一番好きな野鳥は?と聞かれたら個人的には「ジョウビタキのメス」と答えます。比較的身近な野鳥ですが、冬鳥なので寒い季節にしか会えず、季節を感じさせてくれる鳥です。ヒタキの仲間はみな頭部の大きさに対して目が大きく、まんまるで大変魅力的です。特にメスは派手な色や模様がない分、顔の純粋なパーツがよく見えます。丸い頭に黒目がちな丸い大きな目、小ぶりなくちばし、と、アイドルの要素を兼ね備えています。私達は「マドンナ」と呼んでいます。
毎年秋になって寒くなってくるとまずはジョウビタキを探しに出かけます。毎年同じ個体が同じ場所に来るとは限りませんが、見つけるといつも「お帰りー」と挨拶します。それに応えるかのように、こちらを見ながらジョウビタキ特有のダンスを踊ってくれます。
温かい日は比較的細身でシュッとしていますが、真冬の寒い日は体もまん丸になり、可愛さが倍増します。
撮影ポイント
大きさもありますし、比較的落ち着いた鳥なので、撮影は難しくありません。両翼に白い班があるので、その部分だけ白飛びしないように露出を調整すればきれいに撮れるでしょう。撮影に余裕があるので、マニュアル露出で感度が最低になるようにシャッター速度を決定すると高解像度のきれいな写真が撮れると思います。
個体によっては大変人馴れしているようで、かなり至近距離に近寄っても逃げません。おどかさないようにすれば、かなりアップの写真も撮れます。
個人的に好きなポーズは、背中を見せながら目をこちらに向けているねじくりポーズです。背の模様と顔、くちばしの形状などが記録できるので、学術的にも情報量が多い画像となります。
ジョウビタキのメスは特に地味な色で、枯れ葉や樹木の幹などと同じような色合いです。できるだけ違う色が背景になるように撮影場所を選び、絞りは開放にして背景をぼかさないと、背景に埋もれがちです。ボケた緑色の背景などだとジョウビタキも映えるのですが、冬場はそのような背景はなかなかなく、いつも苦労します。
狙い目は紅葉が残る晩秋や新緑が見え始める早春ですが、ちょうどよい期間は短く、ポーズと背景がちょうどよいシーンを狙うのは結構大変です。
もう一つ注意すべき点は、キャッチライトです。目が大きい分、キャッチライトが入っていないと死んだ魚の目のようになってしまいます。ちょっとでもキャッチライトが入ると俄然生き生きとしますので、必ずキャッチライトが入るように角度を工夫します。
個人的には寒い日に丸く膨らんだ野鳥が好きです。撮る側もかなりしんどいので、カイロをたくさん貼って、真冬の寒い日を狙って行くと、ほぼ球形に膨らんだ姿が見られます。可愛さが倍増します。
以下、作例とEXIFデータの抜粋です。ご参考までに。
2021
Nikon D500+TC14E-III+ AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR
この日も等倍のトリミングをしてみました。このくらい解像していれば個体識別ができるかもしれません。
ほぼ等倍トリミング。画質を優先する場合はとにかく感度が下がるよう、シャッター速度を落とします。1/320秒くらいであれば、最近のVRの恩恵で手持ち撮影が可能です。おかげで微塵もブレていません。
単焦点レンズであれば、開放から極めて解像度は高いのですが、コントラストを上げるため、1/3段絞っています。
別の日の日中にリベンジしに行きました。
最高のシチュエーションでしたが、日も暮れて発色があまりよくありません。
寒い日はほぼ球形に膨らんでいるので、可愛さが倍増します。冬鳥は寒い日に撮るのが一番です。撮影者はつらいのですけど。背景が緑になるように回り込んで撮影しました。
オスは黒と白が使われているので、露出補正は比較的困難です。白い班がギリギリ飛ばないように補正するのが正解でしょう。これもちょっと飛び気味なので、もう1/3マイナスにした方が良かったでしょう。
2020
Nikon D500+TC14E-III+ AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR
正面顔は結構面白い顔をしています。
悩ましい、良いポーズです。しかし、土や背景とほぼ同系統の色で、メリハリがありません。
思い切って明るい背景にするのも良いでしょう。とにかく色やコントラストが異なる背景でないと鳥がはっきり見えなくなります。
2019
Nikon D500+TC14E-III+ AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR
野鳥用メインレンズを500mmF4に変えました。やはり300mmに2倍テレコンよりも遥かに解像度が高く、羽毛の描写に違いが出ました。背景のボケもきれいです。
青空は良い背景になります。色とコントラストがはっきりと違うので、鳥が引き立ちます。
黒い背景も鳥を引き立たせます。背景は川ですが、偏光フィルターを使って反射を抑えると黒っぽく写ります。その場合、露出オーバーになりやすいので露出に注意する必要があります。また、偏光フィルターを使うと暗くなるので、開放でも感度が上がってしまいます。
寒い日はこんな具合にまん丸に膨らみます。
背景を選ぶと地味な色の野鳥も映えます。これは色もボケ具合も、ほぼ理想的な背景です。
Nikon D500+TC20E-III+ AF-S VR Nikkor ED 300 F2.8G(IF)
これも背景は川です。偏光フィルターを使用して反射を抑えると暗くなり、手前のターゲットが引き立ちます。