Nikon Z9+NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S+Z TELECONVERTER TC-2.0xで手持ち天体撮影(土星:カッシーニの間隙にチャレンジ)

前回の試写で、ハチロクサン+2倍テレコンの手持ち撮影で土星の環は比較的簡単に写ることが確認できましたが、土星の環のカッシーニの間隙が描写できていませんでした。望遠鏡で言ったら直焦点撮影なので像は小さく、ピクセルに埋もれてしまっている可能性がありますが、口径125mm前後の望遠鏡としてみた場合、まだまだハチロクサンの能力を引き出せていません。

惑星の写真は光学的な性能よりもシーイングの影響の方が大きく、特に都市部の明るく汚い空で撮る場合は限界はありますが、感覚としては土星のカッシーニの間隙くらいは楽勝に写ると思っていたので、ちょっと残念でした。今回カッシーニの間隙を写すべくリベンジしてみました。

興味本位ではじめたあまり意味のないレンズテストですが、引っ込みがつかなくなってしまいました。とにかく、レンズの解像度、収差補正性能と、手ブレ補正性能の検証、さらにはテレコンとの相性の確認には、手持ちで星を撮るのが一番です。

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機材

前回と同じです。

  • Nikon Z9 (Ver. 2.11)
  • NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S
  • Z TELECONVERTER TC-2.0X

設定

「手持ちハチロクサン+2倍テレコンで土星の環が写るか」 がテーマなので、三脚や赤道儀は一切使わず、今回も完全手持ち撮影です。

  • 撮影モード:マニュアル
  • ISO感度:マニュアル(400)
  • フォーカス:マニュアルフォーカス
  • 連写モード:L(10コマ/秒)
  • 手ブレ補正:ノーマル
  • フォーマット:DX

前回少しアンダー過ぎたので、今回は感度をISO 400に上げてみました。また、手ブレ補正ノーマル時のセンタリング対応のため、連写モードを半分の秒間10コマに落としました。

撮影

2022年10月1日。前回よりもいささかシーイングが良さそうでしたので、テレコンを装着して今回も完全手持ちで撮影しました。もう慣れてきたので、ファインダーへの導入もすぐにできるようになりました。
今回もフォーカスピーキング表示で土星の環が赤くなった瞬間に連写する方法で撮影しました。連写時のセンタリングにも対応できるようになり、可能な限りファインダー中央近くに保持できるようになりました。その状態をキープしながら100枚ほど撮影します。秒間10コマなので、実質撮影時間は10秒です。

処理

100枚の中から良像を29枚選択して1920×1920ドットに切り出しました。その画像をRegistax(Ver. 6)でスタッキング処理後、軽くWavelet変換処理をしました。

作例

Exposure Time : 1/60
F Number : 13.0
Exposure Program : Manual
ISO : 400
Z9のDXフォーマットの1920×1920ドットを切り出し、29枚のコンポジット処理。
上の写真の中央1280×1280ドット切り出し。
上の写真の中央500×500ドット切り出し。
像が小さいため、直焦点ではこのくらいが自分の技術では限界かもしれません。それでもかろうじてカッシーニの間隙らしき隙間は確認できます。
拡大法を用いればより鮮明に写るのでしょうが、倒立像になるため、手持ち撮影はほぼ不可能となります。

総評

何とかカメラシステムだけでカッシーニの間隙を手持ち撮影で写すことができました。Wavelet変換の副作用による暗線の可能性も否定できませんが、写っていることにしましょう。
2400mm相当の焦点距離と言っても、ハチロクサンに2倍テレコンを装着してDXフォーマットで撮影すると土星本体の直径が26ドット、環の長軸で約70ドットにしかなりません。カメラシステムだけでは、このくらいが解像限界なのでしょう。
望遠鏡による天体撮影は一般的には対物レンズの像を接眼レンズや撮影レンズでさらに拡大して撮影するので、より大きく写せます。望遠レンズの後部にアイピースを付けて拡大撮影するアダプターもありますが、倒立像となるため、手持ちで導入および保持することはほぼ不可能です。今回のテーマからは外れるので試していません。いつか機会があったら赤道儀に乗せて拡大撮影も試してみたい衝動にかられますが、何をしたいのか分からなくなってきたので、このくらいにしておきましょう。

望遠鏡による拡大撮影とは単純に比較はできませんが、2倍テレコンを装着しても破綻しないハチロクサンの素性の良さが再認識できた気がします。

追記

このページの内容は、Z9と800mm+2倍テレコンを使って「手持ち」でどこまで撮影できるかをテストしたものです。800mmF6.3の性能評価でもなく、また、こんな方法で惑星や衛星の撮影を推奨するものでもありません。最新のカメラのVRの性能評価の例として個人的な興味本位で行った実験です。
惑星の写真を撮影するのが目的であれば、より安価な望遠鏡システムで引き伸ばし法などで撮影することをおすすめします。

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全長278mm、重量1470gで、600mmの焦点距離からは想像できないほど小型軽量です。レンズ単体で5.5段、Z9やZ8との組み合わせではシンクロVR機構によって6段分のVRにより、手持ち撮影が可能です。
DXフォーマットで使用すると900mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで840mmF9、1200mmF13、DXで1260mmF9相当、1680mmF13相当となります。
最短撮影距離が4mなので、野鳥が近い公園などでは有利となります。

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800mmの超望遠レンズとしては驚くほど小型軽量で、全長385mm、重量2385gしかありません。レンズ単体で5段分、Z9やZ8との組み合わせでは、シンクロVR機構によって5.5段のVRにより、手持ち撮影が可能です。
DXフォーマットで使用すると1200mmF6.3相当となります。野鳥撮影に威力を発揮します。
1.4倍、2倍のテレコンを使用しても画質の劣化が少なく、FXで1120mmF9、1600mmF13、DXで1680mmF9相当、2400mmF13相当となります。 最短撮影距離が5mあります。野鳥が遠い公園や小型の野鳥を大きく写したいときに有利となります。
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著者
Yama

大学卒業後しばらくは建築設計に従事。その後人工知能の研究所で知的CADシステムやエキスパートシステムを開発。15年ほどプログラマをしていましたが、管理職になるのが嫌で退職。現在は某大学の非常勤講師(情報学)、動物医療系および野鳥写真家、ウェブプログラマ、出版業などをしながら細々と暮らしています。

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