アサヒカメラ休刊に伴う身近な野鳥カレンダー2021の解説

私にとってのアサヒカメラ

2020年7月号でアサヒカメラが休刊となってしまい、個人的には大変残念な思いです。

小学校の頃から、写真家の伯父の家に入りびたり、「写真やるならこれを読みなさい」と紹介されたのがアサヒカメラでした。以来、ことある毎に買っていました。いつも素晴らしい写真が掲載され、この50年間、多大なる影響を受けています。

少しでも技術を吸収すべく、いつも目を皿のようにして見ていたのは、撮影データです。アサヒカメラは多くの写真に、ボディ、レンズ、絞り、シャッター速度、露出補正、フィルムなどの技術的情報が載っていました。それは写真を学ぶ上で大変重要なことです。特に絞りとシャッター速度は重要で、同じ露出を得るためには様々な組み合わせがある中、作者はその絞りとシャッター速度に決定しているわけで、その理由とプロセスを考えるのが面白いところです。デジタルの時代になってからは、感度も調整できるので、絞り、シャッター速度、感度の3つの組み合わせで露出は決定されます。その情報は、撮影技術を学ぶために極めて有用です。
また、機材の情報も重要です。こういう写真を撮るためには、やっぱりブローニー判が必要か、とか、この大きさに写すにはこのくらいの焦点距離が必要だとか、この迫力は超広角じゃないと出ないな、などといったことが写真とデータを通じて見えてきます。自分が買うべき機材や撮影スタイルなど、アサヒカメラを通じて学習し、習得してきました。私にとっては写真の師匠のような存在でした。

昨今はスマホの普及で誰でも簡単に撮影でき、インターネットで公開できる時代です。昔はアサヒカメラのような写真専門の雑誌で写真を見て学ぶという文化でしたが、悲しいかな、今はそんなことを考えながら写真を撮る人も減って来てしまったのでしょう。今は何も考えず、シャッターを押しさえすればオートフォーカスで、適正露出の写真が撮れてしまいます。しかも相当きれいに。

カメラが生き残れる道は、スマホで撮れない写真に限定されてきています。超望遠撮影、超広角撮影、大口径レンズによる被写界深度が浅い撮影、長時間撮影、マクロ撮影、顕微鏡撮影などはまだまだカメラと撮影テクニックが活かせる分野です。それもいつまで持つかわかりませんが。

野鳥撮影

野鳥撮影には超望遠レンズが必要となり、まだ当分の間はスマホに取って代わることはないと信じています。小型軽量のミラーレスになったり、特殊な材質でコンパクトで軽いレンズが開発され、日々進化していますが、基本的には何十年も前に先達が確立したテクニックがそのまま現代でも使えます。逆に言うと、カメラの基本的な操作や撮影テクニックを身に付けないと、現代でも野鳥の写真はなかなか撮れないということです。カメラと望遠レンズさえ買えば誰でも撮れる、というものではありません。そこが面白いところであり、写真を撮ることの醍醐味が残っている部分だと思います。

今回、身近な野鳥カレンダー2021の販売に伴い、各写真の撮影データ(EXIF)と撮影のヒントを公開しようと思いました。おりしもアサヒカメラが休刊となり、こういった純粋に写真を撮るための技術を学ぶ場も少なくなってしまったと思います。写真家が撮った写真の絞り、シャッター速度、感度、露出補正値などにはそれぞれ重要な意味があります。考えに考えてその組み合わせで撮影しています。
アサヒカメラの代わりには到底なれませんが、今回のカレンダー写真のデータと解説が、皆さまの野鳥撮影の何かのヒントになれば幸いです。写真右にEXIFデータの抜粋を掲載します。

表紙写真

  • Camera Model Name : NIKON D500
  • Lens Model : 500 mm f/4.0
  • Focal Length : 700.0 mm
  • Focal Length In 35mm Format : 1050 mm
  • Exposure Time : 1/100
  • F Number : 5.6
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 320
  • Exposure Compensation : -4/3

ルリビタキのオスです。

売られている時のカレンダーの多くは中が見えません。したがって、表紙が勝負となります。表紙の一枚で、見る人が見ればその写真家の力量が見えてしまいますから、ドキドキです。どれほどこだわって写真を撮っているかを認めてもらうために、渾身の一枚を選定しました。

Nikon D500500mmF4E FLを1.4倍のテレコン(TC-14E-III)を挟んで使っています。そのため、EXIFデータの焦点距離は700.0mmとなり、35mm判換算の焦点距離が1050mmと表記されています。

絞りF5.6は、1.4倍テレコンを付けた状態では開放の値です。ズームレンズは画角を変化できるので便利ですが、設計にはどうしても無理があり、さまざまな収差が残っているものです。そのため、多少絞った方が収差が除去されたり、コントラストが上がって良い結果になることが多いのですが、単焦点レンズは一般的に開放から十分な解像度が出るように作られています。逆に、絞ると回折の影響で像が悪化します。基本的に、よくできた単焦点レンズであれば、開放から1段絞るくらいの範囲で使うと高解像で、高コントラストの画像になります。被写界深度も浅くなり、背景をぼかして主題を強調した美しい作品となります。

こだわった点は、露出補正-1.3EVで、シャッター速度を1/100秒にまで落としていることです。
露出をずいぶんマイナスに補正しているのは、眉と喉の白い羽毛が飛ばないようにするためです。ルリビタキの青い体と白い羽毛は輝度差が大きく、比較的露出オーバーになりやすい鳥です。ルリビタキの体の青は輝度としてはずいぶん低いようで、カメラは明るく撮ろうとしてしまう傾向があります。何度も失敗を重ねて、アンダー目で撮影した方が良いということを学習しました。

撮影スタイルとしては、絞りとシャッター速度はマニュアル設定で、ISOをオートにしています。ファインダー内のISO表示を見ながら絞りとシャッター速度を調整し、ISOがあまり上がらないようにしています。カレンダーレベルの画質を確保するためには、ISOをできるだけ下げる必要がありますが、絞りは開放で限界になりますので、実質的にはシャッター速度のコントロールでISOを下げることになります。シャッター速度を下げ過ぎるとブレが生じるので、このあたりがせめぎあいになり、撮影技術の見せどころです。

この焦点距離でシャッター速度1/100秒はかなり限界に近い速度ですが、昨今のレンズは強力なVR(手触れ補正)が付いているお蔭で、 35mm判換算で1000mmを超えている超望遠撮影でも、 しっかり持てば手持ちでも何とかなります。あまり動かない鳥であれば、1/60秒や1/30秒まで使うことがあります。1脚を使えばよりブレは少なくなりますが、機動性が失われるので、一長一短です。この写真は暗い林の中でしたが、一脚を立てる時間はなく、絞り開放、手持ち1/100秒で、ISOを何とか320ほどに抑えることができました。

B4サイズを想定すると、フォーカスは目にピンポイントで合っていて、ブレがなく、低感度で高解像度の写真である必要があります。ルリビタキは比較的暗い場所を好むようなので、撮影にはいつも苦労させられます。

2021年1月写真

  • Camera Model Name : NIKON D500
  • Lens Model : 500 mm f/4.0
  • Focal Length : 700.0 mm
  • Focal Length In 35mm Format : 1050 mm
  • Exposure Time : 1/1000
  • F Number : 6.3
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 1400
  • Exposure Compensation : -2/3

ツグミです。

ツグミはいつも地面で何かをついばんでいるイメージがありますが、これは枝にとまっています。珍しくはないのかもしれませんが、 個人的にはあまり樹上では見かけません。 普段のツグミは、使っていないグラウンドとか草原をちょこちょこと走り回っては急停止してくちばしを地面に突き刺す、ということを繰り返しているイメージがあります。

冬鳥なので、背景も寒そうな感じで撮れたと思います。冬は枝がむき出しになって、背景がうるさくなりがちなので、できるだけ絞りを開けて撮影します。大きめの鳥なので、開放だと鳥全体にピントが合わなくなってしまうので、ちょっとだけ絞っています。このあたりは、撮影距離や背景の距離、レンズの開放F値によって表現が変化しますので、色々と変えてみるとよろしいかと思います。この場合は1/3段絞ったF6.3で鳥にはほぼ全体にフォーカスが合い、背景が大きくボケてくれたので、このシチュエーションでは丁度よかったと思います。

個人的に大好きな「ねじくりポーズ」をしてくれました。

2021年2月写真

  • NIKON Z 50
  • Lens Info : 500mm f/5.6
  • Focal Length : 500.0 mm
  • Focal Length In 35mm Format : 750 mm
  • Exposure Time : 1/320
  • F Number : 6.3
  • Exposure Program : Aperture-priority AE
  • ISO : 100
  • Exposure Compensation : 0

ハクセキレイです。一年中お目にかかれて、仕草が大変可愛らしい野鳥です。

この写真は家内が撮ったものですが、個人的には最高に気に入っている一枚です。出版社から言われていたのは、「季節感のある写真」です。からっ風が吹く関東地方では、冬の大地は乾燥し、草木も生えない不毛の地と化します。冬羽をまとい、ほぼ球形に体を膨らませて寒さに耐える姿は、まるで火星に降り立ったR2D2を彷彿とさせます。

家内はミラーレスのZ50500mmF5.6 PFを付け、絞り優先モードで撮影しています。暗いシチュエーションで限界までシャッター速度を追い込むようなことをしない場合は、絞り優先モードの方が間違いがありません。開放から1/3段絞ってもISOは100を維持したまま1/320秒のシャッターが切れる明るさだったので、高解像度で写すことができたようです。

500mmF5.6PFも単焦点レンズなので、解放から十分な解像度が出ますが、位相フレネルレンズを使っているので、光の加減によってフレアが出たり、コントラストが低くなることがあります。十分な光量がある場合は、開放からちょっと絞り、F6.3かF7.1あたりを使った方がコントラストが上がるように思います。暗くなったり、森の中など、光が乏しい場所では開放F5.6 で使用しています。

ハクセキレイは白と黒の体なので、一般的に露出補正は困難です。しかし、Z50で露出補正簡易設定にしておくと、ファインダーを覗きながらコマンドダイアルを回すだけで適正露出に設定できるので、大変楽です。顔も胸も白飛びせず、適正露出になっています。このカットは補正した結果がたまたま±0でしたが、撮る前に露出の過不足を確認できることは、ミラーレスが一眼レフよりも優れている一面です。

2021年3月写真

  • Camera Model Name : NIKON D500
  • Lens Model : 500 mm f/4.0
  • Focal Length : 700.0 mm
  • Focal Length In 35mm Format : 1050 mm
  • Exposure Time : 1/200
  • F Number : 6.3
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 450
  • Exposure Compensation : -1

シジュウカラです。

どこにでもいる大変身近な野鳥ですが、個人的には撮影が大変難しい野鳥だと思っています。真っ黒な頭部と、真っ白な頬が、新郎新婦の撮影と同様、カメラマン泣かせな輝度差なのです。どちらかに合わせるしかないと思いますが、個人的には白飛びした画像は許せないので、頬の白が飛ばないギリギリの露出を目指して補正しています。そうすると頭部や喉の黒はつぶれぎみになりますが、白飛びするよりも補正可能なので、いつもアンダー気味で撮影しています。未だに失敗撮影が多い鳥です。
この写真は-1段補正していますが、頬の白飛びもなく、適正だったと思います。

ここはよくシジュウカラが水浴びをする場所です。鳥たちはきれい好きで、四季に関係なく水浴びをよく行います。

トリミングできない前提では、動き回る鳥を相手に構図を決めるのは大変困難です。写真家の伯父に習ったことは、「構図は、ターゲットがこれから動くであろう方向の空間を空ける」ということです。人でも自動車でも、飛行機でも、動物でも共通して言えることだと思います。基本的には顔が向いている方向、移動している場合は進行方向の空間を少し多めに開けると、これからの動作が想像でき、構図としてまとまるということです。このシジュウカラも、これからジャンプして入るであろう水の位置を画面中央にして、これからの動きが想像できる構図を狙いました。この石の上からポチャンと水に入り、翼をバタバタさせて水浴びをする姿が想像できると思います。

2021年4月写真

  • Camera Model Name : NIKON D500
  • Lens Model : 500 mm f/4.0
  • Focal Length : 700.0 mm
  • Focal Length In 35mm Format : 1050 mm
  • Exposure Time : 1/1250
  • F Number : 8.0
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 640
  • Exposure Compensation : -2/3

カイツブリの親子。

毎年この季節はカイツブリの雛のとりこになります。近くの公園では3月末から繁殖がはじまり、10月までの間に5回ほど子育てを行います。少ない時は2羽、多い時は5羽ほとの雛を育てる姿はとても愛らしく、撮らずにはいられません。カイツブリは成体でもかなり小型の鳥なので、生まれたばかりの雛はおそらく人の親指くらいしかない大きさでしょう。親は時に子供を背中に乗せて移動し、毎年私たちの目を楽しませてくれます。

カイツブリは水上に浮き巣を作って子育てをします。いつも太陽光を浴びているので、十分な明るさがあり、比較的撮りやすいターゲットです。上の写真は雛たち全員にピントを合わせたかったので、絞りはF8に絞っています。水面が暗いので、-0.7に補正し、ISOが1000以下になるようにシャッター速度を決定しています。

2021年5月写真

  • Camera Model Name : NIKON D5600
  • Lens : 200-500mm f/5.6
  • Focal Length : 500.0 mm
  • Focal Length In 35mm Format : 750 mm
  • Exposure Time : 1/800
  • F Number : 8.0
  • Exposure Program : Aperture-priority AE
  • ISO : 8000
  • Exposure Compensation : -2/3

カルガモの幼鳥。

春から夏にかけて、私たちを大いに楽しませてくれる野鳥にカルガモがいます。カモの仲間では珍しく一年中みられる留鳥ですが、雛を連れた姿は人気の的で、その姿を見に多くの人が集まるほどです。多い時には10匹以上の子を連れた親が見られ、私たちの心を癒してくれます。

これは家内が撮影したカルガモの雛ですが、私が撮る写真といつも視点が異なっていて、興味深いものです。自分は技術にこだわってしまって良いシーンを逃してしまうことも多いのですが、彼女は感性のまま撮影するので、野鳥たちの一瞬の表情を捕えます。カメラを向ける対象も違うし、シャッターを押すタイミングも違います。身長も30㎝以上違うので、撮影のアングルも異なります。そこが写真の面白さであり、無限の可能性を秘めた醍醐味でもあるのでしょう。勉強になります。

カメラは一眼レフのD5600です。これは軽く、写りも良くて入門用には最適なカメラだと思います。画質的にもこのB4カレンダーに十分使えるほど優秀です。
レンズはNikon純正としては破格の値段で買える AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR です。こちらもこれから野鳥撮影をはじめる方々にはおすすめできるレンズです。ご覧いただけるように、雛の羽毛をきっちりと解像しています。

2021年6月写真

  • Camera Model Name : NIKON D500
  • Lens Model : 300 mm f/2.8
  • Focal Length : 600.0 mm
  • Focal Length In 35mm Format : 900 mm
  • Exposure Time : 1/2000
  • F Number : 8.0
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 900
  • Exposure Compensation : +2/3

親を待つスズメの雛。

500mmF4FLを買う前は、300mmF2.8のレンズに2倍テレコンを付けて600mmF5.6として使っていました。35mm判換算で900mmです。300mmF2.8のレンズ自体が解像度が高い単焦点なので、2倍テレコンを使っても画質劣化は少ないのですが、VR機構が壊れていたようで、手振れのキャンセルが難しい状態でした。そのため、シャッター速度を上げるしかなく、かなり不利な状況でしばらく使っていました。この写真の状況では、一段絞った状態で1/2000秒までシャッター速度を上げてもISO 1000以下に抑えられました。

背景が空や輝く水面の場合の露出補正は慣れないと難しいものです。明るいものに引っ張られてカメラが決める露出はかなりアンダーになるので、プラスの補正をする必要があります。この写真は、+0.7に補正していて、ほぼ適正露出になっていると思います。

ところで、鳥の雛や幼体のくちばしの付け根にある、横に張り出した黄色い部分を何と呼ぶかご存じでしょうか。私もずっと疑問だったのですが、某K博士に聞いてやっとわかりました。「口角隆起」と呼ぶそうです。
あんなに可愛い部品なのに、名前はあまり可愛くありませんね。

2021年7月写真

  • Camera Model Name : NIKON D500
  • Lens Model : 300 mm f/2.8
  • Focal Length : 600.0 mm
  • Focal Length In 35mm Format : 900 mm
  • Exposure Time : 1/1000
  • F Number : 8.0
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 560
  • Exposure Compensation : -1/3

コチドリ。

3年前にコチドリの繁殖記録を撮影してから、コチドリファンになってしまいました。コチドリに出会うと幸せな気分になります。あの独特のアイリングは、いつもこちらを見ているような錯覚をおぼえます。

この写真も300mmF2.8 に2倍テレコンを付けて600mmF5.6として使っています。1段絞り、ISOができるだけ低くなるようにシャッター速度を調整しています。使っていないサッカーグラウンドですが、周りの緑がきれいだったので、あえて遠くから引きで撮影してみました。B4サイズではこのくらいの引きでも面白い写真になります。

コチドリも羽毛に白と黒が使われているので、露出補正は困難です。白が飛ばず、かつ黒がつぶれないように一発で決めるにはかなり熟練が必要です。しかし、デジタルの時代になって良かったのは、その場で画像を確認できることです。これから写真をはじめる人も、昔に比べたら飛躍的に早く上達することでしょう。

2021年8月写真

  • Camera Model Name : NIKON D500
  • Lens Model : 300 mm f/2.8
  • Focal Length : 600.0 mm
  • Focal Length In 35mm Format : 900 mm
  • Exposure Time : 1/1000
  • F Number : 8.0
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 7200
  • Exposure Compensation : -4/3

メジロとシジュウカラが仲良く水浴び。

いつもの水浴び場にメジロとシジュウカラの混群が来ました。仲良くかわりばんこに水浴びをしていました。

この場所は相当暗かったので、かなり感度が上がってしまいました。画質的にF8ほどに絞る必要があり、VR機構の不調のため、シャッター速度をこれ以上下げることができず、あまり好ましくないISO感度に跳ね上がってしまいましたが、鳥は待ってくれないので仕方ありません。

植物背景の写真の場合、カメラは葉の暗さに引っ張られ、露出をオーバーに算出しがちです。植物は光合成を行うため、光を吸収します。緑の光だけ光合成に使わないため、太陽光の中の緑色の波長だけ反射するから我々には緑色に見えているのです。逆に言うと、緑以外の波長は全て吸収されて光合成に利用されています。したがって、写真的には植物の葉は相当暗いのです。そのため、結構マイナスの補正を行います。この例では、-1.3に補正して適正でした。メジロの目の周りの白やシジュウカラの頬の白は白飛びしやすいので注意が必要です。

2021年9月写真

  • Camera Model Name : NIKON D500
  • Lens Model : 500 mm f/4.0
  • Focal Length : 700.0 mm
  • Focal Length In 35mm Format : 1050 mm
  • Exposure Time : 1/1250
  • F Number : 6.3
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 1400
  • Exposure Compensation : -2/3

うれしいヤマガラ。

ヤマガラはいつもうれしそうな顔をしていますが、これは特に大好きなエゴノキの実を持ってうれしそうに見えます。きっと、本当にうれしいのだと思います。

よく見ると、ヤマガラは面白い顔をしています。某K博士は「ヘンガオ」と仰っていましたが、個人的にはかなり気に入っています。特に正面から見ると頭の形がオバQのようで、見るとどうしても笑ってしまいます。カラリングも大変ユニークです。よくシジュウカラやメジロ、コゲラなどと混群を形成していますので探してみてください。見つけるとこっちもうれしくなります。

この写真は暗い森の地面で、しかも急に至近距離に現れたので、調整する暇がありませんでした。シャッター速度をもっと落とした方が感度が下がり、より高解像の絵になっていたと思います。目にピントを合わせるので精いっぱいでした。

2021年10月写真

  • Camera Model Name : NIKON D500
  • Lens Model : 500 mm f/4.0
  • Focal Length : 700.0 mm
  • Focal Length In 35mm Format : 1050 mm
  • Exposure Time : 1/1250
  • F Number : 5.6
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 1800
  • Exposure Compensation : -2/3

大人気のエナガ。

エナガは最も女子受けする野鳥ではないでしょうか。群れで暮らす、大変小型の野鳥です。可愛さとは裏腹に、カメラマン泣かせの野鳥です。小さい上に動きが非常に早く、一瞬たりともじっとしてくれません。フォーカスが合って、シャッターを押そうと思った瞬間、いなくなっています。動き回るので、シャッター速度はあまり落とせず、なかなか渾身のショットを撮らせてくれません。 しかも露出補正が難しい白黒です。 自分の中では一二を争う難しさだと思っています。

この写真も夕方だったので絞りは開放ですがシャッター速度はあまり落とせず、感度が上がってしまっています。露出補正も-0.7くらいにして、適正露出となりました。葉と背景の色がちょうど良く、秋らしい雰囲気に撮ることができたと思います。

2021年11月写真

  • Camera Model Name : NIKON D500
  • Lens Model : 500 mm f/4.0
  • Focal Length : 700.0 mm
  • Focal Length In 35mm Format : 1050 mm
  • Exposure Time : 1/200
  • F Number : 5.6
  • Exposure Program : Aperture-priority AE
  • ISO : 1100
  • Exposure Compensation : -1

バーダーの一番人気のカワセミ。

とにかく人気ナンバーワンの青い鳥、カワセミです。一時期は激減したようですが、河川の整備などによって、都市部の川や公園でもよく見られるようになりました。昔から青い鳥を見ると幸せになれると信じられているようで、カワセミの周りにはいつも人だかりができいています。公園に住むカワセミなどは、そういった状況に馴れてしまったようで、かなり近寄ってもあまり逃げなくなっています。

カワセミも首のあたりと喉に白い羽毛があり、この部分が白飛びしやすいので露出には注意が必要です。この部分が飛ばないよう、背景の明暗にもよりますが、アンダー目に補正しています。

カワセミは、このように休憩しているときはかなり長時間じっとしていてくれるので、カメラの設定を色々と変更する余裕があります。この写真は絞り優先モードに切り替え、露出補正を-1段にして撮影しました。丁度モミジの前ボケと後ボケを活かすよう、絞りは開放にしました。至近距離で絞り開放だと被写界深度は極めて浅くなるので、目に正確にピントを合わせます。フォーカスポイントをシングルポイントにして、目の上で何度もシャッターを半押ししてからシャッターを切ります。手持ち撮影なので、連射で何枚も撮ると何枚かうまく撮れているものがあるはずです。

こういう写真の場合は、構図が重要です。B4サイズのカレンダーの写真は、トリミングは一切できないという前提なので、撮影時に構図を決めないといけません。自分の体を数センチ動かすだけで、前ボケの葉も後ろボケの葉もがらっと変わります。カワセミが動かないことを願いながら、最適なポイントを数センチ単位で移動しながら探します。ここぞと思う位置で連射します。この場合も基本通り、鳥が右を向いているので、鳥をやや左寄りに持ってきて、右側の空間の方を多めに空けるようにすると安定した構図になります。

こういうピンポイントをさぐる微妙な調整は手持ち撮影でないとできません。三脚を使わない理由です。

2021年12月写真

  • Camera Model Name : NIKON D500
  • Lens Model : 500 mm f/4.0
  • Focal Length : 700.0 mm
  • Focal Length In 35mm Format : 1050 mm
  • Exposure Time : 1/800
  • F Number : 5.6
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 1000
  • Exposure Compensation : -5/3

ヒヨドリ。

大変身近な野鳥ですが、身近過ぎてあまりよく見られたり写真に撮られたりされていないと思います。鳴き声がうるさいのと、農家などでは農作物への被害が発生するので、嫌われることが多いようですが、よく見ると可愛い顔をしています。どこにでもいるので、探すこともなく、大きさも手ごろなので撮影は難しくありませんが、何かをしているところを撮るにはいささか努力が必要になるかもしれません。

これも藪の中で赤い実を食べていたのですが、背景の枝がうるさかったので、絞りを開放にして撮影しています。横向きなので、開放でも概ね全身が被写界深度内に収まり、背景はほどよくボケてくれました。
背景が相当暗かったので、-1.7の露出補正をかけています。

緑の葉と赤い実でなんとなくクリスマスっぽくなり、12月の一枚になりました。このヒヨドリもうれしそうな顔をしています。きっとうれしいに違いありません。

2022年1月写真

  • Camera Model Name : NIKON D500
  • Lens Model : 500 mm f/4.0
  • Focal Length : 700.0 mm
  • Focal Length In 35mm Format : 1050 mm
  • Exposure Time : 1/1250
  • F Number : 5.6
  • Exposure Program : Manual
  • ISO : 800
  • Exposure Compensation : 0

ジョウビタキのメス。

個人的に一番好きな野鳥です。メス限定です。冬鳥なので、冬の半年間しか会えないのが残念ですが、それだから毎年秋が待ち遠しくなり、出会いの感動が得られるのかもしれません。

身近な野鳥という括りの中では比較的マニアックな種類かもしれません。オスは派手な配色で、「きれいな鳥」というイメージですが、メスは地味な配色で、クリクリした目がたまらない魅力です。私たちは「マドンナ」と呼んでいます。

真っ白とか真っ黒の羽毛がないのと、大きさも適度に大きく、あまりちょこちょこ動き回っている性格でもないので、撮影は比較的楽ですが、背景の処理などはそれなりの技術が必要となります。

多くは枝にとまっているので、背景処理のためにやはり開放で撮りたいところです。枝が多い背景だと、鳥自体が枝と同じような色なので、背景を選ぶ必要があります。撮影位置を変えて、できるだけ鳥と異なる色やコントラストの背景を選ぶ必要があります。その状態で開放で撮ると鳥だけが浮き出して可愛らしさが強調されるでしょう。脅かさないように、遠くからそっと狙います。

500mmは標準レンズ?

野鳥撮影は、500mmが標準レンズだ、とよく言われますが、まさにその通りで、野鳥との距離を考えると、最低でも35mm判換算で500mmの画角は欲しくなります。600mmや800mmのレンズも売っていますが、フィールドを持ち歩いて手持ちで撮るのはかなり厳しくなります。自分はNikonのショウルームへ行って400mmから800mmの超望遠レンズをすべて試させていただき、長時間持ち歩けて手持ちで上に向けて安定して構えることができると判断できたのが500mmF4 FLでした。以来、そのレンズを愛用しています。DXフォーマットだと750mm相当の画角になり、さらに1.4倍のテレコンを付けると1050mm相当となります。検討した結果、1000mmを超える画角のレンズを手持ちで使える究極の組み合わせは、自分にはこの選択肢しかありませんでした。

家内は某K博士から譲り受けた500mmF5.6 PFを使っています。こちらは大変軽く、機動性が高いレンズです。Z50との相性は良く、女性には最強のシステムだと思います。DXフォーマットなので、こちらも35mm判換算750mm相当の画角となります。VRが優秀なので、1/200秒位まで手持ちで扱えます。

どちらも単焦点なので、絞り開放、ISO 1000以下で撮影すると、気持ち良いほど解像感のある絵が得られます。当分このセットを使い続けることになるでしょう。

追記

上で、800mmの超望遠レンズをフィールドで持ち歩いて手持ち撮影するのはかなり厳しい、と書きましたが、2022年にNikonから画期的な800mmが登場しました。Fは6.3ですが、今までの800mmF5.6の約半分の重さで、強力なVRによって夢の800mm手持ち撮影が可能です。技術の進歩には参りました。

Amazon Link
身近な野鳥CALENDAR 2021(緑書房) 上で解説させていただいた写真がすべて掲載されているカレンダーです。左の写真をクリックしていただくとAmazonのページに飛べます。ぜひ、迫力あるB4判のプリントで見ていただきたくお願い申し上げます。バードウォッチングをはじめた方や、野鳥や野鳥撮影にご興味がある方におすすめいたします。どれも都市部の公園で見られる身近な野鳥たちです。このカレンダーと本ページが、野鳥撮影をはじめた方々の参考にもなれたら幸いです。
また、野鳥好きの方へのプレゼントにも最適です。きっと喜んでいただけると思います。
カレンダー部も大きいため、書き込みもしやすく、使いやすいカレンダーに仕上がっています。
身近な野鳥カレンダー2022
身近な野鳥カレンダー2022年版も私どもの野鳥写真を採用していただきました。緑書房さん、ありがとうございます。今回もこれから野鳥撮影をはじめられる方々のために僭越ながら撮影のポイントとEXIFデータの公開をさせていただきま...
Nikon D500での野鳥撮影
写真家として数十年仕事をしていますが、最終的に常用カメラとして使用しているのは今でもD500です。野鳥撮影には、FXよりもDXの方が有利になります。F値を変化させることなく、1.5倍に拡大されます。また、D500はD5と同じフォーカシングユニットを使用していて、動体のAFに優れた性能を発揮します。今でも最強の野鳥撮影一眼レフカメラだと思います。
AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR レビュー
レンズ:AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VRボディ:D500購入経緯今まで AF-S VR Nikkor ED 300mm F2.8G(IF) にTC-20E IIIをつけて600 mm ...
Nikon Z 50 レビュー
待望のニコンDXフォーマットのミラーレス一眼。野鳥撮影に素晴らしいパフォーマンスを発揮。直感的操作で露出補正が簡単にできるようになりました。500mmF5.6E PFとの相性も抜群です。
AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VRのレビュー
ひょんなきっかけで、AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VRを譲り受けました。ネットではなぜか賛否両論書かれていますが、その理由を分析してみました。個人的にはミラーレスとの組み合わせで、野鳥を手持ち撮影するための最強のシステムを構築できると判断しました。
Amazon Link

カメラ関連




Nikon Z9


Nikon Z 9 ボディ

野鳥撮影にも最強のパフォーマンスを発揮するミラーレスフラグシップです。被写体検出機能で野鳥も認識して目にフォーカスを合わせてくれます。本格的に野鳥撮影をする方にはおすすめです。
FTZ-IIを介して今までのFマウントの超望遠レンズも問題なく使えます。ZマウントのNIKKOR Z 800mm f/6.3 VR Sとの組み合わせは5.5段のVRが効き、800mm(DXで1200mm)ながら手持ち撮影が可能になります。




Nikon Z8


Nikon Z 8 ボディ

Nikon Z9の縦位置グリップをなくして小型軽量化を実現したカメラです。
Z9の機能をほぼそのまま継承しているので、野鳥撮影にも最適です。もちろん、鳥を認識して目にフォーカスを合わせてくれます。縦位置を多用しない方にはおすすめです。
重さもZ9の1340gからZ8は910gと軽量化されています。フィールドで持ち歩くには最適で、女性にもおすすめです。
特に小型軽量のロクロクサンことNIKKOR Z 600mm f/6.3 VR Sとの組み合わせは野鳥撮影セットとしてイチオシです。




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NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR S

位相フレネルレンズ採用の通称ロクロクサンと呼ばれる600mmF6.3の単焦点レンズです。
全長278mm、重量1470gで、600mmの焦点距離からは想像できないほど小型軽量です。レンズ単体で5.5段、Z9やZ8との組み合わせではシンクロVR機構によって6段分のVRにより、手持ち撮影が可能です。
DXフォーマットで使用すると900mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで840mmF9、1200mmF13、DXで1260mmF9相当、1680mmF13相当となります。
最短撮影距離が4mなので、野鳥が近い公園などでは有利となります。




NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S
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NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S

位相フレネルレンズ採用の通称ハチロクサンと呼ばれる800mmF6.3の単焦点レンズです。
800mmの超望遠レンズとしては驚くほど小型軽量で、全長385mm、重量2385gしかありません。レンズ単体で5段分、Z9やZ8との組み合わせでは、シンクロVR機構によって5.5段のVRにより、手持ち撮影が可能です。
DXフォーマットで使用すると1200mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで1120mmF9、1600mmF13、DXで1680mmF9相当、2400mmF13相当となります。
最短撮影距離が5mあります。野鳥が遠い公園や小型の野鳥を大きく写したいときに有利となります。

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著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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