公園のマナー:鳴き声による誘引

昔は野鳥観察、野鳥撮影の他、野鳥に関わる趣味として録音がありました。多くはソニーのデンスケと呼ばれるオープンリール型やカセットテープを利用した(カセットデンスケ)録音機器を使ってフィールドで鳥の声を録音することを趣味とする人がいました。超指向性のガンマイクやパラボラ型のマイクがたくさん登場したのもこの頃でしょう。昭和の頃はまだ動画はハードルが高く、趣味で録画をしている人は見たことがありませんでした。

実写ではありません。「森林で片手に持ったスマートフォンのスピーカーから鳥の声を流して野鳥を呼び寄せようとする悪いカメラマン」の条件でAIに描いてもらった画像です。すげー!

スマートフォン

今やインターネット上であらゆる鳥の地鳴き、さえずりなどの音声データが映像つきで自由に使える状況になっています。元々は鳥の鳴き声を覚えたりするバーダーたちの学習用として提供されているものですが、それを悪用してスマートフォンのスピーカーから音声を再生して野鳥を誘引しようとする行為が横行しています。
縄張り意識が強い鳥種ではオスが排除しにやってきたり、さえずりを再生してメスを呼び寄せたりします。

これは野鳥たちにストレスを与えるだけで、彼らにとってはまったくメリットがありません。無駄なエネルギーを消費させるだけの詐欺的行為で、100%人間のエゴによるものです。
自分だけがその鳥の写真を撮りたいがために野鳥を騙して呼び寄せる人が後を絶ちません。

公園によっては禁止しているところもありますし、日本野鳥の会でも野鳥の鳴き声による誘引は行わないよう呼び掛けています。

バードコール

木切れに丸い穴を空け、穴にピッタリの丸い金属棒を差し込んである道具です。金属棒をうまく回転させると軋むような高音が発生され、うまくコントロールすると鳥の鳴き声のように歌わせることができます。

これで実際鳥が寄ってくるのかどうか定かではありませんが、いずれにしても野鳥には何もメリットはなく、うまく呼び寄せることができたとしたら上記スマホなどによる誘引と同様、野鳥たちは無駄な労力を強いられ、ストレスを与えるだけです。

日本野鳥の会でもバードコールはスマホなどによる音声による誘引と同じものと位置付けています。

また、公園や森林では、野鳥の声を楽しんでいる人も多いため、人為的な音を発生するのは迷惑になることもあります。昨今は写真撮影だけではなく、鳥の声を入れた動画を撮影している人も多いので、公共の場でバードコールを使用するのは控えるべきでしょう。

声・口笛

ウグイスがさえずりはじめたりすると、必ず声や口笛でマネをする人がいます。中には上手な人もいますが、多くは下手クソで、大変迷惑な行為です。そんなことをするのは子供だけかと思いきや、音の出どころを見ると結構なお年寄りだったりします。しかもしつこくずっとやっていることも多く、困ったものです。

フィールドで鳥を探す時は、耳をすませてかすかな野鳥の地鳴きや枯れ葉をひっくり返す音などから探索するので、こういう人がいるとかなりブルーな気持ちになります。

是非

野鳥の鳴き声をスピーカーで流してはいけないとか、口笛でまねてはいけないという法律はありません。単に野鳥観察や野鳥撮影を行うときのマナーとして言われていることです。もちろん、公園で禁止している場合は従う必要がありますが、禁止していない公園も多く、是非の判断は困難でしょう。
しかし、スマホ音声による誘引は多くの人が不快に思っていることであり、野鳥たちにメリットは何もなく、むしろ無駄な労力を使わせたり、ストレスを与えているということは認識しておきたいものです。

ここでも餌やりと同様、一番に考えなければいけないのは、その行為が「野鳥たちのためになっているのか」ということだと思います。

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著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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