野鳥撮影に最適なカメラとレンズの組み合わせ:その1

30年以上獣医学系の画像撮影や画像処理を仕事としています。その間、機材もフィルムカメラからデジタル一眼レフに移行し、カメラ業界も最近はミラーレス一眼に移り変わろうとしています。昔はカメラの進化もゆっくりでしたが、最近は激動と言っても良いくらい日々進化しています。フィルム時代は一生使うつもりでカメラを買いましたが、現在は最新のカメラでも1年経つともう古くなってしまうほどです。
これから写真をはじめようと思っている方も、何を買ったら良いのか、自分が撮りたいものを撮るためには何を揃えたらよいのか、大変迷われることと思います。
カメラは使う人との相性もありますし、自分もあらゆるカメラを試しているわけではないので、「これがあなたにとって最適なセットだ!」という紹介はできませんが、このセットだとこのくらいの写真が撮れる、というサンプルはお見せできます。それがご自身の目的に合うセットを見つける指標になれたら幸いです。

左から
AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR
AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR
AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR (参考)

おりしも、数年前に家内が野鳥撮影に興味を持ち、最適な機材を求めて色々と試す機会がありました。Nikonのカメラとレンズの組み合わせで、目的は野鳥撮影という限定的な条件ですが、そのような目的で探している方も多いと思います。野鳥撮影に使って、野鳥がどの程度に写るのかを包み隠さず紹介させていただきます。

写真家という立場からのアドバイスとしては、たとえ初めてカメラを買う人にもコンパクトカメラではなく、レンズ交換ができる本格的な一眼レフもしくはミラーレス一眼をおすすめしています。コンパクトカメラでも2000mmや3000mm相当などといううたい文句で野鳥が大きく撮れることをセールスポイントとしたものもありますが、そういったカメラはセンサーを小さくすることで望遠効果を引き出しているので、フルサイズやAPS-Cサイズのカメラと比べるとどうしても写りには限界があります。野鳥の目や羽の微細な構造まで写し撮るためには、レンズ交換式カメラをおすすめします。
仕事柄、これから野鳥撮影をしたいという人や、学生からも機材についての相談を受けますが、せっかく芽生えた野鳥への興味をダイナシにしないよう、ずっと一眼レフやミラーレス一眼をすすめています。
よく、「最初はコンパクトカメラではじめてみたら」とアドバイスをする人を見かけますが、個人的には反対です。相談してくる段階で、その人はすでに「野鳥の姿をきれいに撮りたい」という強い要望があるのです。その要望を満たせるコンパクトカメラは現状ありません。デジタルズームやセンサーのマジックで単に鳥を大きく写すのは簡単ですが、下手をすると、「なーんだこのくらいしか撮れないんだ」と興味を失わせることにもなりかねません。それは教育者としてあってはならないことだと思っています。
家内が興味を持ったときも同様に、一眼レフからはじめました。

以下、さまざまなボディとレンズの組み合わせによるサンプルです。はじめて一眼レフを手にした人間でも、現在のカメラはそこそこ撮れるようにできています。仕事に使えるレベルとはまた別ですが、趣味で野鳥を撮りたいという方々の参考になれば幸いです。
掲載した写真はトーン調整やトリミングを行っているものもあります。すべて長辺1280ドットに縮小して貼ってあります。

なお、カメラやレンズの使い勝手の感想などは個人によるものです。撮影テクニックや画像処理のテクニックによって同じ機材でも出来上がる写真は大きく異なりますので、評価は皆さまと同じである保証はございません。予めご了承ください。

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Nikon D5600 ダブルズームセット( AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR )

家内は身長150㎝と小柄で、懸垂は1回もできないほど非力です。そんな彼女が持ち歩ける一眼レフカメラとして最適だと思ったのがこのD5600+ダブルズームのセットです。本格的な一眼レフでありながら、大変軽く、 AF-P DX NIKKOR 70-300mm f/4.5-6.3G ED VR を付けても880gしかありません。これなら軽々持ち運べます。センサーはNikonが言うDXフォーマット(APS-C)なので、35mm判に換算するとそれでも450mm相当の望遠レンズとなります。しばらくはこのセットを使って練習しました。

このセットは大正解で、大変よく写り、家内の野鳥へ興味を何倍にも膨らませてくれました。

作例

セットの望遠レンズとしてはかなり優秀です。フォーカスが速く、ストレスを感じません。飛ぶ鳥も撮れてしまうほどです。しかし、しばらく使用していると、300mmは野鳥撮影には焦点距離が足りないと思うようになるでしょう。やはり最低でも500mmは欲しくなってくるものです。そう思ったらレンズを買い替えられるところがレンズ交換式カメラの魅力であり、おすすめする理由でもあります。

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Nikon D5600+AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR

ダブルズームキットの70-300mmズームはフォーカスも速く、安くて軽いという大変コストパフォーマンスが高いレンズですが、野鳥撮影ではやはりもう少し焦点距離が欲しくなってきます。野鳥撮影で標準レンズといわれているのは500mmなので、そろそろステップアップのタイミングです。

丁度その頃、Nikonからコストパフォーマンスが良い500mmまでのズームレンズが登場しました。 AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR です。
レンズだけで2300gもあり、キットレンズの70-300ズームの何倍も重くなってしまいますが、量販店で家内に持たせたところ、「問題ない」とのことだったので導入してみました。
D5600を購入してから毎週フィールドに出るようになったため、体も随分と鍛えられてきていたのでしょう。しかし、さすがに465gのD5600に2300gのレンズを付けてボディーのストラップでぶら下げるのは危険だと判断して、速射ストラップをレンズフットに取り付ける形にしました。それにより、今までと同様、1日10km程度歩いても特に問題ありませんでした。
レンズのコストパフォーマンスは良く、実売15万円以下ですが、やはり300mmとは違う世界で大変満足できる写りです。

D5600はDXフォーマットなので、望遠端は35mm判換算で750mm相当となり、本格的な野鳥撮影が楽しめます。

作例

ズームレンズながら、純粋に光学的に500mmまで持ってきているので、コンパクトカメラなどとは比べ物にならない良い絵が撮れます。トリミングにも結構耐えます。Nikon純正で、この画質で15万円はかなり破格の値段だと思います。重さに問題がなく、コストパフォーマンスを重視される方にはおすすめできるレンズです。
ズームレンズなので多少絞って使う必要がありますが、ボケもきれいです。

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Nikon D5600+AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR

ひょんなきっかけで、AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VRを譲り受けることになりました。Nikonの500mm単焦点で、位相フレネルレンズという新しい技術を使った軽量コンパクトなレンズです。50万円以上するレンズなのに大人気で、発売当時は1年待ちの状態でした。
AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR の望遠端と焦点距離は同じなので、写る鳥の大きさは同じですが、ズームレンズと単焦点レンズは写りが異なります。ズームレンズは様々な収差が残っているため、多少絞る必要がありますが、単焦点は開放で使えるため、感度が下がり、画質も良くなります。暗いシチュエーションでも有利となります。
何より、1460gという、500mmの単焦点としては超軽量なところが魅力です。軽くなったと言われている500mmF4E FLでも3090gあるので、半分以下です。野鳥撮影は鳥を見つけた瞬間にそちらに向けられる機動性も重要です。真上に向けることもあります。そのため、1.5kgという差は大きいのです。

しかし、個体差なのか、D5600との相性は良くなかったようで、あまり性能を発揮できませんでした。丁度その頃、ボディをZ50に買い替えたのですが、そちらとの相性は素晴らしく良く、100%性能を発揮できたと思います。500mm F5.6E PF はミラーレス一眼との組み合わせで使うことをおすすめします。

作例

D5600との組み合わせでは、すごくきれいに撮れる時と、イマイチシャープではないことがありました。個体差や相性の問題だと思いますので、すべての状況に当てはまることではないでしょう。ちなみに、Z50で使用すると大変な高性能ぶりを発揮しました。
とにかくこのレンズはコンパクトさと軽さが素晴らしく、撮影スタイルを一変させる力をもっています。

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Z50+AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR

個体差かもしれませんが、D5600との組み合わせではイマイチピントがずれている感じがしました。D5600はピント微調整ができないので、サービスセンターなどで調整してもらえば良くなったのかもしれませんが、丁度その頃NikonからDXフォーマット(APS-C)のミラーレスカメラが出て買い替えたので、そのままFTZを挟んで試してみました。すると、見違えるほどキレキレの写真が撮れるようになりました。ミラーレスは撮像面でピントのずれを検出してフォーカス調整をするので、たとえ多少の個体差があっても吸収されるのでしょう。大変良い組み合わせだと思います。
「Nikon純正500mm単焦点レンズだったらこうでなくっちゃ!」と思わせる高画質で、500mmF4E FLが売れなくなってしまうのではないかと心配したほどです。

家内のカメラをD5600からZ50に買い替えた理由は、どうしても克服できなかった露出補正のためです。良い野鳥写真を撮るためには、鳥の色と背景の明るさによって露出を補正する必要があります。暗い背景の白い鳥は相当露出を下げないと白飛びしますし、空を背景にした暗い色の鳥は黒つぶれします。どんな露出モードでも、一眼レフでは、それを経験的に補正する必要がありますが、なかなかぴったり合わせるのは難しいものです。露出の過不足が撮影するまで分からないというのが一眼レフの唯一の欠点です。ミラーレス一眼はそれを克服しました。撮影前からファインダーで露出の過不足が確認できるのです。ファインダーで確認しながら、直感的に露出の調整ができるようになりました。

これで、おそらく最軽量最高画質で最強の野鳥撮影システムになったと思います。

Z50
FTZ
500mm PF

作例

ミラーレスの恩恵で、このような難しい露出補正も直観的にできるようになりました。
白いスズメに遭遇
単焦点だと開放で使えるので、背景がきれいにボケてくれます
暗いシチュエーションでも有利となります

最終的に到達したZ50+500mmF5.6E PFの組み合わせは現在野鳥撮影目的では究極の組み合わせだと思います。ズームレンズと違って開放から使えるため、感度を1段下げられたり、シャッター速度を1段上げられるため、画質が良くなります。ミラーレスでは露出補正も簡単にできるため、失敗が少なくなります。これから本格的に野鳥撮影をはじめたい方々には一番おすすめできるシステムです。
ネックは50万円近いレンズ価格と、入手困難なところです。ずっと品薄状態が続いています。中古市場も品薄でしたが、徐々に出始めているようです。良い状態のものが見つかればお買い得かもしれません。

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総論

人間の欲望は際限ないので、どんどんエスカレートする傾向があります。野鳥撮影をはじめた人は必ずと言って良いほど、もっと大きく写したい、もっと鮮明に写したい、暗い場所でも撮りたい、と思うようになります。その要望を満たすためには、焦点距離が長く、大口径のレンズが必要になります。しかし、残念ながら光学性能を追及すると指数関数的に高額になってしまいます。レンズ1本100万円オーバーは当たり前の世界です。また、長焦点・大口径レンズは大型で重く、取り扱いも難しくなります。落としどころをどこに持って来るかがレンズ選びのポイントとなります。

そんな中で、Nikonから販売されている AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR はコストパフォーマンス的にはかなり優秀だと思いました。上の作例からも分かるように、15万円前後で買えるレンズとは思えない性能を発揮します。
野鳥撮影をはじめる場合は、300mmだとどうしても500mmが欲しくなると思いますので、最初からこの200-500を購入するのも良いかもしれません。おすすめできるレンズです。ただし、この重さにしてはレンズストラップがないので、持ち歩く際の工夫が必要です。レンズフットにストラップを付けることを検討してください。

金銭的に余裕がある場合は、やはりAF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR がイチオシです。比べてしまうとズームレンズとは一線を画す性能を発揮します。逆光に弱いという弱点はありますが、順光ではその上の500mmF4E FLに勝るとも劣らない解像度の写真が撮れます。経験的にはミラーレス一眼との組み合わせをおすすめします。
小型コンパクトで超軽量ながら高解像度でぬけの良い野鳥写真が撮れます。食費を切り詰めて50万円貯金してでも手に入れる価値はあります。
ボディ+FTZ+レンズで約2㎏です。フィールドで長時間持ち歩き、鳥を見つけてサッとそちらに向けられる軽さは、野鳥撮影において大変重要な要素です。長時間構えたり、真上に向けるのも苦にならないので、場合によっては今まで撮れなかったものが撮れるようになるほどの改革になり得ます。
画質的には仕事にも十分使える性能です。実際、野鳥図鑑やカレンダーに使っていただきました。とりあえずこの組み合わせで120%満足なので、これ以上のものを追及することはなくなりました。当分はこの組み合わせで撮影を続けることでしょう。

自分はAF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VRを使っていますが、これは仕事として必要な場合以外で買う人は少ないでしょう。焦点距離は500mmですが、1段明るいF4になるだけで130万円の価格に跳ね上がってしまいます。写真を売って元を取るのは仕事でも難しいかもしれません。
1段明るいことのメリットは、感度が半分になる、もしくはシャッター速度を倍にできることによる画質の向上ですが、十分に明るい順光のシチュエーションでは500mmF5.6E PFに対する優位性はあまり感じません。大きく重いので不利になる場合もあります。
仕事で使う上では、背景をぼかして主題を引き立てたり、暗い森の中で撮らなければならない場面ではこの1段の差は大きくなります。

人によって、どこまで追及するかは異なっています。機材に投資できる金額も異なります。金に糸目をつけず、とにかく高画質の野鳥写真を撮りたいという人もいれば、予算10万以内と限定している人もいるでしょう。それぞれ野鳥撮影に対する思い入れは違って当たり前です。今回ご紹介した組み合わせは、総額8万円前後から60万円前後のものです。8万円のセットで気軽に撮れて十分満足な人もいる一方、60万円のセットでもまだまだ不満を感じる人もいると思います。そのあたりは皆さまの目的と評価にお任せします。
皆さまにとって最適な組み合わせに巡り合えることを祈っております。

NikonのAPS-Cサイズのミラーレスカメラです。野鳥撮影にはDXフォーマットの方が有利になるので、Z50はおすすめできます。500mmのレンズは750mm相当の画角になります。
500mmF5.6PFを使用するには、マウント変換用のFTZを間に入れる必要があります。
NikonのFマウント用レンズをZシリーズで使うためのマウント変換アダプターです。Nikon純正なので安心して使用できます。
入手可能であれば野鳥撮影にイチオシのレンズです。F5.6なのでテレコンはきびしいことと、逆光に弱いという弱点はありますが、500mmとは思えない軽量コンパクトなサイズです。ミラーレス一眼との相性も抜群です。

さらに上を目指す方々へ

これでも満足できないハイアマチュアの方や、これから野鳥撮影を仕事にしたいと思っている方は、より明るい単焦点レンズを導入するという選択肢もあります。300mmF2.8、500mmF4による野鳥撮影サンプルも紹介いたします。

仕事

上記 Z50+500mmF5.6E PF で撮影した写真も十分仕事に耐える画質です。家内の写真は下記書籍やカレンダーなどにも採用されています。

バードウォッチング初心者にまず読んでもらいたい本:見つけて楽しむ身近な野鳥の観察ガイド
野鳥に興味を持って、最初に読んでいただきたい図鑑です。最初は数十種類の野鳥を見つけることからはじめましょう。都市部の公園でも十分バードウォッチングは楽しめます。野鳥撮影をはじめたい人にもおすすめです。
身近な野鳥カレンダー2021
こだわりにこだわりぬいた身近な野鳥の2021年版カレンダーです。画質もパワーアップし、カレンダーの大きさもB4となって大幅にサイズアップしました。すべて東京都と神奈川県の都市部の公園で見られる、身近な野鳥たちの癒される可愛い写真でまとめてあります。バードウォッチングや野鳥写真撮影をはじめた方や、野鳥好きの方々にはおすすめのカレンダーです。プレゼントにも最適です。
アサヒカメラ休刊に伴う身近な野鳥カレンダー2021の解説
「身近な野鳥カレンダー2021」の全撮影データと機材の紹介をさせていただきます。野鳥撮影がうまく行かない方々や、これから野鳥撮影をはじめる方へ、プロの写真家が何を考えて絞りやシャッター速度を決定しているのか、何に気を付けて露出や構図を決めているのかを余すことなくお伝えしたいと思います。参考になれば幸いです。
野鳥撮影カメラ2021
仕事柄野鳥撮影のためのカメラセットの相談をよく受けます。野鳥を撮るために何を買ったらいいのか。そんな聞き方をしてくるくらいですから、野鳥撮影がはじめてと言うよりも、カメラ自体はじめての方々です。学生にもよく聞かれますし、フィールド...

著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、出世するのが嫌で退職。現在は大学非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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