ
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