Nikon Z9:画素数

2000年前後のデジタルカメラ黎明期は空前の画素数競争が繰り広げられていました。ライバルのカメラより少しでも高画素であることが宣伝文句に使われていました。確かに数十万画素、数百万画素を争っていた時代はより高画素のカメラが求められていましたが、1千万画素を超えたあたりから徐々にその熱は冷めてきています。ほとんどの人は出力するとしてもA4サイズまでなので、今まで画素数競争に踊らされていたユーザーも1千万画素あれば十分であることに気付いたのでしょう。技術的には1億画素も可能でしょうが、そこまで必要なのかどうか疑問です。巨大ポスターの撮影や緻密な商品撮影、学術的な高精細な記録などで必要かもしれませんが、どちらかというとそれらは特殊な撮影で、専用のカメラの領域だと思います。フィルムの時代で言ったら35mm判ではなく、ブローニーやシノゴカメラの領域と同様でしょう。
現在は一般的なカメラでは2千万画素前後に落ち着いています。メーカー側も無意味な高画素競争よりも、同じ2千万画素で高感度耐性に特化した仕様にしたり、高速連写が可能なスペックにシフトしてきています。より高画素が必要なユーザーに対しては、高画素機として別のシリーズでラインナップする傾向です。
Z9の画素数は、フルサイズ(FXフォーマット)で 8256×5504ピクセル (4千5百万画素)となっています。これは歴代フラグシップ機としては随分多い印象です。

カメラの性格

カメラは使う人によって要求仕様が大きく異なる機械です。高速連写が必要な人、高感度耐性を求める人、高画素でないと使えない人、動画性能を求める人、階調性を重視する人、低価格を望む人、軽さを求める人など様々です。これを1台のカメラでオールマイティにこなすのは無理があるため、様々な性格付けをされたシリーズが展開されています。Nikonで言ったら50や5、6、7、9といったシリーズです。今後も様々な需要に対応すべく、色々な性格付けをされたシリーズが展開されていくことでしょう。

この辺りの感覚は自動車に似ていると思います。自動車と言っても最高速度を競うものもあれば、荷物をたくさん積むことに特化したもの、価格を重視したものなど、様々な性格付けをされたシリーズが存在します。1台ですべてをまかなうのは無理があります。

Z9の性格付け

今までのNikonの一眼レフのフラグシップと呼ばれていた機種は高画素機ではなく、画素数を落として高速連写や高感度に特化した性格付けがされていたと思います。じっくり高精細な風景写真を撮る人ではなく、報道やスポーツカメラマンをターゲットにしていたきらいがあります。高画素化すると1ピクセル当たりの面積が小さくなるため、感度は低くなります。この相反する特性のせめぎ合いの着地点をどこに設定するかでそのカメラの性格付けがある程度決まってきます。

一眼レフのフラグシップであるD5やD6は、 2082万画素で感度は ISO 100~102400。増感すると何とISO 3280000 (328万!)まで設定できます。ミラーもシャッターもありながら、秒間14(D5はミラーアップ時)コマも撮れるスーパーマシンです。

それに比べると、Z9は、4571万画素で感度は ISO 64~25600。増感しても 102400 までしか上げられません。一眼レフのフラグシップとはかなり異なった性格付けがされていることがわかります。
しかし、ミラーレスでメカニカルシャッターもないので、秒間30コマ、より小さいフォーマットであれば秒間120コマも撮ることができます。

画素数と感度のせめぎ合いで、Z9は感度よりも画素数と連射性能を優先したのでしょう。実際、ISO 3280000と言った高感度がどのくらいの人に求められているのか、それよりも画素数を増やした方が良いのではないか、メカニカルシャッターをやめて連射性能を上げた方が良いのではないか、といった議論が繰り返し行われたはずです。そしてNikonが出した答えがZ9のスペックだったということだと思います。高画素・低感度・高速連写機です。高感度機はおそらく別シリーズに委ねるのでしょう。

フォーマット

個人的には画素数競争には興味がありません。自分が必要な画素数があれば十分です。むやみに高画素化するとファイルサイズが大きくなり、後の処理が大変になります。一眼レフからZ9に移行した理由は、スペック的にすべて丁度よかったからです。仕事柄、医療系のマクロ撮影と野鳥写真で超望遠撮影をするのが主となりますので、APS-C(DX)フォーマットの方が有利となります。D1x、D2xs、D300s、D500とDXフォーマットのカメラをあえて選んで来ました。本職の医療写真では、可能な限り術創から離れて撮影したいので、DXの方が断然有利です。副業の野鳥撮影でも1.5倍の望遠効果が発揮できます。そのため、Z9の仕様が発表になったとき、真っ先に注目したのがZ9のDXフォーマットの画素数です。

自分に必要な画素数

D500を使っている頃からカレンダーの仕事をしています。カレンダーはB4サイズです。B4サイズは意外と大きく、364mm×257mmの矩形です。A3(420mm×297mm)より一回り小さいくらいのイメージです。
標準的なカラー印刷では、網点を構成する175lpi(Line Per Inch)の2倍の350dpi(Dot Per Inch)が必要です。これを単純に計算すると、B4の全面に印刷するためには、長辺約5千ピクセル、短辺約3千5百ピクセル必要です。自分の中ではこれが基準となります。それ以下のカメラではB4印刷はきびしくなってしまいます。

B4フルに350dpiで印刷するために必要な画像の画素数の計算
(1インチは25.4mm)
長辺:364 / 25.4 * 350 = 5015 ≒ 5千
短辺:257 / 25.4 * 350 = 3541 ≒ 3千5百

しかしながら、この画素数は昨今のカメラではそれほどハイスペックなことではなく、2千万画素前後のカメラは皆クリアしています。

Z9の画素数

再びZ9の画素数をみてみましょう。8256×5504ピクセルもありますが、これはフルサイズ(FXフォーマット)のピクセル数です。Z9をDXフォーマットカメラとして使った時のピクセル数は、5392×3592ピクセルとなります。自分の要求仕様である長辺5千ピクセル以上短辺3千5百ピクセル以上という指標をクリアしています。Z9の仕様が発表になった時、DXフォーマットで使ってもB4カレンダーの仕事に十分使えるということが確認できたので購入に踏み切りました。
手術写真は最大でもA4です。野鳥写真でもカレンダーのB4が自分の仕事では最大なので、DXフォーマットで350dpiでB4出力できる画素数があれば必要十分なのです。欲を言えば6000×4000ピクセルあると多少トリミングができるので、構図の失敗などの救済ができますが、贅沢は言いません。

一眼レフのD500とミラーレスのZ50はまったく同じ5568×3712ピクセルの記録ができます。どちらもDXフォーマットですが、B4出力に対応できます。

思わぬ副産物

せっかくのフルサイズカメラなので、フルサイズで使っている人が多いと思いますが、前述のように手術や野鳥撮影ではデフォルトがDXフォーマットです。面白いことに、Z9はボタンをカスタマイズできるので、FX⇔DXの切り替えが簡単にできるようにアサインできます。すると、DXフォーマットをメインで撮っていて、ちょっと引きたいと思った時にFXに切り替えるだけでそれが実現できます。まるで1.5倍のテレコンバーターかの如く、倍率を切り替えることができます。FXメインで使っている人はDXは1.5倍の望遠効果ですが、DXメインで使っていると、FXは約0.67倍の広角効果というイメージで使えます。
DXで撮影している時に、思いのほかターゲットが近づいてきてアップになりすぎてしまう時や、群れが広がってDXの画角に収まらなくなったときに、簡単にFXに切り替えられるように設定しておくと便利です。左手はレンズを支えているので、右手だけで切り替えられるよう、静止画撮影時は録画ボタンをフォーマット変換に割り当てています。ファインダーを覗きながら簡単に変えられるので、撮影中にFX、DXを使い分けるようになりました。

今までFXの高画素機を使っていた方には当たり前なのでしょうが、仕事柄DXを使ってきて、Z9でもDXフォーマットをメインに使っているので、「FXに切り替えて引きが撮れる」感覚が新鮮でした。

DXフォーマット(1200mm相当)

普段はDXフォーマットで使っていますが、期せずして被写体が近くに来てしまった場合、アップになりすぎることがあります。単焦点レンズだと焦点距離を短くすることもできません。かといって移動すると逃げてしまったり、物理的に下がれない場合もあります。

FXフォーマット(800mm)

DXでアップになりすぎた場合はFXフォーマットに切り替えるだけで動かずに0.67倍の引きの撮影ができます。まるで内蔵テレコンのような使い方ができます。高画素のZ9をDXフォーマットで使っているとこんなイメージで使えることがわかりました。ボタンにフォーマット変換をアサインしておけばファインダーを覗きながら瞬時に切り替えられます。単焦点レンズなのに、800mm、1200mmを状況に応じて切り替えて使えるイメージです。

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野鳥撮影にも最強のパフォーマンスを発揮するミラーレスフラグシップです。被写体検出機能で野鳥も認識して目にフォーカスを合わせてくれます。本格的に野鳥撮影をする方にはおすすめです。
FTZ-IIを介して今までのFマウントの超望遠レンズも問題なく使えます。ZマウントのNIKKOR Z 800mm f/6.3 VR Sとの組み合わせは5.5段のVRが効き、800mm(DXで1200mm)ながら手持ち撮影が可能になります。


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位相フレネルレンズ採用の通称ロクロクサンと呼ばれる600mmF6.3の単焦点レンズです。
全長278mm、重量1470gで、600mmの焦点距離からは想像できないほど小型軽量です。レンズ単体で5.5段、Z9やZ8との組み合わせではシンクロVR機構によって6段分のVRにより、手持ち撮影が可能です。
DXフォーマットで使用すると900mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで840mmF9、1200mmF13、DXで1260mmF9相当、1680mmF13相当となります。
最短撮影距離が4mなので、野鳥が近い公園などでは有利となります。

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位相フレネルレンズ採用の通称ハチロクサンと呼ばれる800mmF6.3の単焦点レンズです。
800mmの超望遠レンズとしては驚くほど小型軽量で、全長385mm、重量2385gしかありません。レンズ単体で5段分、Z9やZ8との組み合わせでは、シンクロVR機構によって5.5段のVRにより、手持ち撮影が可能です。
DXフォーマットで使用すると1200mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで1120mmF9、1600mmF13、DXで1680mmF9相当、2400mmF13相当となります。 最短撮影距離が5mあります。野鳥が遠い公園や小型の野鳥を大きく写したいときに有利となります。
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著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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