自分の外見とは裏腹に、可愛らしいものが好きです。動物好きの人は多かれ少なかれその傾向があると思いますが、大人になってからもまれに可愛いぬいぐるみを見て心躍らされたりすることがあります。大の大人がおもちゃ屋さんのぬいぐるみを見て「欲しいー」と思ってしまうのは、頭がいかれているのではないかと自分でも思いますが、本人の意思とは関係なく、そんな衝動に駆られてしまうのですから致し方ありません。本能や生理的なものです。
衝撃的な出会い
ある日、家内とおもちゃ屋さんを巡っていて、出会ってしまいました。ムーちゃんという牛のぬいぐるみです。これほど可愛らしいぬいぐるみを見たことがありません。同じくぬいぐるみ好きの家内へのプレゼントという名目で買いましたが、本当は自分が欲しかったのです。
それまで、ぬいぐるみのデザイナーなんて注目したことはなかったのですが、このムーちゃんのデザインにはただならぬものを感じ、タグを見ると「Moskowitz」と書いてありました。それまで知りませんでしたが、色々と調べた結果、スチュワート・マスコウィッツというイラストレーターの作品であることが判明しました。夫婦で一気にファンになってしまいました。
1980年代でしたが、ちょうど日本でも人気が上昇したようで、「なるほど!ザ・ワールド」のキャラクターデザインや銀行の通帳デザインなどに採用されています。その後もマスコウィッツさんのぬいぐるみはシリーズとして次々と発売されました。どれも可愛らしく、ほぼ全種類買ったと思います。
箱根に会いに行く
何で知ったか忘れましたが、1992年にマスコウィッツさんが来日され、箱根彫刻の森美術館で展示即売会を行うという情報を得て、勇んで出かけました。これだけ世界的に有名な画家なので、大混雑で長蛇の列を覚悟して行ったのですが、サイン会がはじまった時にいたのは私たち夫婦だけでした。何だかとっても申し訳なく思ってしまいました。当時はまだインターネットも黎明期でしたし、スマートフォンなどは影も形もない時代ですから、情報があまり伝達されなかったのでしょう。私たちはゆっくり接することができたので、逆にラッキーでした。
家内は持てるだけぬいぐるみをカバンに詰めてファン度をアピールしていました。マスコウィッツさんは「ワーオ!」と、とても喜んでくださったのを今でも覚えています。
今まで絵なんて買ったことがありませんでしたが、展示即売会をやっていたので、額に入った恐竜の絵を購入して、サインしていただきました。他に誰もいなかったので、ちゃんと額を開けて、中の台紙に直筆のサインをしてくれました。家内はいくつかのぬいぐるみにもサインを貰っていました。
ちょっとお話しさせていただいて、並んでいる人もいなかったので、ゆっくり写真も撮らせていただきました。30年も前の出来事ですが、鮮明に覚えています。
残念ながら、2017年にマスコウィッツさんは亡くなってしまいました。もうマスコウィッツさんの新しい作品が出て来ないのは残念でなりません。箱根のサイン会は貴重な思い出になってしまいました。後にも先にもあれほど可愛らしい動物のイラストは見たことがありません。彼の独特なキャラクターデザインは永遠に残ることでしょう。
そして2021年
わが家の近くに画材屋さんがあり、写真用の額を作ったり文房具フリークの心を満たすためによく利用していました。そこにいつも額に入ったマスコウィッツさんの絵が展示してありました。いつもいいなぁーと思いながら眺めていたのですが、結構なお値段(ン万円)だったので何年も躊躇していました。
緊急事態宣言真っ最中のある日、用があって画材屋さんを訪れると、閉店セールを行っていました。新型コロナの影響でしょうか。大好きなお店だったのでなくなってしまうのは大変残念だったのですが、そのマスコウィッツさんの絵もセール対象となっていました。
今度躊躇したら2度と出会うことはないと思って即決で購入しました。これは神様のお告げです。
Jungle Fishというタイトルで、ジャングルの動物がすべて水中の魚風になっている大変ユニークな作品です。ずっと見ていても見飽きない魅力があります。新たな宝物ができてしまいました。
幅60㎝以上ある比較的大きな絵なので、ピクチャーレールをつけて、特等席に飾っています。マスコウィッツさんの絵は、見る人を幸せにさせる絵です。
その後
最初の恐竜も直筆サインを貰いましたが量産されたポスターですし、ジャングルフィッシュもサイン入りポスターです。マスコウィッツファンとしてはどうしても本物の版画が欲しかったので探していたところ、オークションサイトで出ていました。これはまさに自分のために出品されていると思い、落札しました。
「SEA HORSE」という作品です。
エディションナンバー8/350で直筆サイン入りです。タツノオトシゴをウマに見立てて魚たちがレースをしているほほえましい風景です。これは良い買い物をしました。エディションナンバーはあまり関係ないと言われていますが、やはり若い番号の方に魅力を感じます。日本人が好きな末広がりの8なのもちょっと良いかな。
世界で限定350枚刷られたうちの1枚がわが家にあるという喜びをかみしめています。