Nikon Z9と800mmF6.3の組み合わせでは、公称5.5段の手ブレ補正効果があるとされています。実際テスト撮影をしてみると、FXフォーマットで1/800sを基準として1/20s程度まで、DXフォーマットでは35mm判換算で1200mm相当となりますので、1/1200sを基準として1/30s程度まで手持ちで撮影できます。歩留まりは下がりますが、しっかりとホールドすれば確かに撮影可能です。これは驚異的なことです。

F Number : 6.3
Exposure Program : Manual
ISO : 1400
Exposure Compensation : +2
Z9+800mm:DXフォーマットで1200mm相当。日没後の暗い状況だったので、感度が上がらないように、絞り開放F6.3 、シャッター速度1/25sで撮影。腕ではないのが残念ですが、相手が静止している状況では、カメラとレンズの進化によって手持ちでこんな撮影ができてしまいます。

上の写真のアップ:目にピントを合わせました。手持ち1/25sとは思えない描写です。
手ブレと被写体ブレを混同してはいけない
上記驚異的な手ブレ補正能力は、静物やテストチャートを撮影したときの話です。あくまでもカメラ・レンズの撮影系の予期せぬ動きに対する補正であり、被写体の動きに対してはまったく効果がありません。それを勘違いされている方が結構いらっしゃいます。特に今まで通常のレンズしか使っていなかった人が、マクロレンズや望遠レンズをはじめて手にすると陥りやすい勘違いです。今まで標準ズーム系でまったくブレずに撮れていたのに、望遠レンズを使ったらブレブレでレンズの手ブレ補正機能が壊れているのではないかと疑う人も多いようです。しかし、話を聞いたり、写真を見せてもらうと、明らかに被写体ブレです。カメラ・レンズ系が完璧な手ブレ補正機能を発揮しても、被写体ブレはどうにもなりません。動くものに対しては今まで通りの指標「1/焦点距離」以上のシャッター速度が必要です。
自分もZ9+Z800mmの手ブレ補正があまりに強力なので、感度を下げるために樹上の鳥などでは可能な限り低速シャッターで撮る傾向があります。動き回る鳥では被写体に応じてシャッター速度を調整する必要がありますが、調整を忘れるとブレ写真を量産してしまうことがあります。
意外と難しい水鳥
木や石の上に静止している野鳥は問題ありません。強力な手ブレ補正によってかなりシャッター速度を落としてもブレなく撮影できます。落ち着きがない鳥は1/200s程度は必要ですが、落ち着いた鳥は1200mm相当の画角でも、1/100sより遅いシャッター速度も多用します。
一方、水鳥は動きも速くなく、水面にプカプカと浮いているだけなので、一見、簡単に撮れそうに見えます。しかし、800mmや1200mm相当の画角では水面の波や風による上下左右の動きが激しく、思いのほかブレで失敗することがあります。望遠レンズで覗くと、水鳥たちは止まることなく、結構ゆらゆらと小刻みに動いているものです。
どんなに最新のカメラで手ブレ補正が強力でも、被写体ブレだけは避けられません。特に至近距離で水鳥を撮る場合は動きが拡大されるため、木や岩にとまっている鳥を撮るよりも遥かに高速なシャッター速度が必要になります。
杭にとまったカワセミが1/100s以下でばっちり撮影できたとしても、その脇をゆっくり通過するカイツブリをそのままの設定で撮ってもブレてしまうものです。
水鳥撮影で必要なシャッター速度
今までの経験上、水鳥の撮影は基本に忠実に 「1/焦点距離」以上を基準としています。撮影距離やその日の風や波、鳥たちの動きなどによって異なりますが、水鳥は比較的至近距離で撮影することが多いので、800mmで撮影するときは1/800s前後を基本としています。
イメージ的に水鳥はのんびりとしているように見えるので、シャッター速度など気にせず撮ってしまいがちですが、基本に立ち返って撮る必要があるようです。サギ類などのように、湖底に足をついている鳥は大丈夫ですが、水に浮いている鳥は常に上下にゆらゆら動いているのです。ある程度の質量があれば細かい波の影響は少なくなりますが、生まれたてのカイツブリの雛のような被写体はかなり波の影響を受けて激しく上下に動いています。
サンプル
動きが少ない野鳥
1/60s


全体像と部分拡大写真です。このようなシチュエーションではカメラ・レンズの手ブレ補正機能の恩恵を100%受けられます。1200mm相当でシャッター速度1/60sでもブレません。岩の上にとまって獲物を狙うカワセミなどは、微動だにしないので、1/20sくらいまでの低速シャッターでも撮影できてしまいます。暗い状況でも感度が上がらないようにすることができます。
水鳥
見た目はあまり動いていないように見えますが、細かい波による上下動なども意外と大きく、特に至近距離で撮影すると顕著に被写体ブレが発生します。
1/320s


1/320sだとどんなに手ブレ補正が強力でも800mm至近距離ではブレることが多く、歩留まりは悪くなります。このようにピントは合っているのにぼやけた写真になります。
1/500s


1/500sくらいにシャッター速度を上げるとビシッと撮れることもあります。
が……


同じ1/500sでもブレることもあります。
ブレ写真が多いようでしたら、1/500sではまだ足りないのでしょう。
1/800s


DXフォーマットなので1200mm相当ですが、1/800sあたりから歩留まりは良くなります。あまり波が立っていない日はこのくらいで大丈夫でしょう。
1/1250s


35mm判換算1200mm相当なので、1/1250sくらいが基準となります。まったくブレずに撮れています。波の上下動のような被写体ブレはシャッター速度を上げて回避するしかありません。
1/1600s


1/1600sあれば安心です。



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