Nikon Z9+NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S 実写レビュー(VR:手ブレ補正編)

どんなに高解像度でも、軽量でも、手振れ補正が機能しないと手持ちで使うことができません。
手ブレ補正機能がないころから、撮影するときのシャッター速度は一般的に「1/焦点距離」秒以上の高速シャッターが必要であると言われてきました。300mmのレンズなら1/300 s以上、500mmのレンズなら1/500 s以上といった具合です。本レンズも手ブレ補正がない場合は1/800 s以上、DXフォーマットで使う場合は1200mm相当となるので、1/1200s以上のシャッター速度が必要な計算です。
以下のテストはDXフォーマットなので35mm版換算で1200mm相当です。画角としてはより厳しい条件なので、実際はより良い結果となるでしょう。

手ブレ補正5段

手ブレ補正の効果は、段数で表記されます。1段は露光量2倍もしくは1/2のことです。絞りの数値で言うと√2倍の差です。例えばF4とF5.6の差は1段です。F4の光が通る面積は、F5.6の2倍です。シャッター速度で言うと露光時間なので純粋に2倍の差です。例えば1/100 sと1/200 sの差は1段です。感度も同様に数値の2倍の差が1段です。
手ブレ補正効果の表記はシャッター速度の段数です。「手ブレ補正1段分の効果」と書いてあったら、「1/焦点距離」秒の半分のシャッター速度まで補正効果があるという意味です。例えば、800mmで1/800 sのシャッター速度が必要とされている場合に1段の補正とは、1/400 sでも手ブレ補正効果があるということです。
なお、手ブレ補正効果は保証されたものではなく、測定方法や撮影者の技術によって成功率にかなりのばらつきがあります。100枚撮影して何枚成功するかは使用者の腕力やシャッターの押し方などの経験値に左右されます。

さて、本レンズの手ブレ補正効果は、公称5段分です。1/800 sの800を2で割ることを5回繰り返すと25になります。計算上は1/25 sまで手持ち撮影できるほどの補正効果があるということです。これは驚異的なことです。
Z9との組み合わせではボディ内の手ブレ補正機能とシンクロして5.5段分の補正効果があるとされていますので、1/20 sくらいまでは行けるということでしょうか。
800mmの超望遠レンズをシャッター速度1/20 sで使えるとはにわかに信じがたいことです。試してみましょう。

実写

あまり動かないカワセミがいたので、手ブレ補正効果を確認するために徐々にシャッター速度を遅くして試写してみました。
なお、すべてブレなく撮れるわけではなく、同じシャッター速度で撮影した写真の中で、一番ブレが少なかったコマを掲載しています。当然、シャッター速度が遅くなるほど歩留まりは悪くなりますが、ブレずに撮れることもあることの証明です。

以下、1/800 sから1/6 sまで試してみた結果です。すべてボディZ9のDXフォーマットで手持ち撮影です。露出がオーバー気味になってしまいましたがご勘弁ください。また、手ブレ補正はスポーツモードです。ノーマルモードではこれよりいくらか良い結果になるかと思います。

1/800 s

  • Exposure Time : 1/800
  • F Number : 6.3
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 7200

特に問題ありません。

1/400 s

  • Exposure Time : 1/400
  • F Number : 6.3
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 3600

1段分低速シャッターです。ブレはなく、歩留まりもほぼ100%です。

1/200 s

  • Exposure Time : 1/200
  • F Number : 6.3
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 1800

2段分です。数%ブレるコマが発生しますが、概ね問題ありません。

1/100 s

  • Exposure Time : 1/100
  • F Number : 6.3
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 720

3段分です。歩留まりは少し下がりますが、手ブレは効果的に補正されているようです。このあたりから手ブレよりも被写体ブレ、風によるブレの影響が出てくるので、通常はこの位を下限とすることが多いでしょう。

1/60 s

  • Exposure Time : 1/60
  • F Number : 6.3
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 450

800mm(1200mm相当)のレンズを1/60 sのシャッター速度で使えます。被写体が動かなければ十分に使える補正効果です。

1/50 s

  • Exposure Time : 1/50
  • F Number : 6.3
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 360

4段分です。歩留まりはさらに下がりますが、まだまだブレずに写るコマがあります。
このテストはDXフォーマットで行ったので、画角的には1200mm相当の手持ち撮影となります。このあたりが公称値の限界に近いと思います。

1/30 s

  • Exposure Time : 1/30
  • F Number : 6.3
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 200

1/30 s!ただただ驚くばかりです。
DXで1200mm相当で5.5段の手ブレ補正はこのあたりのシャッター速度となります。相手が動かなければかなりVRが効いていることが実感できます。

1/25 s

  • Exposure Time : 1/25
  • F Number : 6.3
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 180

公称値の5段分です。800mm手持ちでここまで行けます。VRのノーマルモードであればもう少しビシッと写ると思います。もしくは、体を鍛えなおして練習を積めばさらに良くなるでしょう。
実際は1200mm相当で撮影しているので、驚異的です。

1/20 s

  • Exposure Time : 1/20
  • F Number : 6.3
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 160

Z9のボディ内手ブレ補正とのシンクロで5.5段の効果はこのあたりです。自分の技術では歩留まり半分程度ですが、確かに800mm(1200mm相当)を1/20 sで撮ることができます。革命的なレンズです。

1/15 s

  • Exposure Time : 1/15
  • F Number : 6.3
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 110

どこまで行けるのか、限界を試してみました。
1/15 sではどんなに頑張ってもブレています。しかし、拡大しなければ緊急時には使えるかもしれません。

1/10 s

  • Exposure Time : 1/10
  • F Number : 6.3
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 64

20枚くらい撮ると1枚くらいあまりブレていないコマがある程度です。歩留まりは数%でしょう。

1/8 s

  • Exposure Time : 1/8
  • F Number : 6.3
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 64

ブレブレです。拡大しなければごまかせるかもしれませんが、無理があります。

1/6 s

  • Exposure Time : 1/6
  • F Number : 6.3
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 64

さすがにボケボケで使えません。数十枚撮影してこれでも一番ブレが少ないコマです。

結果

「手持ち撮影できる800mm」はウソではありませんでした。歩留まりはあまり高くないとしても1/20 sくらいまで撮影可能な補正効果があることが確認できました。実際の野鳥撮影では、被写体ブレが発生するので1/100 s~1/200 sあたりを限界としています。動かない鳥でも頑張って1/60 sあたりが自分の中では限界です。フィールドで普段使いで1/25 sや1/20 sを使うことはないでしょう。しかし、そのレベルの補正効果があるということは、1/100 s前後は手ブレ補正機構としてはまだ比較的余裕がある範疇であり、高い歩留まりで使えることになります。

上のテストは、自分の実使用の参考のため、DXフォーマットかつVRモードスポーツでのテストです。換算1200mmで、VRは効きが弱いスポーツモードなので、より厳しい条件です。FXでVRノーマルモードで使うと歩留まりはもっと良くなるでしょう。

手持ちで撮れると撮影の幅が大幅に拡大されます。今まで撮影不能、もしくは撮影困難だったものが撮影できるようになります。野鳥のみならず、航空機や電車、スポーツ写真などを生業としている写真家の方々の選択肢としておすすめできるレンズだと思いました。


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DXフォーマットで使用すると900mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで840mmF9、1200mmF13、DXで1260mmF9相当、1680mmF13相当となります。
最短撮影距離が4mなので、野鳥が近い公園などでは有利となります。

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800mmの超望遠レンズとしては驚くほど小型軽量で、全長385mm、重量2385gしかありません。レンズ単体で5段分、Z9やZ8との組み合わせでは、シンクロVR機構によって5.5段のVRにより、手持ち撮影が可能です。
DXフォーマットで使用すると1200mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで1120mmF9、1600mmF13、DXで1680mmF9相当、2400mmF13相当となります。 最短撮影距離が5mあります。野鳥が遠い公園や小型の野鳥を大きく写したいときに有利となります。
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