Nikon Z9:ファームウェア Ver. 3.10:野鳥実写テスト

2023年2月28日、Z9の新しいファームウェア Ver. 3.10がリリースされました。早速ファームアップを行い、テスト撮影をしてみました。

公式サイトには、様々な内容が書かれていますが、その中で自分に関係していそうなのは、

  •  [AF エリアモード]を[ワイドエリア AF(S) ]、[ワイドエリア AF(L) ]、[ワイドエリア AF(C1) ]、[ワイドエリア AF(C2) ]、[ 3D- トラッキング]、[オートエリア AF ]のいずれかに設定して連続撮影を行ったときのコントラストが低い被写体に対するピント精度を向上しました。

のくだりです。
主にワイドエリアAFで被写体検出(動物)で使用しているので、大いに関係していると思いますが、「連続撮影を行ったとき」や「コントラストが低い被写体」の解釈が困難です。今まで被写体として認識できない、もしくは、認識困難な鳥種はありましたが、それらが改善されたということでしょうか。「被写体に対するピント精度を向上」と書かれているので、今まで苦手だった被写体に対する検出精度を総合的に向上させたものと期待しています。

しかしながら、Z9を1台しか所有していないので、いつものように旧バージョンとの比較はできません。Ver. 3.10での被写体検出の動きを示すファインダーログのみを掲載いたします。

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使用機材

ボディ:Nikon Z9:Ver. 3.10
レンズ:NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S

被写体検出(ファインダーログ)

赤枠がAFエリアです。ワイドエリア(L)と最大に拡張したワイドエリア(C1)を使い分けています。緑枠はカメラが被写体を検出した時に現れるフォーカスポイントです。目が見えている時は縮小されてピンポイントに目と重なっているのが理想です。
画面がカクカク動くのは、撮影に伴うVRノーマルモードのセンタリングの動きです。スポーツモードで撮影すればよりスムーズな動きになりますが、野鳥撮影は低速シャッターを使うことが多いため、より効果が高いノーマルモードで撮影しています。

カワセミ

以前から検出率は良いので、特に問題ないようです。

超アップの被写体検出とAF精度

キセキレイ

以前は背景によっては検出が弱いこともありましたが、特に問題なく検出しているようです。

モズ

問題なく検出します。

アオジ

ブッシュの中のアオジです。後半は肉眼では見えないほどの低照度での検出実験です。さすがにはずすこともありますが、かなり頑張ってくれています。

ジョウビタキ

今までと同様、問題なく検出されます。

少し離れたオス。

至近距離+枝かぶりの中のメス。前景、背景が多い中での被写体検出。

ミソサザイ

検出されなかったり、誤検出が多かったのですが、向上しているようです。

アオサギ

小鳥とは形状がかなり異なるアオサギの検出テストです。全体像ではなくても検出して目にフォーカスポイントを設置してくれます。

動画の被写体検出

コゲラ

曇り空背景の大変条件が悪い状況でのテストです。

総評

Ver. 3.01が劇的な進化だったので、今回のVer. 3.10は良く分かりません。至近距離では、あまり変わらないように見えます。上記鳥種に関しては以前から特に問題を感じていなかったので、「良くなった」と思える要素はありませんでした。細かく見るとピント精度がより向上したり、背景とのコントラストが低い被写体の検出率が統計的に向上しているのだと思いますが、新旧の比較実験をしないと語れません。

Z9の被写体検出(動物)は、個人的には素晴らしいと思っているのですが、人によっては「まったく検出されない」とか「使い物にならない」と酷評をする意見も散見されます。人によってターゲットも違いますし、求める精度も異なるので、どの程度を「検出している」と認識するのかは違うのは当然です。一瞬でもフォーカスポイントが目からはずれると「使えねー」と評価する人もいるのでしょう。
カメラにどこまで求めるのかによると思いますが、相当高度な要求がされているようです。
個人的には至近距離の野鳥の目を検出してくれて、仕事として使うA3やB4印刷に耐えるピント精度が得られれば満足です。野鳥であれば、目のまわりのツブツブが解像するレベルです。特別な状況を除き、目にピントが合っていない写真はボツにしていますが、発売1年後にリリースされたVer. 3.01の段階で歩留まりは確実に上がっていました。
3.00から3.01はバージョン番号としては軽微なバグフィックス程度の変更と思いきや、大幅な進化を遂げたイメージでした。今回は3.10なので、かなり劇的な進化を期待したのですが、自分の使用範囲ではそれほどでもなかったようです。

追記(2023年3月5日)

読者の方からVer. 3.10にファームアップしたらVer. 3.01よりもフォーカスが悪くなったという報告をいただきました。ファインダー上では目にフォーカスポイントが来ているにも関わらず、撮影された画像のフォーカスが甘いという現象のようです。Ver. 3.01の方が良かったので、この方は3.01に戻されたようです。
同様な現象が確認されている方はNikonのサポートにお問い合わせいただくことをおすすめします。原因は分かりませんが、レンズとの組み合わせなどで何らかのバグが潜んでいる可能性もあります。

追記(2023年3月6日)

距離の違いによる挙動変化の可能性を考慮して、いつもより少し離れたルリビタキ(メス)を狙ってみたところ、明らかにVer. 3.01よりも被写体検出率が低下していることが確認できました。
Ver. 3.01の方が縮小されたフォーカスポイントを目に設置してくれて、一度捉えたら追い続ける動作をしました。Ver. 3.10では目を検出したりロストしたりを繰り返し、検出しても目を追従する動作も弱くなりました。
Nikonサポートに問い合わせています。

ファインダーログを添付して問い合わせたところ、検証するから時間が欲しいとの返答をいただきました。待つことにしましょう。

追記(2023年3月21日)

2週間経過しましたが、Nikonからはその後の応答はありません。

至近距離だと問題ありませんが、ちょっと離れると急に目の検出や追従がされなくなるので、イチかバチかでVer. 3.01にファームダウンしてみました。
3.01の方が目の検出率が高く、一度検出するとがんばって追いかけてくれるように感じます。Nikonサポートにも3.01に戻す方法を先の報告といっしょに問い合わせたのですが、ファームダウンの件についても返答が得られていません。読者の方から普通にVer. 3.01を再度インストールしたら問題なく終了したとの報告を受けてやってみました。Nikonが正式にサポートしているわけではないので、自己責任です。

他のZ9ユーザーはいかがでしょうか。レンズや撮影状況によっても異なると思いますので、Ver. 3.10のAFに違和感を感じるようでしたらサポートに問い合わせてみてください。様々な状況での問題が集まるとNikonに対しても改善に有用な情報になると思います。

追記(2023年3月29日)

3週間以上経過しましたが、未だにNikonからの解答はありません。

Nikon Z9:ファームウェアVer. 3.10と3.01に戻した状況における被写体検出(動物)の比較動画

Ver. 3.01では一度目を検出するとそのフォーカスポイントが優先されて、多少エリアがはずれても、背景や前景に惑わされることなくくらいついて行くような動きでした。一度目をロストしてもその周囲を探索して、前後の探索は後回しのような動きです。上のファインダーログでは、後半のカワセミで、目が見えなくなっても後頭部にフォーカスポイントは貼りついたままで、向きが変わって目が見えると瞬時に目に合わせる動きをします。
Ver. 3.10では、一度被写体を検出しても、前景があるとそれに引っ張られてしまい、Ver. 2xxの頃に戻ってしまったような感覚です。上のファインダーログでは、一度目を検出していても、手前にある藁のようなゴミを検出してしまい、戻ってきません。大してコントラストが高くもなく、画面を占める割合は微々たる範囲の前景なのですが、それが気になってしまうようです。被写体検出よりも至近優先のアルゴリズムが優先されているような印象です。
ピント精度などは上がっているのかもしれませんが、近くに前景や背景の枝があるようなシーンではVer. 3.01の方が被写体(動物)の検出率と追従性は良いと感じています。

人物や乗り物、鳥以外の動物は撮っていないので分かりません。

追記(2023年4月6日)

1ヵ月経ってサポートからようやく解答をいただきました。

ご指摘いただいた、被写体検出(目の検出)率が低下する現象について
確認させていただきましたが、こちらはファームウェアバージョンの
違いではなく、撮影シーンの違いにより現れているものと推察いたします。
ファームウェアVer.3.01 から Ver.3.10 への変更内容におきましては、
ご指摘のような差異が出る内容が無く、また、弊社で確認を行った際も
発生いたしませんでした。
現状において、撮影シーンによって被写体検出率に差異があることは
避けられない現象となりますので、さらなる精度向上につきましては、
今後の課題とさせていただきます。

また、ファームウェアのバージョンダウンについては、動作を保証して
おりませんのでご案内ができかねます。
何とぞご了承くださいますようお願いいたします。

要約すると、鳥の被写体検出率が下がったように感じるのはあくまでシーンによるもので、バグではないということのようです。でも検出率下がったように感じるのは私だけではなく、他のサイトでも同様な記述があるので、何か潜んでいる気がしています。

また、Ver. 3.10 からVer. 3.01へのバージョンダウンは、Nikonとしては動作保証しないということです。個人的にはVer. 3.01にバージョンダウンして使っていますが、やはり自己責任で、ということのようです。おすすめはしません。


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DXフォーマットで使用すると1200mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで1120mmF9、1600mmF13、DXで1680mmF9相当、2400mmF13相当となります。 最短撮影距離が5mあります。野鳥が遠い公園や小型の野鳥を大きく写したいときに有利となります。
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著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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