Nikon Z9+Nikon AI AF Zoom Micro Nikkor ED 70~180mm F4.5~F5.6D:レビュー

今まで最強の組み合わせとして愛用していたD500とNikon AI AF Zoom Micro Nikkor ED 70~180mm F4.5~F5.6D(以下70-180)ですが、NIKKOR Z 24-120mm f/4 Sが比較的寄れることが分かってメインカメラをZ9にしました。概ね要求を満たしてくれますが、やはり今までの感覚と異なり、より術創に近付かないと同じ大きさには撮れません。これは衛生上よろしくないことです。やはり180mmの望遠マクロに慣れてしまっているので、120mmではいささか物足りなさを感じてしまいます。

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問題点

FTZをかまして装着

メインカメラをZ9にしましたが、70~180を使う上での問題点は、完全マニュアルフォーカスになるということです。術創の撮影は術者の手が離れた瞬間を狙ったり、術者がポイントとして撮影要求したときに間髪入れずに撮影しなければならないので、かなりの速射性を要求されます。

今まではD500との組み合わせで、問題はありませんでしたが、Z9はボディ側駆動のAFレンズは未対応ですし、AFカップリング内蔵のアダプタもありません。そのため、Z9で使う場合は一手間増えることになり、使用をためらっていました。

ボディ駆動のAFカップリングが内蔵されたFTZ2が登場することを待ち望んでいたのですが、FTZ IIは小型化の仕様変更でした。今のところボディ駆動のAFレンズをZでAF駆動させる術はありません。FTZ IIIあたりで出てくれれば良いのですが。

良きこと

しかし、考えてみると術者の肩越しに撮影しているので、術創との距離はさほど変わらず、マニュアルフォーカスでも使えそうです。そもそも70-180のAFは驚くほど遅いし、まれにピントをはずして無限遠まで探しに行ってしまうことがあるので、その時間的ロスを考えるとマニュアルの方が確実かもしれません。

また、Z9のフォーカスピーキング表示をオンにしていると、ピントが合ったエッジを色で教えてくれるので、マニュアルフォーカスが大変やりやすいのです。今までオールドレンズなどを使ってみてMFレンズのピント合わせが極めてやりやすいことを実感として感じていたので、MFはあまり心配はないでしょう。

現代のレンズと異なり、見た目よりもずっしりと重いレンズです。比較的コンパクトにまとめられていますが、この中に14群18枚のレンズがぎっしりと詰め込まれています。

特筆すべきことは、この70-180はズーミングによるピントのずれがないことです。普段は望遠端で使用していますが、そこでピントが合っていれば、広角側に引いてもピント合わせが必要ないということです。ズームレンズとは本来そういうものですが、昨今はAFで使うことを前提に、バリフォーカルレンズをズームレンズとして売っていることがあります。AFで使えば問題ありませんが、マニュアルで使うとズーミングを行うとピントがずれることが分かります。

世界初で唯一のズームマイクロレンズですから、こだわりを持って設計したのでしょう。実際に使うと分かりますが、一度ピントを合わせるとズーミングによるピントずれはほとんどありません。

さらに良きこと

医療写真はポートレートや花の写真などの撮影テクニックとは正反対で、極力絞り込んで深い被写界深度の状況で撮影します。前後がきれいにボケていても誰も褒めてくれません。むしろ失敗として扱われてしまいます。多少回折の影響を受けようと、写っている範囲はピントが合っていて欲しいものです。そのため、絞りはF20前後を多用します。
そのくらいになると概ねピントが合っていれば、多少のずれは被写界深度が吸収してくれます。

さらにさらに良きこと

フルサイズのZマウントカメラでは、ボディ内VRが使えます。AFが使えないことに気を取られていて、このことを忘れていました。

医療写真は、術者が嫌がらない限りストロボを使って撮影します。F22以上に絞り込んで、さらに無影灯の黄被りをキャンセルするためにNDやPLフィルターを使うこともあります。そのため、ストロボを使用した方がうまく撮影できます。

ストロボの閃光時間は一般的には極めて短いイメージだと思いますが、発光量によって閃光時間は変わります。少なければ数万分の一秒ですが、フル発光に近いと千分の一秒前後、ストロボの種類によっては数百分の一秒程度にまで落ちてしまいます。また、ストロボ同調速度はせいぜい1/200秒(Z9は1/250秒まで)です。
医療写真では、意外なことにブレによる失敗があります。無影灯の照度が非常に高いので、ストロボの閃光時間がどんなに短くても、無影灯で照らされた像は1/200秒で露光されることになります。したがって、ストロボでブレずに写った像と、無影灯で照らされた薄いブレた像が重なったような見苦しい画像になることがあります。特に無影灯によってできた輝点が分かりやすくブレていると気持ち悪い写真になります。

Nikon AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF) を使っていた頃は、VRのお陰でブレることはほとんどありませんでしたが、70-180を使いはじめた最初の頃はストロボ撮影でも二重になったブレ画像に悩まされました。70-180は105mmよりも焦点距離が長くなった上、VRがついていなかったからです。そもそもマクロ撮影はブレやすいので、望遠端180mmで近距離の撮影をするのはなかなか困難です。もちろん手術室に三脚なんか持ち込めませんので、すべて手持ちです。

また、術創は静止したものではなく、呼吸や拍動によって常に動いていますし、術者は常に何か作業していますから、予想よりもダイナミックに動いています。それもブレの原因です。

いずれにしても無影灯下という特殊な状況での問題点ですが、感度の調整やPLフィルターによる無影灯反射による輝点の除去などによって克服しています。

しかし、Z9にはボディ内手ブレ補正が付いています。被写体ブレはどうしようもありませんが、レンズ情報を手動で設定すれば手ブレ補正が効きます。望遠端が一番使用頻度が高いので、180mmF5.6で登録しました。VRなしで1/180秒が限界とすると、4段分の手ブレ補正で約1/10秒ほどまで補正してくれそうです。医療撮影ではストロボ使用が前提なので1/200秒で使いますが、その他自然光でマクロ撮影をする場合などは今まで撮れなかったものが撮れるようになる可能性があります。

実写

医療画像は見たくないという人が多いと思いますし、あまり載せると倫理的に問題があるので、身近にあった花束の花を使ってZ9と70-180の組み合わせでの撮影を試してみました。
予想通り、マニュアルフォーカスも使いやすく、ボディ内手ブレ補正が効果的なのですこぶる快適です。遅いAFよりも使い勝手が良いかもしれません。

画角変化(70mm、180mm)

広角端70mm
望遠端180mm

花全体

前ボケ、後ボケを入れてみました。自然なボケ味です。

最短撮影

180mm最短撮影
180mm最短撮影 :背景のボケが大変きれいです。
中心の穴にフォーカス
中央からちょっと手前の白っぽい花びら周辺にフォーカス
中央にフォーカス
斜めの撮影でボケを評価。前ボケも後ボケも大変素直です。

解像度

FXフォーマット全体像
180mm絞り開放F5.6シャッター速度1/100ISO560
中央部1920×1280ドット範囲切り出し
Z9のボディ内VRのお陰で、180mmの最短撮影で安心して1/100秒のシャッターを切れます。このレンズが登場した当時は難しいレンズだったと思います。

ボケ

くせのない、まるで単焦点のようなきれいなボケだと思います。

180mm時の手ブレ限界

計算上は1/10秒程度まで手ブレ補正が効くはずですが、望遠端の最短撮影距離のマクロ撮影のためか、1/10秒はほぼ全滅でした。自分の力量では、何とか使えそうなのは1/60秒前後まででした。歩留まり良く、安心して使えるのは1/100秒でしょう。

Exposure Time : 1/100
F Number : 5.6
Exposure Program : Manual
ISO : 320
Exposure Compensation : -1/3
Exposure Time : 1/60
F Number : 5.6
Exposure Program : Manual
ISO : 220
Exposure Compensation : -1/3
Exposure Time : 1/40
F Number : 5.6
Exposure Program : Manual
ISO : 140
Exposure Compensation : -1/3
Exposure Time : 1/20
F Number : 5.6
Exposure Program : Manual
ISO : 64
Exposure Compensation : -1/3
Exposure Time : 1/10
F Number : 11.0
Exposure Program : Manual
ISO : 125
Exposure Compensation : -1/3

総評

医療写真では前述のように可能な限り絞り込んでボケがないように撮影していたので、このレンズの望遠ズームや作動距離の利便性しか分かっていませんでした。今回あらためてZ9で使用して、なんてもったいない使い方をしていたのかと後悔しました。
望遠端180mmでF5.6と、決して明るくはありませんが、ボケがすこぶるきれいなのです。Nikonの技術陣は世界初のズームマイクロということで、相当なこだわりを持って設計されたのでしょう。前ボケも後ボケもズームレンズとは思えないほどとろけるような素直なボケ方をしてくれます。

マクロレンズを使う目的の大多数は花やポートレートなど、美しいボケが要求されるようなシチュエーションでしょうから、それを目標に設計・開発されたものでしょう。その目的では、現代でも大いに使えるレンズだと思います。

開放からカリカリにシャープというわけではありませんが、少し絞ると抜群にシャープになります。ほんわかした美しいボケのマクロ撮影も、かっちりしたシャープなマクロ撮影もこなせるレンズです。ズームによる画角の変化のみならず、絞りによるボケのコントロールも楽しめる上級者向けのレンズだと思いました。

ボディ内手ブレ補正を搭載したZマウントボディによって、再評価されるべき光学性能です。このレンズを超えるZマウントのズームマイクロが登場するまでは唯一無二の珍しいレンズです。

中古でもなかなか出て来ないのですが、良いコンディションの中古を見つけたらおすすめします。レンズの状態やスイッチ類の動きも重要なので、通販ではなく、実物を入念にチェックしてから購入することをおすすめします。

数十年経過した中古品しかないので、ネットでの購入はあまりおすすめしません。結構内部のくもりが発生すると聞いているので、前後からペンライトなどで光を入れて入念にチェックすることをおすすめします。

Fマウントの制約から解放されて、例えば等倍まで使えて、M/AのAFが使えて、手ブレ補正機構が組み込まれたZマウントの70-200mmくらいのズームマイクロが将来登場することを切望します。

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全長278mm、重量1470gで、600mmの焦点距離からは想像できないほど小型軽量です。レンズ単体で5.5段、Z9やZ8との組み合わせではシンクロVR機構によって6段分のVRにより、手持ち撮影が可能です。
DXフォーマットで使用すると900mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで840mmF9、1200mmF13、DXで1260mmF9相当、1680mmF13相当となります。
最短撮影距離が4mなので、野鳥が近い公園などでは有利となります。

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位相フレネルレンズ採用の通称ハチロクサンと呼ばれる800mmF6.3の単焦点レンズです。
800mmの超望遠レンズとしては驚くほど小型軽量で、全長385mm、重量2385gしかありません。レンズ単体で5段分、Z9やZ8との組み合わせでは、シンクロVR機構によって5.5段のVRにより、手持ち撮影が可能です。
DXフォーマットで使用すると1200mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで1120mmF9、1600mmF13、DXで1680mmF9相当、2400mmF13相当となります。 最短撮影距離が5mあります。野鳥が遠い公園や小型の野鳥を大きく写したいときに有利となります。
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著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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